手にはどんな骨があるのでしょうか?今回は解剖学的に手の骨の名前や部位を見ていきます。
手のすべての骨を網羅しましたので、これを見れば手の解剖の概要は理解できます。ぜひ最後までお読みください。
手は人間の身体で一番動かせる部位です。
人形浄瑠璃や操り人形で細かい動きをしようと思えばたくさんの糸が必要になりますが、これと同じように「一番動かせる=骨や筋肉、関節がたくさんある」ということです。
人間の手にもたくさんの骨があり、それぞれに役割があって大切な役割を担っています。
そんな手の解剖について細かく解説していきます。イラストもたくさん使っているので、しっかり理解できますよ。
手とはどこからどこまでを指すのか?
先に少しだけ話しておこうと思うのですが、みなさんは「手」と聞いたときどの部位を想像しますか?
手首から先の部分を想像する人もいれば、中に肩から指先までとイメージする人もいますが、正解は前者の手首から先の部分です。
後者は解剖学的には上肢(じょうし=腕)のことで、肩関節から肘関節までは上腕、肘関節から手首(手関節)までを前腕、手を手部(しゅぶ=いわゆる手のこと)と呼びます。
ですから、本来なら手の骨の解剖といえば手首から先の手部を解説するべきなのですが、全体の概要を知ってもらった方が理解しやいので、先に簡単に上肢の骨の解剖を解説して、その後に手部の骨の解剖を詳しく解説します。
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上肢(腕)の骨の解剖
ではまず上肢の骨の解剖を解説していきます。
こちらが上肢の骨格の全体像です。1枚目が前から見た図で、2枚目は後ろから見ています。
上肢の根元には肩甲骨があり、そこに上腕骨がくっついて肩関節を形成しています。今回は筋肉に話はしませんが、上腕骨の前面には力こぶでおなじみの上腕二頭筋、後面にはふりそでと称されてる上腕三頭筋があります。
上腕骨の先の前腕部には橈骨(とうこつ)と尺骨(しゃっこつ)があります。手首で脈をとるときに診るのは橈骨動脈で、橈骨の上を通っています。
橈骨と尺骨の先に今回の記事のメインテーマである手があります。
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手の骨の解剖は分けて見ると理解しやすい
最初に手の骨の解剖の全体像を理解しておきましょう。
レントゲンを見ると手はこんな感じです。これは左手のレントゲンで、手の甲(手背)側みた写真です。
これだとなんのこっちゃ分からないので、イラストにしてみましょう。こちらは左手を手の平側から見た図。
なんか小さい骨と長細い骨があってややこしそうですよね。実は手の中には27個の骨
があります。
※手の平側から見た図
上図のように手を手根骨・中手骨・指骨の3つのパートにまず分けましょう。
以下、それぞれ詳しくみていきます。
手根骨の解剖
手根骨は橈骨と尺骨からつながる部分で、手首(手関節)を構成します。
手根骨は8つの小さな骨がそれぞれ絡み合っています。靭帯もたくさんあるので、真ん中の方の骨の動きは小さいです。
手根骨はさらに近位(手前側)と遠位(奥側、指先側)に分けます。(※手根骨に関してはすべて手の平側から見たイラストです。)
近位の手根骨には豆状骨、三角骨、月状骨、舟状骨、遠位の手根骨には大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鉤骨(ゆうこうこつ)があります。
ちなみに手根骨の覚え方は「父(豆状骨)さん(三角骨)月(月状骨)収(舟状骨)大(大菱形骨)・小(小菱形骨)、ゆうとう(有頭骨]・ゆうこう(有鉤骨)」なのですが、最後の有頭骨と有鉤骨はかなり強引で覚えにくかった記憶があります。
豆状骨
豆状骨は読んで字ごとく「豆」のような骨で、これは他の骨と違い独立した状態(浮いた状態と思ってください)で存在しています。このように浮いた状態で独立している骨を種子骨(しゅしこつ)といいます。
人体の種子骨のわかりやすい例は膝にあるお皿(膝蓋骨)ですね。お皿を触ってもらえればわかりますが、ふわふわ浮いたような状態で存在しています。
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三角骨
三角骨は手根骨の後ろ(手背側)にあります。正直三角ではない気がしますが・・・。
月状骨
こちらもあんまり月の形ではありませんが月状骨です。
キーンベック病といって、つぶれて壊死する病気になることで有名。中の方にあるので、血流が悪いので壊死しやすい部分なんです。
舟状骨
手根骨では一番有名な舟状骨です。小さい骨の集まりである手根骨の中では一番大きな骨でもあります。
舟状骨は解剖的嗅ぎタバコ入れ(タバチュール)のすぐ下で触れることができます。解剖的嗅ぎタバコ入れとは、がんばって手をパーにして指をやや反り気味にすると、親指の根元あたりにできる凹みのことです。
触れやすいということは、外部からの刺激も受けやすく、手根骨の中では骨折しやすい骨でもあります。
大菱形骨
ここからは遠位の手根骨です。
大菱形骨は親指の根元にあって、親指と関節しています。
小菱形骨
手根骨で一番小さいのが小菱形骨です。
有頭骨
中指から一直線のところにあるのが有頭骨です。
有鉤骨
鉤(こう)とは「出っ張り・突出」の意味で、有鉤骨にはたんこぶのような出っ張りがあります。
中手骨の解剖
次は中手骨です。※以下のイラストは手背側から見ています。
中手骨は「手の真ん中にある骨」のことです。(字のまんまですが・・)
さきほどの手根骨と次に紹介する指骨の基節骨をつないでいます。
指骨
最後は指骨です。指骨もさらに基節骨(きせつこつ)、中節骨(ちゅうせつこつ)、末節骨(まっせつこつ)の3つに分けます。
基節骨
基節骨は字の通り指骨の「基部」にある骨で、節(ふし)とは竹の節を想像してもらえば理解しやすいでしょう。
中節骨
中節骨は基節骨と末節骨の真ん中にあります。中手骨とごっちゃになる人が多いので間違えないようにしましょう。
あと親指は短いので中節骨がありません。親指は基節骨と末節骨のみです。
末節骨
最後が末節骨です。一番末端にあるのでこの名前がついています。
手の骨の解剖の名前と部位に関しては以上です。
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おまけ
中手骨や指骨は親指が第1、人差し指(示指)が第2、中指が第3、薬指が第4、小指が第5と表記されます。
たとえば野球選手がデッドボールで「右第5指中節骨骨折」と書かれていれば、右手の小指の中節骨を骨折したということです。これが「左第3指中手骨骨折」であれば、左手の中指の近位にある中手骨を骨折したんだなって理解できるはずです。
解剖を知っておけばご自身の症状の理解につながるだけでなく、ニュースや新聞を見たときにすぐに理解できるという利点もありますよ。ぜひ覚えておいてくださいね。