深部腱反射のメカニズムで亢進や低下など異常の意味は?

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今回は深部腱反射についてお伝えします。

「深部腱反射って何?」という方から、深部腱反射のメカニズムが分からない方まで、深部腱反射の目的や意義ついて知りたいならぜひお読みください。

みなさんは子どもの頃、膝のお皿の下を叩いて、脚が無意識に動く遊びをしたことはありませんか。一度は経験したことがある方が多いのではないでしょう。

 

自分の意思とは関係なく勝手に脚が動く、これって不思議ですよね。

「もしかしたら自分は病気なのかも?」と考える方も実際にいらっしゃいます。

 

でもご安心ください。医療の世界ではこれは深部腱反射といい、身体の正常な反応です。

実はこの反射をみることで病気の可能性を探ることができるのです。

 

ではさっそく深部腱反射についてご説明をしていきます。

 

目次

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深部腱反射とは?

深部腱反射は英語では「Deep Tendon Reflex」と書きます。

Deep(ディープ):深い
Tendon(テンドン):腱
Reflex(リフレクス):反射

そのままですね^^;

 

臨床では頭文字をとってDTR(ディーティーアール)と略します。

 

深部腱反射とは脊髄レベルで起こる反射のひとつで、筋肉に受動的に伸張刺激が加わることでその筋が収縮を起こすという反射です。

なんかややこしい名前がたくさん出てきますね。

 

深部腱反射のメカニズムを次にご紹介します。

 

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深部腱反射の反射中枢・生理学的メカニズム

筋を急激に伸張すると刺激は筋紡錘の中の受容器である錘内筋線維(すいないきんせんい)で受けます。

その後Ia群線維(いちえーぐんせんい)が求心性インパルスを出し、α運動ニューロン(あるふぁうんどうにゅーろん)を興奮させ、それにより筋肉の収縮が生じます。

 

刺激(お皿の下を叩く)→受容器→求心性ニューロン→反射中枢→遠心性ニューロン→効果器での応答(筋肉の収縮)という反射経路を辿り、これを反射弓(はんしゃきゅう)と呼びます。

反射弓のどこに問題があるか分からないこともあるので、ブラックボックスと呼ばれることもあります。

 

読んでも絶対分からないと思いますので、分かりやすく説明しましょう。

生理学を時代劇風にお伝えします。

 

先ほどご紹介した子どもの頃にやった膝のお皿の下を叩いて脚が無意識に上がる遊びでいうと、お皿の下を叩くとダイレクトストレッチの要領で、膝蓋腱を介して大腿四頭筋が急激に伸ばされます。

先ほどのややこしい話でいうと、「筋を急激に伸張すると」の部分がこれに当たります。

 

すると筋肉の中に「急に伸ばされた!何事じゃ!」と感じる器官(江戸時代の町役人、筋肉でいうとこれが錘内筋線維)があります。

 

錘内筋線維は急に伸ばされたことを感じとったら黙っておくわけにはいかず、お上(江戸時代でいうと、町奉行レベルではなく幕府への直談判、人間でいうと脳)にお伺いを立てようと上申しようとします。(上申=求心、これがIa群線維が求心性インパルスとα運動ニューロンのくだりです)

 

でも幕府も町レベルで起こるいざこざに対応している暇もありませんし、江戸時代の一揆などを想像したら分かりますが時間が経過するとえらいことになるので、結局町奉行レベルですぐに対応します。(これが筋肉を収縮させるということ)

 

筋肉が急に伸張される(町で何か揉めごとが起こる)

錘内筋線維が反応(町役人が反応)

求心性のインパルス(お上に上申)

脊髄レベルで反応(幕府は静観して町奉行レベルで対応)

筋肉が収縮(揉めごとを鎮圧)

という感じです。

 

ここでのポイントは、深部腱反射の反射弓は脊髄レベルで(幕府ではなく町奉行レベルで)起こることなので、脳は反射には直接関与していません。

何となくご理解いただけたでしょうか。

 

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深部腱反射から分かることは?

では深部腱反射は何のために検査をするのでしょうか。実は臨床的には非常に重要な役割があります。

 

腱反射の状態により、反射中枢より上位で問題が生じているのか、下位で問題が生じているのかひとつの判断材料となるからです。

反射は亢進(強くなる)したり減弱(減る、もしくは弱くなる)したりします。これは人間の脳や神経回路に異常が起こった場合に生じます。

 

亢進の場合:反射中枢より上位の錐体路障害を示します。(疾患:脳梗塞などの脳血管疾患)

減弱の場合:反射弓を構成するいずれかの要素の障害を示します。(疾患:ヘルニアなどの腰部疾患,糖尿病神経障害など)

 

こちらもややこしいので、図にしてみました。

深部腱反射の反射弓は脳からの信号で「あまり亢進し過ぎるなよ」と抑制されています。

先ほどの時代劇風にいうと、幕府レベルが町奉行レベルで地方自治の統制を行えているということです。

深部腱反射メカニズム1

 

もし幕府が崩壊して国としての統制が取れなくなったら、地方自治はどうなるでしょうか?(人間でいうと、脳血管疾患など、脳や脊髄などの中枢神経系にトラブルがあった場合)

国としての指針がなくなるわけですから、好き勝手やる役人が出てくるかもしれませんし、地方自治が崩壊するかもしれませんよね。(地方自治が崩壊=反射弓に抑制が効かない=深部腱反射が亢進する状態)

深部腱反射メカニズム2

 

もしくは、いくら国が統制(中枢神経系が抑制)していても、地方自治自体が荒れ果てていればどうにもなりません。(筋肉の器官や求心性の神経線維など反射弓のどこかに問題がある=深部腱反射が減弱すること)

深部腱反射メカニズム3

 

ですから中枢神経系での抑制と脊髄レベルでの反射弓、このどちらにも問題がない場合、深部腱反射は正常に機能します。

 

ひとつ気をつけていただきたいのは、健常人で病変がない場合にも、反射が亢進したり減弱したりすることがあります。

深部腱反射が亢進(もしくは減弱)していても、左右差がない場合や、病的な兆候がない限り病的という判断にはなりません。

 

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深部腱反射の方法と判定基準

深部腱反射で評価をする部位として、膝蓋腱反射、アキレス腱反射・上腕二頭筋反射・上腕三頭筋反射などがあります。

以下では一番代表的な膝蓋腱反射を見ていきましょう。

 

1.膝蓋腱の位置を確認します。膝蓋腱はお皿の下にあります。

深部腱反射膝蓋腱反射1

 

2.できるだけ被験者にリラックスしてもらいます。(座っていても、寝ていてもOKです)

姿勢や精神的状態、周囲環境によって反射の出方が変わるため注意が必要です。

 

3.道具は打腱器(だけんき)を使います。

打腱器深部腱反射DTR1

打腱器を使う際のポイントは、軽く握り、手首のスナップを使って叩くことです。

打腱器の使い方握り方ダメな例

打腱器の使い方握り方良い例

スナップが使えないと腱反射をうまく出せなかったり、叩く力が毎回変わったりするので、正しい評価ができません。

 

4.お皿の下の膝蓋腱部分を叩きます。

深部腱反射膝蓋腱反射2

すると膝から下が勝手に動きます。

 

動く量には正常人でも多い人もいれば、少ない人もいます。リハビリの学生時代にはたくさん動く人が被験者として重宝されます。

これを左右で行い反射の程度を比較します。

 

5.深部腱反射は以下のように記録します。

-:消失
±:軽度減弱
+:正常
++:やや亢進
+++:亢進
++++:著名な亢進

臨床の現場ででは人の絵を書いて、対象部位の深部腱反射を表記します。

たとえば今回検査した左の膝蓋腱反射がやや亢進ならこんな感じですね。

深部腱反射表記亢進

 

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深部腱反射を増強されるイエンドラシック

深部腱反射を増強させたいならイエンドラシック(ジェンドラシックともいう)といって、被験者に自分の手を引っ張り合ってもらうと少し強く反射が出現します。

深部腱反射膝蓋腱反射3

学生同士で練習する際には使ってみると分かりやすいと思います。

 

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まとめ

深部腱反射のメカニズム。亢進や低下など異常の意味についてお伝えしてきました。

 

深部腱反射は脳血管障害や、腰椎ヘルニアなど、神経に関わる病気や疾患を患ったときに必ず必要な検査です。

もちろん最終的には深部腱反射だけ病気が判断されるわけではありませんが、どの部位に障害あるのか、ひとつの目安になることは事実です。

 

今回ご紹介した検査を実際に行っても、正しい叩くことや結果の判断は難しいと思われるので、おひとりで検査することはあまりおすすめしません。

ただ病院でご自身やご家族が検査してもらう機会があれば、「ああ、こういうことを調べているんだな」と想起できると、病気や治療の理解度はぐんと上がるので、知っておいて損はないでしょう。

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