最近股関節疾患の治療として話題の貧乏ゆすり。股関節の疾患の救世主になれるのか?!
近年テレビの健康番組や雑誌の特集記事で、貧乏ゆすりが取り上げられる機会が増えました。
特に股関節の特集記事では「軟骨が再生する!」と大々的に取り上げられることもあり、股関節の軟骨が磨り減って痛みが強い患者さんにとっては藁にもすがる思いで貧乏ゆすりを行います。
そんな流れもあってか当ブログのお問い合わせにも、貧乏ゆすりに関するものが時々届きます。
本日はそんなお問い合わせをひとつご紹介させていただきます。
貧乏ゆすりもやりすぎに関するご質問
届いたご質問は以下です。
タイトル:リハビリについて
性別:女性
年齢:40代
診断名:変形性股関節症
メッセージ本文:
初めまして。
変形性股関節症の手術(キアリ)を受けて1年2か月です。股関節の軟骨の生成がもっとあるといいと言われています。
そのために貧乏ゆすりがよいと言われ、専用の機械を使い始めたところです。
主治医に毎日2時間と言われたのですが、やってみると筋肉痛がひどくなった気がします。(たぶん連続してやったのがいけなかった)
筋肉や骨盤のバランスを見ていただいている先生には、術足の筋力が足りないので、マッサージでほぐしてもらったり、筋肉痛をほぐしてもらっています。
痛みはお尻の後ろと足の外側の部分(膝から腿)にかけてあります。家の中では自由に動けて家事もできます。近距離なら杖なし歩行も可能です。
歩行訓練に入ってからは約1年くらいで、7月に抜釘をしてから杖を使わずに歩く練習もしています。
かかっている病院が自宅から遠いのでリハビリには行っていませんが、時折先述した方に診てもらいアドバイスもらっています。
家でできる何かよいトレーニングがあれば教えてください。どうしても自分の足で歩きたいのです。
今すぐには無理だとは思いますが、なんとかしたいので。よろしくお願いします。
キアリ骨盤骨切り術を受けられ方からのお問い合わせです。
キアリ骨盤骨切り術とは骨盤を切って、しっかり大腿骨頭を覆うようにする手術です。
その後軟骨再生のために貧乏ゆすりがを始めたということです。
こちらの方のご質問で気になったのが貧乏ゆすりの部分です。毎日2時間行って筋肉痛がひどくなっているとのこと。
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貧乏ゆすりの実際
貧乏ゆすりはジグリングと呼ばれ、一部の病院では治療として用いられています。
股関節に疾患を抱える方の運動療法では、関節に負担をかけすぎないように運動することが一般的に求められます。
筋トレや歩行では関節への負担が増加するため、身体を良くするために行う運動が関節を傷つける可能性があります。
これではせっかくの運動が諸刃の剣となってしまいます。そんな中考え出されたのがジグリングです。股関節に負担がかからないように、イスに座って行うことができます。
引用)図解入門よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book)
ジグリングを行うと股関節周囲の筋肉がゆるんで、臼蓋と大腿骨頭の隙間が開大します。
そうすれば股関節内で軟骨への圧迫をゆるめることができます。そして股関節を動かすことにより滑液による軟骨への栄養供給が増え、軟骨が再生していくと考えられています。
ただし注意して欲しいのは、ジグリングによる股関節軟骨の再生のメカニズムは、まだ解明されていません。
マウスを使った動物実験では軟骨の再生が促されたという報告はありますが、ヒトにおける股関節の軟骨再生は証明されていません。
私は貧乏ゆすりについては肯定も否定もしない立場ですので、聞かれれば方法は指導しますが、積極的にトレーニングとして行ってもらうこともしません。
今回のご質問の場合も、貧乏ゆすりについてはアドバイスすることは控えたのですが、貧乏ゆすりに2時間も使うのはもったいないと思いますし、筋肉痛を作るのは得策ではないでしょう。
筋力の差が生まれている原因をしっかり理解して、自分の歩行や姿勢を見直していけば左右差は改善するように感じます。
こちらの方の場合、実際に杖なしで歩くことも可能なわけですから、ある程度筋力があると想像できます。今後歩行や姿勢を変えていくことも可能でしょう。
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まとめ
貧乏ゆすりの効果についてお伝えしてきました。
貧乏ゆすりはまだまだ解明されていないことも多く、「絶対効果がある」とはいえない状態です。
それよりもいつもお伝えしているように、姿勢や歩行を見直して改善していく方が、股関節にとって私は重要と考えております。
ただし股関節の軟骨を再生する治療がない現状では、唯一の希望とされる方法ですので、ご不安な方や余裕のある方は取り入れてみてもいいでしょう。