横歩きのリハビリの効果と中殿筋の筋活動について考えてみました。
リハビリのときに、よく横歩きの指導をすることがあります。デイサービスの機能訓練などでも、横歩きの練習を取り入れている場合あり、実際に練習したことがある方も多いのではないでしょうか。
でも横歩きって何か良さそうだけど、どこの筋肉に効いているのか、いまいちよく分からずにやっている方はいらっしゃいませんか。
横歩きのリハビリで一番クローズアップされる筋肉は中殿筋です。
中殿筋分かりますか?分からない人のために簡単に中殿筋を復習しておきましょう。
中殿筋の解剖
中殿筋は股関節の外転(外に開く)作用する筋肉です。
復習も兼ねて解剖から復習しますが、中殿筋についてはこちらでもお伝えしていますので、詳しく知りたい方はこちらも合わせてご覧ください。
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ではいきましょう。
こちらは人間の身体を左後ろから見たイラストです。皮膚はないですが何となく分かりますね。
黄色の部分が中殿筋で、中殿筋を被い隠しているのは大殿筋です。大殿筋は邪魔なので取り除くとこんな感じです。
大殿筋にはたくさんの筋肉が被われていることが分かりますね。
分かりやすくするために中殿筋だけにしてみます。
スポンサーリンク中殿筋の役割
中殿筋があるのは、いわゆる腰骨(骨盤の腸骨稜)の下あたりです。
主には股関節の外転に働きます。
外転とは股関節を外に開く運動で、以下のような運動をするときに中殿筋は使われます。
また中殿筋にはもうひとつ重要な役割があり、それは骨盤の固定です。
歩行時に片脚になると、支えがなくなりますし片脚の重みの分だけ、本来骨盤が傾斜します。
ただ人の歩行を見ていると骨盤が大きく傾いてる人は少ないです。このとき骨盤が傾かないように仕事をしているのが中殿筋です。
外転や骨盤の固定など中殿筋役割をみていくとき、もうひとつ考えておかないといけないことがあります。それは筋肉の収縮の様式です。
筋肉の収縮には、長さにスポットを当てると等張性収縮(求心性と遠心性)と等尺性収縮があります。
等張性収縮
「張りが等しい収縮」で、長さは長くなったり短くなったりします。
等尺性収縮
「尺が等しい収縮」なので、長さは変わりません。
股関節外転など運動が起きるときには主に等張性収縮、骨盤の固定など動きが起こっていないときは等尺性収縮であることが多いです。
等張性収縮と等尺性収縮についてはこちらで解説していますので、分からない方は先に必ずこちらをご覧ください。
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ここまで、解剖と役割は大丈夫でしょうか。
この先のお話はここまでを理解していないと分かりにくいので、必ず参照先をご覧もご覧になってからおすすみください。
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横歩きリハビリの効果
では前置きが長くなりましたが、ここからが今日の本題です。横歩きのリハビリをするときに中殿筋はどのように働いているのでしょうか。
まず横歩きのスタートポジションです。この状態から今回は左方向に横歩きするとします。
左脚を外転した状態で止めてみましょう。
このとき左脚は外転していますので、等張性収縮(求心性)をしています。これは分かりやすいですね。
右脚は左脚を外転しようとした一瞬等尺性収縮をして、その後左脚が床に着くまでのほとんどは等張性収縮(遠心性)をしながら骨盤を固定しています。
先行する左脚は求心性の等張性収縮、後行する右脚は遠心性の等張性収縮。そう考えると収縮の性質上、後行する脚の方が筋活動が多く、強化の対象となることが分かります。
中殿筋強化のために横歩きで筋活動を比較した研究でも、側方移動を実施する際は先行脚よりも後続脚中殿筋が強化対象となる1)と報告されています。
脚を閉じる際には、逆に左脚が遠心性の等張性収縮をしながら骨盤を固定することになります。
ですから、開く閉じるという脚の運動をしている側の中殿筋よりも、骨盤を固定している中殿筋にぜひ集中しましょう。
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まとめ
横歩きのリハビリの効果と中殿筋の筋活動についてお伝えしてきました。
横歩きのリハビリと中殿筋を考える際には、中殿筋の解剖や収縮様式などの理解は不可欠です。
逆にこれが理解できればリハビリや運動の効果が理解できますので、しっかり解剖や運動学をしっかり理解してから実践してみましょう。
【文献】
1)中殿筋強化のための臨床的研究 平岡大輝,他.第26回東海北陸理学療法学術大会