股関節の痛みの原因となる歩行。歩行が変わると、股関節の負担は大きく変わっていくのです。
みなさんはどのような歩き方をしているか、自分の歩行をじっくり観察したことはありますか。
理学療法士の治療を受けたことがある方なら、治療前の評価でいろいろ指摘されたかもしれません。
「右肩が下がっている」
「左の脚の振り出しが小さい」
「踵から着くようにしましょう」
などなど、歩くという全身運動には多くの要素が必要とされます。
痛みを出さない歩行のポイントは?
歩行の中でも私が重視しているポイントがふたつあります。
ひとつは脚を前方に振り出して踵を着く踵接地への課程、もうひとつは片脚に体重が載った後、脚を後方に蹴り出していく課程です。
ガツン、ガツンと音がでるような歩き方をしていると衝撃が吸収できず、股関節には大きな負担となります。
そして今回お伝えするのは、脚を後方に蹴り出していく課程のお話です。
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歩行周期の立脚期後半の重要性
一般的に歩行では片脚で身体支える時間があり、その後脚を後方に蹴り出していきます。
立脚中期より股関節を伸展させて後方へ脚を伸ばし、その後踵が床から離れます。
このときにしっかり股関節を伸展させることができないと、体重をうまく抜いていことができません。
体重を抜くことを抜重と呼びます。抜重についてはこちらを参照してください。
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抜重がうまくできないと、片脚に載った体重の負担を逃がすことができず、本来は負担がかからなくなる立脚期後半にも立脚側の脚が負担を強いられることになります。
ですから股関節をうまく伸展させて立脚後期を迎えられているかは、股関節痛をお持ちの方の歩行を観察するひとつの指標になります。
股関節をうまく伸展して蹴り出せないと前に進む力が得られませんので、ふくらはぎの筋肉を多く使って前に進む力を得ようとします。
その結果、ふくらはぎの筋肉の太さに左右差が現れますので、立脚後期に股関節をしっかり伸展さえて振り出せているかどうかは、ふくらはぎの太さの比較によって気づくこともあるのです。
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股関節の伸展制限が歩行に与える影響
臼蓋形成不全などで股関節被りが浅いと、股関節の被覆率を高めるために骨盤を前傾させて代償しようとします。
とくに活動性の高い若い世代の方は、このような立ち方をされる方がいます。
今回、ある女性の歩行を、
- 普通の歩行
- ヒールでの歩行
- 片方の股関節に伸展制限がある歩行
- 片方の股関節に伸展制限があるときのヒールでの歩行
以上の4パターンで比較してみました。
伸展制限はテーピングを巻いて、後方に動かないように(伸展しないように)制限をかけました。
けっこう強く巻いたので、立位姿勢からかなり変わっていますね。
テーピングを巻いた後、歩行がどのように変わるのがぜひご覧ください。
普通の歩行
ヒールでの歩行
側面より
正面より
ヒールになっただけで、踵接地時の股関節や膝関節の角度、立脚後期の股関節の伸展角度などが変わっているのがわかるでしょうか。
片方の股関節に伸展制限がある歩行
側面より
正面より
これは一目瞭然ですね。かなり跛行が出現しています。
歩行だけを観て欲しいので音声は消していますが、歩行開始時にかなり驚いた声をあげています。
片方の股関節に伸展制限がありヒールで歩いたとき
側面より
正面より
もう解説するまでもないですね。伸展制限だけのときよりもかなり歩きにくそうになっています。
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まとめ
股関節の関節角度と伸展制限、歩行についてお伝えしてきました。
まずは自分がどのような歩行をしているのかを理解する必要がありますので、理学療法士に評価してもらうのがいいでしょう。
普段は何気なく行っている歩行ですが、その歩行が自分の身体を傷つけている可能性があります。
歩行を変えることは薬を飲むよりも、股関節の痛みを改善することにつながるかもしれませんよ。