横隔膜をご存知ですか?呼吸に使われるくらいはご存知かもしれませんが、実はこの横隔膜が全身の動きを考えたときにとても大事な役割を果たしています。もちろん股関節の運動にも深く関わっています。
今回は横隔膜がなぜ股関節の運動に関わってくるのか、解剖から紐解いてお伝えしていきます。股関節と横隔膜の関係を今回は取り上げていきます。
呼吸に使われる横隔膜ですが、その存在はあまり知られていません。
そんな方には「焼き肉で食べるハラミですよ」と伝えると、すぐに理解していただけます。
そうなんです。よく食べている焼肉のハラミは牛の横隔膜です。そう言われると少し身近に感じられるのではないでしょうか。
少し身近になったところで、まずは横隔膜の解剖についてご説明します。
横隔膜の解剖と機能・役割
横隔膜は名前が「膜」となっていますが、膜ではなくドーム型をした厚みのある筋肉です。大事なことなのでもう一度いいますが横隔膜は筋肉です。
これが横隔膜を正面から見た図です。
骨を透明にした方がわかりやすいので、スケルトンにして横隔膜にスポットを当ててみましょう。
立体的な感じがつかめると思います。
横隔膜は呼吸に使われることで有名ですが、吸気時(息を吸うとき)に働きます。
こちらは呼吸時の横隔膜の動きを前から見たイラストです。左が吸気時、右が呼気(息を吐くとき)です。
次に呼吸時の横隔膜の動きを横から見たイラストです。同じく左が吸気時、右が呼気時です。
このように横隔膜が下がることによって胸腔内が陰圧になり空気を肺に取り込むことができます。逆に横隔膜が上がると肺の中の空気が押し出されます。押し出すときはゴムパッチンと同じで、特に力は要りません。
横隔膜は不随意筋、つまり意識うんぬんとは関係なく動いています。だって意識しないと横隔膜が動かなかったら、私はずっと呼吸を意識しないといけません。これは心臓と同じ仕組みで、こういう筋肉はできるだけエネルギー消費が少なく済むようになっています。
あともうひとつ大きな役割があります。それは横隔膜が胸とお腹の境にあるということです。
横隔膜は肺や心臓が入っている胸腔(きょうくう)と、大腸や小腸が入っている腹腔(ふっくう)の境にあります。横隔膜より頭側(上部)が胸腔、尾側(下部)が腹腔となります。
完全な境界になってしまうと食べ物や血管が下半身におりてくることができませんので、横隔膜には3つ穴が開いています。
下図は横隔膜を下から見たイラストですが、どこに3つ穴があるか分かりますか?
分かりにくいですが、正解はこちらです。
①大動脈裂孔:大動脈と胸管が通る
③大静脈裂孔:下大静脈が通る
③食道裂孔:食道と迷走神経が通る
横隔膜は筋肉なので起始と停止があります。横隔膜は剣状突起の後面、下位肋骨及び肋軟骨の内面、第1~3腰椎体と椎間板を起始とし、腱中心を停止とします。
ここまでのポイントはふたつあります。
- 起始の一部が腰椎であること。
- 横隔膜はドーム型の筋肉だということ。
筋肉は先ほど紹介したとおりなのですが、起始の一部が腰椎ってよくわからないと思います。ただこのふたつはあとから重要になりますので必ず覚えておいてください。
いつもお世話なっている理学療法士の中島先生が横隔膜の動画を作ってくださっているので、もっと詳しく知りたい人はそちらをご覧になれば横隔膜の動きがしっかりできます。
引用)理学療法士 PhysiTheraResearch by 中島卓也
横隔膜の解剖や機能についてはなんとなく理解できたでしょうか。
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横隔膜と大腰筋の特別な関係とは?
ここでなぜかいきなり股関節に関わる筋肉である大腰筋が登場します。
大腰筋は腸腰筋の一部で、腰部と股関節の両方に関わる筋肉です。この筋肉を知らない方はまずこちらをご覧ください。
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こちらの記事にも書かれていますが、大腰筋は第1~5腰椎を起始部としています。
ここでさきほど2つ目のポイントとしていた、横隔膜の起始部のひとつである腰椎部分とつながってきます。そうなんです。横隔膜と大腰筋は起始の一部が重なっているのです。
腰のあたりをちょっとアップにしてみましょう。
腰のあたりで横隔膜と大腰筋が重なっているのがおわかりいただけるでしょうか。
もし横隔膜が正常に機能していなかったり、横隔膜が短縮してカチカチになっていればどうなるでしょうか。なんとなく想像できるかもしれませんが、大腰筋の動きにも影響を与えます。ですから、大腰筋をしっかり動かすためには横隔膜が正常な状態であることが必要です。
もうひとつのポイントの「横隔膜はドーム型の筋肉」ということですが、これがなぜ重要なのでしょうか。
先ほどの解剖の図をもう一度ご覧ください。
こうして見るとドーム型であることがわかりやすいのですが、けっこう下まであることがわかりますか。
先ほど横隔膜はの作用は呼吸の吸気と書いたのですが、横隔膜がかたくなったり短縮したりすると胸郭と体幹が屈曲するように強いられます。そんな姿勢で「胸を張る」とか「良い姿勢になる」とかしようとしても、正直なところ難しいのです。
ですから姿勢をよくするために腸腰筋やハムストリングスをストレッチするように、普段はまったく考えることがない横隔膜にも気をつけてあげる必要があります。
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横隔膜のストレッチの正しい方法
それではここからは横隔膜のストレッチをご紹介します。
一般的な方法
まず手をついた状態で身体を起こします。
その状態から身体を反るように伸ばしていきます。
このとき鳩尾(みぞおち)を前に突き出すして、あごを上げるようにしましょう。
別法1
上記の方法よりも楽に行える方法です。ただし少し伸張感は得られにくいかもしれません。
用意するのは枕。その枕を縦に起きます。
鳩尾の裏あたりに枕がくるようにして、この上に寝ます。
このとき手足を大きく開いて、大の字に寝るようにしましょう。
別法2
かなりハードな方法なのでおすすめしませんが、一番伸張感は得られます。
ベッドや椅子の端から頭を出して寝ます。その状態からバンザイをして伸ばします。
頭に血がのぼりやすいですし、戻るときが大変なのでムリしないようにしてください。
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まとめ
横隔膜と大腰筋の関係、横隔膜のストレッチについてお伝えしてきました。
腸腰筋やハムストリングスを気にかけている人はいても、横隔膜の動きやかたさを気にかけている人はほとんどいません。それぐらい注目されていない筋肉です。
ただ逆にいうと、普段はケアしていないということですから、横隔膜の改善すると姿勢や動きが変わってくるかもしれません。