首にこりや痛みがあるなら、それは胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)が原因かもしれません。
今回は胸鎖乳突筋についてこりをほぐすストレッチや、トレーニングなどをご紹介します。
頭部は体重の4%前後を占めていて、意外と重いです。(例.体重60kgの人なら約2.4kg)
その頭部を主に支えているのが頚部の筋肉です。
頚部には細い筋肉がたくさんあるのですが、その中でも重要なのが胸鎖乳突筋です。
あまり聞き慣れない筋肉だと思いますが、姿勢や肩こりの原因にもなってくるので、ぜひこの機会に理解してください。
胸鎖乳突筋を図で解剖学的に解説
胸鎖乳突筋を分かりやすくいうと、
胸骨と鎖骨から乳様突起まである筋肉
ということになります。
胸骨とは胸の前にある平べったい骨です。
鎖骨は「鎖骨美人」と表現されることもあるので、場所もお分かりですかね。
問題は乳様突起ですが、これは頭蓋骨にあります。
場所は耳の穴の後ろあたりです。
胸鎖乳突筋の起始と停止は、
起始:胸骨頭、鎖骨頭
停止:乳様突起、後頭骨
となります。
ただし、起始は胸骨部と鎖骨部に分かれているので、二腹筋(「にふくきん」:腹がふたつに分かれている筋肉)です。
胸骨部から起こった筋肉と鎖骨部から起こった筋肉が途中で合流して、乳様突起と後頭骨に停止します。
言葉でいろいろ書いていても分かりにくいので、図を載せていきます。
まずこちらは頚部を正面から見た図です。
頚部の表面には広頚筋(こうけいきん)という、薄っぺらい筋肉があります。これを向かって右側だけ剥がしてみます。
そうすると中から胸鎖乳突筋が見えてきました。
正面だと分かりにくいので、横から見てみましょう。
胸骨・鎖骨から耳の後ろの乳様突起まで(実際には後頭骨にも付着しています)伸びていることが分かります。
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胸鎖乳突筋の作用は?
胸鎖乳突筋の作用は少し複雑です。
一般的には片方の胸鎖乳突筋が働くと、頚部が側屈(「そっくつ」:横に曲げる)と回旋します。
実際にやってみます。
まず首を横に曲げてみましょう。
その状態から、曲げている方とは逆の方向に首を回旋させてみます。(写真でいうと向かって右斜め上を見る感じです)
この姿勢になると胸鎖乳突筋はめちゃくちゃ働いています。頚部に薄っすら浮いてきているので、分かりやすいです。
あと両方の胸鎖乳突筋が働くと、頭を前下方に引きます。
また胸鎖乳突筋は呼吸の吸気時(息を吸い込む時)にも作用します。
吸気時には胸骨や肋骨を引き上げて、胸郭を広げる働きがあります。
余談になりますが、呼吸器に疾患があり、吸気時の主動作筋である横隔膜がうまく使えない場合には、頚部の筋肉を普通の人より多用します。(横隔膜だけでは苦しいため、頚部も使って思いっきり空気を吸い込もうとする)
ちょうど私たちが走った後に息が切れて、肩で息をしているような感じですね。
頚部の筋肉を多用すると、頚部の筋肉ががちがちに硬くなってしまう場合もあります。
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胸鎖乳突筋の触診
胸鎖乳突筋を触るのは簡単です。
起始と停止を意識して、両側から押して見ると頚部で一番こりこりした筋肉があります。
それが分かりにくければ、仰向けに寝転んで、先ほど作用でご紹介したように、側屈と回旋をして軽く頭を持ち上げてみましょう。
こうすれば、頚部に胸鎖乳突筋が浮かび上がってくるでしょう。
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胸鎖乳突筋を押すと痛い、腫れや痛みの原因は?
一般的には胸鎖乳突筋を押して痛いときは首こりと呼ばれている筋肉の硬さです。
首こりを聞いたことないのであれば、肩こりの首版だと考えていただければいいでしょう。
胸鎖乳突筋にこりができる原因はいろいろあると思いますが、主たる原因は姿勢、特にパソコンなどを使っているときの座位姿勢にあると考えます。
たとえば、いわゆる仙骨座りと言われる姿勢で長時間パソコンを使っていると、先ほどお伝えしたように頭部はすごく重いので、頚部にはすごく負担がかかります。
たとえばこんな姿勢であればいいのですが、頚部の筋がうまく使えないだけでなく、胸鎖乳突筋が縮こまった肢位になってかたくなる可能性もあります。
あと「胸鎖乳突筋が腫れています」や、「胸鎖乳突筋が痛いです」と訴えがあった場合、筋肉に問題があるわけではなく、頚部のリンパ節に問題がある場合があります。
風邪などで病院を受診したとき、医師に頚部を触られたことはありませんか。
聞いたことがあるかもしれませんが、頚部にはたくさんリンパ節があって、それが腫れて痛みを出すこともあります。
今回こちらの記事で対象にしているのは胸鎖乳突筋のこりであり、リンパ節ではありません。
分からないときは、病院を受診して医師の診断を仰ぎましょう。
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胸鎖乳突筋で肩こりが治る?
一般的な肩こりの原因は主に頚部の後方に位置する筋肉だと言われています。
その最たるものは僧帽筋です。
僧帽筋は上部・中部・下部に分かれていますが、特に頚部後方にある僧帽筋上部線維は、肩こりの原因としていつもやり玉に挙げられます。
ではその僧帽筋上部線維が胸鎖乳突筋とどのような関係があるかというと、その位置関係に注目して欲しいのです。
頚部の後方に位置する僧帽筋上部線維に対して、頚部の前方に位置する胸鎖乳突筋は対称的な位置関係にあります。
神経には相反神経支配といって、たとえば関節に関係する前の筋肉を使うと、後ろの筋肉を抑制するという働きがあります。(逆もしかり)
頚部の後ろ側が優位に働いていると、前側は抑制されて働きにくくなるので、胸鎖乳突筋がうまく使えません。
逆に頚部前面の筋肉をしっかり使えば、僧帽の筋のリラクセーションにはなるはずです。
これはあくまで私の個人的な考えなので、「肩こりの原因は胸鎖乳突筋にあった!」とは声高には言えませんが^^;
結局、頭部を支えるには、前方と後方の筋肉がほどよく調和を取りながら、一番楽な姿勢で支えるのが効率的ですので、どちらか一方が優位に働いている状態は好ましくありません。
ですから、姿勢の問題もそうですし、後でご紹介する筋トレを使って相反神経支配を使ってリラクセーションさせたり、肩甲骨の動き、仕事、スポーツ歴なども含めて、肩こりはトータルで考えていくことが必要ですね。
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胸鎖乳突筋のこりをほぐすストレッチ
では胸鎖乳突筋のこりをほぐすストレッチについて詳しくご紹介していきます。
このストレッチは鏡の前で行った方がいいです。ストレッチをしているかどうか、確認しやすいです。
片側ずつ伸ばす方法
鏡の前に立ち(椅子に座っていてもOK)、正面を見ます。
ストレッチしたい胸鎖乳突筋の逆側の手の母指球で、胸骨と鎖骨の間付近を抑えます。
母指球とは、手の親指の根本の分厚いところですね。
胸骨と鎖骨の間が分からなければ、喉元にくぼみがあるので、そこを指一本で触ってください。
その下が胸骨、その両側が鎖骨です。
次に母指球を離さずに、手の平を置きます。
しっかり固定できていれば、肩が少し下がります。
これが開始ポジションです。
この姿勢から手を置いてる方と逆側の上方に顔を向けます。
この写真では、向かって右斜め上方向ですね。
意識するべきなのは、起始である胸骨・鎖骨と乳様突起が離れるようにすること。
乳様突起は耳の後ろにあるくぼみを触ると、その後方ですね。
しっかりストレッチがかかっていることを感じてください。
30秒を目安に行いましょう。
別法
両手をクロスさせて、それぞれ逆側の胸骨・鎖骨を固定して、首だけを動かしてストレッチする方法もあります。
まず両手をこのようにクロスして胸骨・鎖骨を固定します。
あごを突き出して真上を見ます。
このとき手の固定を緩めないように注意しましょう。
上を向いた姿勢から顔を左(もしくは右)に回旋させます。
先ほどと同じように胸鎖乳突筋の起始停止が離れるように(ストレッチされるように)意識してください。
片側ができたら逆側も伸ばしましょう。
こちらも30秒を目安に行いましょう。
別法は手を動かさずにやるだけなので、あんまり得はしないのですが^^;
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胸鎖乳突筋を鍛えるトレーニング
次に胸鎖乳突筋の筋トレです。
正直に申し上げると私はやったことないので、必要な人はやってみてください。
まずは仰向けに寝転びます。
鍛えたい胸鎖乳突筋と逆側を向きます。その状態で頭を上げましょう。
5秒くらいかけてゆっくりを上げ下ろしします。
コツはゆっくり下ろすことと、下ろしたときに床に頭を着けないこと。そうするとめちゃくちゃしんどいです。
動画はこちら。
10回を1セットにして、1日に2~3セットを目安にしましょう。
もし「ちょっと物足りない」という人は、自分の手で床方向に抑えつけながら行ってください。
目安は10回行ったときに「けっこうきつい!」って思えるくらいです。そうなるように手で調整しましょう。
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まとめ
胸鎖乳突筋について解剖やストレッチ、筋トレをご紹介してきました。
あまり聞き慣れない筋肉ですが、頚部ではかなり重要な役割をしています。
硬くなってしまうと、なかなかな戻しにくい筋肉でもありますので、予防的にケアした方がいいでしょう。
参考になれば幸いです。