猫背で姿勢が悪いとか、年をとって腰が曲がってきたとか、姿勢を気にされる方は多いです。
悪い姿勢は股関節の痛みにもつながりやすいですので、やはり気になるところ。
では股関節を痛めにくい良い立位姿勢とはどのような姿勢か分かりますか?
患者さんのリハビリをしているときに「良い姿勢で立ってください」とお伝えすると、多くの方が胸を張って腰を反らした姿勢をとられます。
いわゆる背筋を伸ばした姿勢ですね。
小学校の先生に「胸を張れ!」と朝礼や運動会のときに叱られた経験があるので、医療従事者になる前の私にとっても良い姿勢とは胸を張る姿勢でした。
でもこれって本当に良い姿勢といえるのでしょうか?
兵隊さんの気をつけの姿勢は、兵隊さんにとっては良い姿勢かもしれませんが、この姿勢が身体に負担のかからない姿勢かと言われればそれは違います。
同じようにモデルさんや女優さんの姿勢が股関節痛の患者さんにとって良い姿勢かと言われれば、それもまた違います。
では身体にとって負担のかからない良い姿勢とはどんな立位姿勢なのでしょうか。今回の話はすごく重要ですので、しっかり理解してください。
その人にとっての姿勢とはよい姿勢とは?
立位に限らず姿勢を考えるときには、いくつもの視点で考える必要があります。
人がその姿勢でいるときに、安定性はあるのか、筋肉の活動が適切に保たれているのか、疲れにくくないかなどなど、力学的な視点で考える必要があります。
もし安定はしているが、筋肉が過剰に働いていてすぐに疲れる状態というのは、力学的に観るとあまりよくない姿勢だといえます。
美的な視点から見たよい姿勢
これは分かりやすいですよね。いわゆるモデルさんの立ち姿勢をイメージしてもらえばいいでしょう。
これを評価するのは簡単で「美しいかどうか」、それに尽きます。
先ほどの力学的な視点はいかに力を使わずに姿勢を保つことを重視しますすが、こちらはいかに動きやすいかを問います。
人の姿勢は安楽にいるときが一番動きやすいかといわれればそうではありません。
だって簡単に楽に立っている状態から、いきなり動作を起こすのって大変そうじゃないですか。
一番分かりやすいのはサッカーのゴールキーパー。
ゴールキーパーの立位も立位には違いありませんが、いつでも動けるように機能的な立位になっていますよね。
その人にとって必要な立位はどのようなものか、それを考えないといけません。
モデルさんがゴールキーパーのような姿勢でいると見映えが悪いですし、サッカーのゴールキーパーが力学的に楽な立位を追い求めるとボールに反応できません。
股関節痛など、私たち理学療法士が対象とする患者さんや利用者さんの場合、力学的な視点で観ていくことが多いです。
股関節に痛みを抱える方にとっての良い姿勢とは、力学的な視点で負担がかからない姿勢を保持するということです。
まずはそれがポイントになります。ここまではよろしいでしょうか。
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身体の軸を考える
身体の軸を決めれば姿勢と歩行が変わり負担は減るというお話を以前こちらのブログでしました。
このとき人の身体を観察すときの軸についてお伝えしました。
引用)図解入門よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book)
例えば身体を側面から観察すると、耳垂(耳たぶ)、肩峰、大転子、膝関節の前面、外果(外くるぶし)のやや前方が一直線になる姿勢であれば良い姿勢です。
反対にこの直線からどこかずれていると、身体のどこかに歪みがあり、筋肉に不自然な負担がかかっています。
股関節の患者さんでいうと、いわゆる「へっぴり腰」のような姿勢や、腰を反らす「反り腰」姿勢になっている方が多いです。
このような姿勢では先ほどお伝えした軸からずれています。
基本軸からずれた立位姿勢になる原因はいくつもあります。
関節がかたくなっていてその姿勢しかとれなこともあれば、股関節周囲の筋肉がうまく機能していないこともあります。
関節に問題がある場合は、医師や理学療法士に診てもらった方がいいので、ここでは筋肉が機能していない場合の対処法をご紹介します。
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良い姿勢を保つために重要な筋肉とは?
良い姿勢になるか、あるいは身体に負担のかかる「へっぴり腰」や「反り腰」の姿勢になるかは、ふたつの大きな筋肉の状態に左右されることが多いです。
ひとつはお尻にある大殿筋で、もうひとつは身体機能の核となる腸腰筋です。
このふたつの筋肉のバランスが崩れ、カチカチで(もしくはダルダルで)働きにくくなると、重心線からずれた悪い姿勢になってしまいます。
ここで補足ですが、筋肉がカチカチだと力が入っているから良く働いていると思われる方がいらっしゃるかもしれません。
筋肉というのは適切な張力(張り)を保った状態で一番力が発揮できます。
肩こりでガチガチの肩周囲の筋肉が、うまく動かないのを想像していただければわかりやすいかもしれません。
またダルダルの筋肉が働きにくいというのは、力が入りにくくなっている状態を示していますので、当然働きも悪くなっています。
本来、筋肉は伸び縮みして働くものですので、働きにくくなっている筋肉はストレッチをしたり、運動をして筋肉を使うこと(筋肉を収縮させる)で適度な張力にしたりする必要があります。
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大殿筋と腸腰筋の調整法
ここからは大殿筋、腸腰筋の調整方法についてお伝えしていきます。
大殿筋の調整
まずは大殿筋からです。ストレッチで筋肉の状態を整えていきます。
大殿筋のストレッチについては以前こちらのブログで詳しくお伝えしていますので、そちらをご覧ください。
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次に筋肉を収縮させて働かせていきます。これにはブリッジ運動を利用します。
まず仰向けに寝た状態で両膝を立てます。
この状態からお尻を持ち上げます。
上げ下ろしで1セットです。これを20回繰り返します。
今回は両脚でお尻を持ち上げる運動をお伝えしていますが、これでは物足りないと感じられる方は、片脚だけでお尻持ち上げるようにするとより負荷をかけることができます。
腸腰筋の調整
次に腸腰筋です。こちらも先にストレッチで筋肉の状態を整えていきます。
腸腰筋のストレッチも以前紹介していますので、そちらをご参照ください。
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次に筋肉を収縮させて働かせていきます。
写真のように脚を伸ばして座った状態から身体の後ろに手をついて支えます。このとき両脚を浮かせて片側の膝は曲げて、反対側は伸ばしたままです。
これを左右交互に繰り返します。
左右交互の曲げ伸ばしを20回繰り返します。
腸腰筋は股関節を曲げるときに主に働く筋肉ですので、この運動で腸腰筋の筋活動を促すことができます。
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まとめ
良い姿勢を保つ方法と立位の姿勢観察のポイントについてお伝えしました。
自分にとって良い姿勢とはどのような姿勢かをまず理解する必要があります。
その上で姿勢を観察し、なぜそのような姿勢になっているのかを考えていきましょう。
大殿筋や腸腰筋など、股関節の前後についている大きな筋肉がしっか、り働くことが良い姿勢を保つためには必要ですので、姿勢観察と合わせて筋力もチェックしましょうね。
筋肉はちょうどよい張力のときに一番機能しやすくなるので、カチカチでもなくダルダルでもない筋肉の状態を目指していきましょう。