「重い物を持ったら急に腰が痛くなった」という人は多いです。
特に工事現場の作業員、酒屋の配達、介護職など重い物を運んだり、重度な人と関わったりする仕事では特多いです。
また洗濯物や買い物袋を持ち運んだりする女性も、男性よりも力がないために腰を痛める可能性がありますよね。
そんな重い物をよく持ち運びする腰痛の人のために、腰痛の原因と荷物の運び方、体操などをお伝えします。私が腰痛患者さんのリハビリでよく使っている方法なので、ぜひ参考にしてください。
重たい荷物で腰痛になる
そもそも重い物を持ったときに腰痛になる原因は何なのでしょうか?
有名なものではぎっくり腰がありますよね。
ぎっくり腰とは?
ぎっくり腰は正式名称は「急性腰痛症」と呼ばれています。(正式名称といっても「急に起こった腰痛」という意味ですが)
ぎっくり腰では、腰の骨である腰椎部分の捻挫(靭帯の損傷)や、筋肉の損傷などが生じていています。
重い物を持つことで、腰付近の靭帯や筋肉がぶちっと切れたりするってことです。
ぎっくり腰になった人に話を聞くと、「グキッと音がした」と言いますが、その瞬間に起こっているんでしょうね。
腰椎椎間板ヘルニア
ぎっくり腰以外には腰椎椎間板ヘルニアが考えられます。
腰椎椎間板ヘルニアとは腰椎の間にある椎間板が前や後ろに飛び出す疾患です。
椎間板が飛び出すと、腰にたくさんの神経が走っていますので、その神経を圧迫してしまいます。こちらは腰の骨と神経イラストです。
黄色の◯で囲んだ部分で椎間板が後方に突出し、後ろにある脊髄を圧迫しています。
MRIで見るとこんな感じですね。
(C)James Yet Ming Au-123RF写真素材
右側に青字で示しているように、MRIでいうとこの黒い部分が脊髄あたります。
左側の◯の中では第3腰椎(L3)と第4腰椎(L4)の間でヘルニアが起こって、後方の脊髄を圧迫しているのがよく分かりますね。
では次からは重い荷物をもったときに起こる腰痛の対処法です。
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重い荷物で腰痛になったらどうする?
まず病院を受診して必ず医師の判断を仰いでください。
おそらくレントゲンを撮ると思いますので、骨に問題があるのかないのか、そこ場で判断してくださいます。
ほとんどの場合、ぎっくり腰で受診しても、その日のうちにMRIやCTなどの精査はなく、安静を告げられて、痛み止めの薬と湿布を渡されるだけです。
よほど痛い場合には腰に注射を打つ場合もありますので、そのあたりは医師と相談してください。
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ぎっくり腰には温湿布?冷湿布?
「夜遅くにぎっくり腰になってしまって、もう病院が閉まっていました。救急車でいくほどでもないし、明日までにできることはないのかあぁ」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
そういう場合は、湿布を貼る人が多いと思いますが、ぎっくり腰には温湿布か冷湿布、どちらを貼ればいいのでしょうか。
ぎっくり腰など急性の痛みには通常は冷湿布を選択します。
ぎっくり腰と呼ばれる急性腰痛症は1週間程度でほぼ寛解しますので、それ以上長引く場合には温湿布を選択します。
このあたりも医師と相談してみてください。
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腰痛の荷物の持ち方を工夫してみる
重い物を持ち上げて腰痛になった、また腰痛になるのを予防したい人は荷物の持ち上げ方を工夫すればいいでしょう。
まずこちらをご覧ください。
写真ではテニスボールが落ちていますので、重い物ではないですが、下に落ちている物を拾うときに、こんな拾い方をしていませんか?
見るからに腰を痛めそうですよね。
こういう場合は、伸ばした手が届きやすい場所で、膝の屈伸をしっかり使って低くなって拾うようにしましょう。
分かりにくい人のために動画にしてみました。
次に重い荷物の場合です。
いまは洗濯カゴが置いてありますので、これが重い荷物だと思ってください。
このカゴをこんな風に持ち上げていませんか?
めちゃ腰を痛めそうです。
これも先ほどと同じように膝の屈伸を使って、持ち上げると腰を痛めません。
これも動画を撮影してみましたのでご覧ください。
ポイントは前屈みになって物を持ちあげないことです。
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重い荷物を運ぶため人の腰痛ストレッチ
腰痛の人のためのストレッチをお伝えします。
たくさんあるのですが、あまり多くお伝えしてもできないと思いますので、ポイントになるストレッチだけお伝えしておきます。
腸腰筋のストレッチ
腸腰筋は腰部から股関節にかかる唯一の筋肉で、骨盤のインナーマッスルとしていま大注目の筋肉ですね。
腸腰筋のストレッチはこちらのイラストを参考にしてください。
引用) 図解入門よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book)
もっと詳しく知りたい人は別の記事でも紹介しています。
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ハムストリングスのストレッチ
ハムストリングスは大腿部(太もも)の後面にある筋肉ですね。
ハムストリングスがかたい人は、骨盤の動きがかなり制限されるので腰を痛めやすいです。
ハムストリングスのストレッチはこちらのイラストを参照してください。
さらに詳しく知りたい人はこちらをご覧ください。
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体幹の回旋運動
体幹とは身体の「幹(みき)」の部分で、分かりにくければお腹周りと考えてください。
体幹の回旋は寝ながらを行えますので、すごく気持ちいいですよ。
仰向けになって両膝を立てます。
その状態から右と左に膝を倒していきます。
ここでのポイントは膝を倒したときに両肩が浮かないこと。浮いてしまうと、うまく回旋のストレッチができていないので注意してください。
キャット&ドッグ
名前の通り猫や犬が伸びをするときのポーズをストレッチとして行います。
この運動では体幹のストレッチ効果と、体幹と骨盤の連動をよくすることができます。
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重い荷物を運ぶため人の腰痛筋トレ
筋トレもいろいろあるのですが、体幹を全体的に鍛えられるものをご紹介します。
フロントブリッジ
うつ伏せの状態から両肘をついて、身体をまっすぐに保ちます。
できる人はその状態から片脚を挙げます。
もしこの姿勢が難しい人は両膝をついて保持するところから始めましょう。
どの姿勢も30秒を3~5セット行いましょう。
アームレッグクロスレイズ
名前は難しそうですが、一緒にやってみれば簡単です。
四つ這いになり、その姿勢から右手と左脚、もしくは左手と右脚を挙げます。名前の通り手と脚が「クロス」になっていればいいです。
このとき指先から体幹、足先までばまっすぐになるようにしてください。
さらに余裕がある人は、この姿勢から挙げている手の肘と、挙げている脚の膝を合わせてみましょう。
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重い荷物を扱うときには腰サポーターを使おう
皆さんご存知の腰サポーターですが、腰部に着用すればしっかり腰周囲の骨の安定性が得られます。
私も重い物を持つ時には腰のサポーターを巻いていました。
病院や医院ではシグマックスのマックスベルトが処方されることが多いですね。
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労災は荷物での腰痛なら認められる?
重い荷物を運ぶ仕事をされている人なら気になるところではないでしょうか。
仕事で重い荷物を運ぶのであれば、労働中に被った傷害であるような気がしますが、実際のところケース・バイ・ケースのようですね。
たとえば、腰椎椎間板ヘルニアであれば、仕事による傷害の影響は少なからずあるのでしょうが、実際には年齢によっても変性は進みます。
そのあたりを rehatora.net の中尾先生はTwitter上で説明されていました。
椎間板の変性は30代から始まります。高齢者では髄核が扁平化するため、ヘルニアで飛び出しても神経を圧迫することは少なくなります。また、扁平しきってしまった椎間板は痛みの受容器も消えていき、椎間板に起因する痛みも減少していきます。 pic.twitter.com/q4ON0NGr5h
— リハ虎NEWS (@hn6414) 2016年3月3日
加齢による変性が主な原因として起こった腰椎椎間板ヘルニアなのか、それとも仕事で重い物を運んでいたために起こった腰椎椎間板ヘルニアなのか、詳しく分けることはできません。
そのため労災として認定されるかはケース・バイ・ケースになります。
腰痛で労災がとれるかどうかの判断基準は、厚生労働省のホームページにも記載されていましのたで、気になるは一度ご覧ください。
以上、参考になれば幸いです。