下肢(脚、足)にはどのような神経があるのでしょうか。
今回は下肢の神経の解剖を取り上げます。
解剖学といえば筋肉と骨のイメージかもしれませんね。
ただ筋肉が動けるのは神経がつながっていて、ちゃんと脳からの電気信号が送られているからです。そう考えると、筋肉を覚えると同時に、その筋肉の支配神経は何か覚える必要があります。
実際、理学療法の学生時代に筋肉を覚えるときには、筋肉の名前、筋肉の走行、起始・停止、支配神経、髄節レベル、作用、この6つはセットで覚えていました。
下肢にはどんな神経があるのでしょうか。今回は特に重要な神経をピックアップします。
図で理解すれば簡単に覚えられますので、一緒にみていきましょう。
下肢の神経はどこからくるの?
下肢の神経と書いているのですが、下肢にある神経は下肢から出ているわけではありません。
ちょっと意味が分かりにくいですね。
では下肢の解剖の図で確認してみましょう。これは骨盤を後ろから見た図です。
第2~5腰椎と仙骨を外してみます。
何やら見慣れないものが現れました。
真ん中の黄色の太い神経が脊髄で、脊髄から各部位にいく神経が左右に伸びてるのが分かります。
ただ脊髄は腰椎の高さ太くなっていますが、それより遠位(下の方)には伸びていません。
その変わりに、馬のしっぽのように細かい神経が無数の下肢の方に伸びていきます。これを馬尾神経(ばびしんけい)と呼びます。
つまり脚の神経は腰あたりの脊髄からでたものが、枝分かれしながらそれぞれの筋肉に到達しているということです。
このあたりは以前しびれについて書いたときにもお伝えしていますので、詳しく知りたい方はそちらをご覧ください。
下肢で覚えるべき神経は?
下肢には無数の神経があります。図で見るとこんな感じです。
めちゃくちゃ多くないですか?実際、私も覚えていない細い神経はたくさんあります。
みなさんは治療家にあるわけではありませんので、そんなに細かい神経まで覚える必要はありません。
ですから、最低でもこの神経を覚えていたら理解が深まるという神経をピックアップしてご紹介します。
その神経とはこちらです。
- 上殿神経・下殿神経
- 大腿神経
- 閉鎖神経
- 坐骨神経
聞きなれない名前ですが、それぞれ神経の走行を考えると覚えやすいです。
上殿神経・下殿神経:殿部(お尻)を走行
大腿神経:股関節と大腿の前面を走行
閉鎖神経:股関節と大腿内側を走行
坐骨神経:脚の後面を走行
お尻は上殿神経と下殿神経、股関節の前は大腿神経、股関節の内側は閉鎖神経、後ろは坐骨神経ということです。
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下肢の神経詳細
ではそれぞれ個別に見ていきましょう。
支配する(影響を与える)筋肉も一緒にご紹介します。
上殿神経・下殿神経
まずは上殿神経と下殿神経です。
「殿」の字が付いているので、殿部(お尻)にいく神経だとイメージできます。
名前の通り、上殿神経は「上殿」なので殿部の上の方に向かいます。
上殿神経は中殿筋、小殿筋、大腿筋膜張筋を支配します。
一方、下殿神経は「下殿」は殿部の下の方に向かいます。
下殿神経は大殿筋を支配します。
大腿神経
次に大腿神経です。
大腿神経は大腰筋、腸骨筋、縫工筋、大腿四頭筋を支配します。
閉鎖神経
次は閉鎖神経です。先ほどの大腿神経より内側を通ります。
閉鎖神経は外旋六筋のひとつ外閉鎖筋と、恥骨筋、大内転筋、長内転筋、短内転筋、薄筋の内転筋群を支配します。
坐骨神経
最後は坐骨神経です。
名前を聞いたことがあると思いますが、坐骨神経痛はこの神経領域の痛みのことをいいます。
坐骨神経はハムストリングス(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)と、大内転筋の一部を支配します。
坐骨神経は膝窩(膝の裏)の上で総腓骨神経と脛骨神経のふたつに分かれます。
総腓骨神経
総腓骨神経の図はこちら。
総腓骨神経はさらに膝の下で深腓骨神経と浅腓骨神経に分かれます。
深腓骨神経
主に下腿前面の中央やその深部に伸びています。
深腓骨神経は前脛骨筋、長趾伸筋、長母趾伸筋、第三腓骨筋、短母趾伸筋、短趾伸筋を支配します。
浅腓骨神経
主に下腿外側に伸びています。
浅腓骨神経は下腿の主に外側の長腓骨筋と短腓骨筋を支配します。
脛骨神経
坐骨神経の流れを引き継ぎ、下腿の膝窩から下腿の後面に伸びます。
脛骨神経は腓腹筋、ヒラメ筋、後脛骨筋、長指屈筋、長母指伸筋を支配します。
足底にある多くの筋肉は、脛骨神経からの流れを受けた内側足底神経や外側足底神経によって支配されています。
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まとめ
下肢の解剖について、特に重要な神経をピックアップしてお伝えしてきました。
下肢の疾患を理解する上では、最低でも今回取り上げた神経を理解しておく必要があります。
こちらのブログで下肢の疾患の記事をお伝えするときにも必要な知識ですので、ぜひ理解して覚えておいてください。