外来リハビリができる期間は何日まで?なくなるって本当?

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外来でリハビリが受けられる期間があることをご存知ですか?

リハビリの期間についてはこれまでも議論されてきましたが、今後はもっと大きな問題に発展する可能性があります。

外来でリハビリを行っていると、よく聞かれるのが

「ここではいつまでリハビリが受けられますか?」

という質問です。

 

リハビリを受けたことがない方には質問の意味が分からないかもしれませんが、病院や医院(クリニック)で行うリハビリには標準的算定日数というものがあります

標準的算定日数が分かりにくければ、「リハビリができる上限日数」「リハビリができる期間」と置き換えれば分かりやすいでしょう。

 

この標準的算定日数を超えてリハビリをすることが最近厳しくなってきています。

入院中はあまり問題にはなりませんが、外来でリハビリ行っていく際にはこの標準的算定日数が非常に大きな制約となります。

 

目次

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リハビリの標準的算定日数は?

まずリハビリの標準的算定日数ですが、これは疾患によって違います。

 

こちらのブログのメインテーマである股関節疾患は運動器リハビリテーション科という項目に当てはまるので、標準的算定日数は受傷日・手術日から150日です。

運動器リハビリテーションには五十肩、腰痛、膝関節痛、骨折、捻挫など、関節や骨、筋肉に関する疾患が含まれます。

 

脳血管疾患(脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血など)は脳血管疾患等リハビリテーション科という項目に当てはまり、標準的算定日数は発症日・手術日から180日となっています。

 

心疾患(心筋梗塞、狭心症、慢性心不全など)は心大血管疾患リハビリテーション科という項目に当てはまり、標準的算定日数は治療開始から150日となっています。

 

最後に呼吸疾患(慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎、肺がんの手術後など)は呼吸器リハビリテーション科に当てはまり、標準的算定日数は治療開始から90日となっています。

 

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起算日に注意

上記に記した標準的算定日数のポイントは、あくまで「起算日から数えて」ということです。

起算日とは運動器リハビリテーションでいえば「受傷日・手術日」、脳血管疾患等リハビリテーションでは「発症日・手術日」、呼吸器リハビリテーション・心大血管疾患リハビリテーションでは「治療開始」が起算日となります。

 

どんなときに問題になるか、人工股関節置換術を例に挙げます。

 

1月1日に人工股関節置換術を受ければ、起算日は1月1日になります。

標準的算定日数はここから数えて150日ですので、おおよそ5月の末まではリハビリが受けられます。

 

人工股関節置換術の場合、手術後に150日入院していることはあまりないので、退院後外来リハビリに通われる方も少なくありません。

たとえば2月末に退院して、3月1日に外来リハビリを手術した病院や近くのクリニックで開始しても、起算日は変わらず1月1日です。

3月1日を起算日として150日リハビリが受けられるわけではないのです。

 

運動器疾患や脳血管疾患では、治療中に急に悪くなることがある(急性増悪)のですが、その場合起算日をリセットして、急性増悪した日に変更できます。

 

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標準的算定日数を超えるとリハビリはできないの?

冒頭でも少し触れましたが、ここが大きな問題になります。

実はいまの制度でも標準的算定日数を超えてリハビリを受けることは可能です。

 

ただしここには条件がありまして、運動器リハビリテーションなら「治療を継続することにより状態の改善が期待できると医学的に判断される場合」には、150日を超えても月13単位までリハビリを続けることができます。

つまり「もうちょっとリハビリすれば改善する可能性があるんですよ」と医師が判断した場合には継続が可能です。

 

しかし、現実的には標準的算定日数超えでリハビリを行うことはかなり厳しくなっています。

 

国としてリハビリを長引かすことはあまり良いとしていませんので、標準的算定日数を超えてリハビリを行った場合、本当に病状の改善が期待できるのかが厳しく問われます。

中には保険請求をしたときに、一切認められない場合もあります。

 

そうなると標準的算定日数を超えてリハビリをしても、保険点数がいただけないので、多くの外来リハビリをしている病院や医院ではこれを回避しようとします。

 

どうやって回避するかというと、ひとつは150日を超えたリハビリは「ルール上できません」と断る方法。こちらを選択する病院や医院が増えています。

もうひとつは、変形性膝関節症でリハビリをしていた患者さんの疾患名を腰痛に変えたり、股関節痛に変えたりする方法です。

 

実際、変形性膝関節症で膝痛を抱えている方は腰痛を抱えていることも多いです。

ですから、当てはまりそうな疾患名を標準的算定日数を迎える前に無理矢理つけて、どうにかリハビリが受けられるように細工をします。

 

リハビリを受けているときに、リハビリテーション実施計画書を渡されることがあると思いますが、その左上に書かれている疾患名が診断も受けていないのにいつの間にか変わっていたら「何かあったのかも」と疑ってください。

 

当てはまりそうな疾患名で回すことは本当はダメなので、最近は標準的算定日数ごとに疾患名が変わることがバレて、保険請求が通らないことも増えてきました。

 

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外来でのリハビリは今後どうなるの?

今後の予想としては、標準的算定日数は長くはならず、どんどん短くなっていくでしょう。ということは、外来でリハビリを受けられる期間も短くなるということです。

 

しかも今後の方向性次第では、次々回の診療報酬改訂時に外来リハビリがなくなるかもしれないという話も耳しました。

 

先ほども申し上げましたが、国は漫然とリハビリを続けることを嫌っています。改善の余地がないのにリハビリを続けること、医療費のムダってことですね。

ですから介護保険に移行して、介護保険の範囲内でリハビリを受ける方向にシフトしています。

 

ただし介護保険でリハビリ受けることについては問題もあります。

 

誰もが介護保険の認定を受けられるわけではない

介護保険を利用するためには、65歳以上で介護や介護予防が必要と認定を受けること(第1号被保険者)か、40~65歳未満で特定疾病により介護や介護予防が必要と認定される必要があります。

 

特定疾病は以下の疾患です。

  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 後縦靭帯骨化症
  • 骨折を伴う骨粗しょう症
  • 多系統萎縮症(旧シャイ・ドレーガー症候群)
  • 初老期における認知症
  • 脊髄小脳変性症
  • 脊柱管狭窄症
  • 早老症
  • 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症および糖尿病性網膜症
  • 脳血管疾患
  • パーキンソン病関連疾患(旧パーキンソン病)
  • 閉塞性動脈硬化症
  • 関節リウマチ(旧慢性関節リウマチ)
  • 慢性閉塞性肺疾患
  • 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
  • がん(末期)

 

たとえば30歳のサッカー選手が前十字靭帯を断裂して、内視鏡の手術を受けたとしましょう。

前十字靭帯断裂では、スポーツ復帰には約6ヶ月かかると言われていますが、前十字靭帯断裂後の内視鏡手術は運動器リハビリテーションに当てはまるので、標準的算定日数は150日です。

 

ということは、この方は5ヶ月までしかリハビリが受けられないということになります。

しかも年齢も30歳なので介護保険認定の対象にはなりませんので、介護保険でリハビリを続けることができません。

 

リハビリが必要な人でも、若くて特定疾病に入らなかったら受けられない状況は非常に危ういです。

 

介護保険はリハビリのためだけにあるわけではない

介護保険を受けておられる方に必要なサービスはリハビリだけではありません。

ひとり暮らしの人であれば、ご飯を作ってくれるサービスの方がリハビリよりも優先順位は高いでしょうし、看護師の訪問が必要な人もいるだけです。

 

家族と同居していれば、身の周りのことは家族が手伝ってくれるでしょうから、ヘルパーに回す単位を訪問リハビリやデイケアに回すこともできます。

ただしひとり暮らしであれば、まずは生きていくためのサービスが最優先になり、リハビリに回す単位がなく、リハビリを希望していても単位が足りないために介護保険でリハビリが受けられない人もいます。

 

 

以上のように、介護保険を利用してのリハビリにシフトしても、本当に必要な人がリハビリを続けられないことになってしまうのです。

 

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まとめ

外来でリハビリできる期間と、外来リハビリの今後の方向性についてお伝えしてきました。

 

不確定な要素も多い話ですが、高齢化社会の到来で国の財源が厳しい状況の中で、良い方向に動くことがないのは火を見るより明らかです。

そういう意味では、儲け主義で漫然とリハビリを行っている病院やクリニックは今後淘汰されていくでしょう。

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