病気やケガでリハビリ入院した後、ご自宅に復帰される場合、何が必要になると思いますか?
まず思いつくのは患者さんの動作や認知能力ですよね。
自宅で生活できる動作レベルがないと自宅に復帰することはできません。同じような理由で認知機能も大事です。
もうひとつは家族の介護力と、介護保険を使ってどこまでサポートできるか。
患者さんご自身の能力は高くても、家族がサポートできなかったり、介護保険を目一杯使っても生活ができないのであれば自宅に帰ることはできません。
そして最後にもうひとつ重要のが自宅の住環境です。
リハビリ開始時から退院後生活をイメージする
住環境は一戸建てかマンションでは必要な能力は全く変わってきますし、一戸建てでも家によってまるっきり状況は変わってきます。
たとえば50年前に建てられた一戸建てと、去年建てた一戸建てなら、明らかに最近の家の方が住みやすい感じがしますよね。
いまでも和式トイレの家もまだまだありますからねぇ。ちなみに私の実家も最近まで和式トイレでした。
話を戻します。
退院時に住環境が重要となるのであれば、病気やケガで入院してリハビリを開始する時点から、自分の家の住環境を頭に入れてリハビリをした方がいいじゃないかってことです。
特に人工股関節置換術や人工膝関節置換術など、予めじ自宅への退院が決まっていることが多い手術では、絶対に考えておくべきことです。
もちろん人工股関節置換術や人工膝関節置換術だけでなく、脳卒中(脳梗塞や脳出血など)や大腿骨頚部骨折の場合でもそうですよね。
自宅に帰ることが選択肢のひとつとして入っているのであれば、リハビリを開始した時点でご自宅の住環境はイメージしておくべきです。
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リハビリの退院前訪問指導があるから大丈夫?
リハビリでは患者さんの住環境や、ご自宅での生活を把握するために、退院前訪問指導が行われることがあります。(医療保険上では「退院前訪問指導料」として算定されるもの)
退院前訪問指導料とは、厚生労働省のホームページにこのように記載されています。
入院期間が1月を超えると見込まれる患者の円滑な退院のため、患家を訪問し、当該患者又はその家族等に対して、退院後の在宅での療養上の指導を行った場合に、当該入院中1回(入院後早期に退院前訪問指導の必要があると認められる場合は、2回)に限り算定する。
つまり少し長めの入院になるときに、患者さんのご自宅に伺って、患者さんご本人やご家族に対して退院後のアドバイスをしたときに算定できる点数のことです。
ポイントはふたつあると考えていて、ひとつは「1月を超えると見込まれる」患者さんに適応になるということ。
つまり短期間の入院では、退院前訪問指導料が算定できないために、患者さんのご自宅を見に行くことは稀です。(※サービスとして提供している病院はあります)
もうひとつは、「当該入院中に1回」算定するという部分。
多くのケースでは退院が視野が入ってきた頃に、患者さんと一緒にご自宅に伺います。
ですから、リハビリ開始初期にセラピストは患者さんの実際の住環境を知ることができず、問診のみで住環境を想定し、リハビリをすすめることになります。(※2回算定する場合には、早期に退院前訪問指導を実施している病院もあります)
そう考えると、実際どんな家で住んでいるか知らない理学療法士や作業療法士が、イメージだけでリハビリをすすめるって、ちょっと危ういと思いませんか?
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住環境は患者さんから積極的に提供するべき
だったらリハビリが始まるときに、担当の理学療法士や作業療法士、看護師にこちらから自宅の状況を伝えればいいのです。
だってその方が、リハビリスタッフや病棟での担当看護師が患者さんの状況を把握しやすいです。
把握することができれば、退院に向けてより良い医療サービスが提供できます。
実際、少し前に人工股関節置換術を受ける患者さんのご家族に、自宅の住環境を細かく病院スタッフにお伝えするようにアドバイスしました。
娘さんはアドバイスを守って、自宅周辺や自宅内をデジカメで撮影し、写真をミニアルバムにして入院時に担当看護師に渡しました。
看護師からは「こんなんしてくれた人、いままでいなかったです。めちゃ助かります!」と言われたそうです。
受け身に回るんじゃなくて、患者さん側が積極的に動けば、どちらにとってもすごいメリットがありますよ。
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理学療法士や作業療法士が知りたい住環境の実際
では患者さんがご自宅に退院するときに、理学療法士や作業療法士はどこをポイントにしているのでしょうか。
今回はリハビリスタッフ目線で、「こんな情報あったらええよなぁ」という住環境のポイントについてご紹介します。
自宅周辺の環境
- 坂道あるか、あるならどれくらいの勾配か
- 車通りは多いか
- 道路を歩くなら歩道はあるか
- 凹凸は少ないか
玄関前
- 階段はあるか、あれば何段あるか
- 階段の高さ
- 手すりはあるか
- 車いすは出入りできるか
上がり框(かまち)
- 上がり框の高さ
- 手すりはあるか
- 靴を履くために座る椅子を置くスペースはあるか
トイレ
- 便座上端までの高さ
- 手すりはあるか、手すりがあるなら設置場所と高さは
- 車いすが入れる広さはあるか
- 介助者が介助できるスペースはあるか
リビングと食卓
- 椅子の高さは
- 車いすが行き来できる広さがあるか
- こたつに入る機会があるならこたつの形状と高さ
階段
- 何段あるか
- 階段の高さ
- 手すりはどちら側にあるか
- 手すりの下端の高さ
- 階段の踏み面(ふみづら)が小さければその長さ
浴室
- 浴槽の縁の高さ
- 浴槽の深さ
- 手すりの位置と高さ、長さ
- 浴槽の縁に座るスペースがあるか
- シャワーチェアの高さと背もたれがあるか
ベッド
- ベッドの高さ
- 手すりがあるかないか
思い付いたものでいうと以上です。
全てを伝える必要はないので、患者さんにとって必要だと思う情報を病院の担当者に伝えればよいでしょう。
もし分からなければ、病気やケガをしてリハビリ入院後に家に帰るとき、「どんなことが問題になるだろうか?」と一度考えてみてください。
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自宅の住環境の伝え方
病院の理学療法士や作業療法士、看護師が分かる方法であれば何でもいいです。
デジカメの画像加工ができる人であれば、私が作ったように写真に書き込んでもいいですし、できないのであれば写真にしてサインペンで書き込めばいいでしょう。
あとWordやPDFでまとめて渡すとすごく分かりやすいです。途中まで作りましたので、良かったらダウンロードしてご覧ください。
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まとめ
自宅に退院される患者さんにとって、住環境を考えることはとても大事なことです。それはリハビリを行うスタッフにとっても同じです。
しっかりイメージが共有できれば、それだけリハビリがうまくすすむと思いますので、ぜひ参考にしてください。