立位でふらつきを調べる「ロンベルグ試験」をご存知でしょうか。
今回はロンベルグ試験についてお伝えしていきます。
ロンベルグ試験ってあまり耳慣れない言葉だと思います。
もし聞いたことがある方なら「小脳障害の検査でしょ?」と思っているかもしれませんね。
小脳の病気になったときに確かに用いられる検査のひとつではありますが、実際には少し捉え方は違います。
まず小脳の解剖やその働きを、その後ロンベルグ検査の方法について詳しくお伝えしていきます。
小脳の解剖とその働きとは?
小脳は脳の一部で、後頭部に位置しています。
こちらは人体の骨を左側から見た図です。
頭蓋骨を外すと、脳が現れます。小脳は黄色く光っている部分ですね。
後ろから見るとこんな感じ。
小脳は平衡機能(バランス)や運動、姿勢の調整を司っています。
私たちが普通に立っていられるのも、無意識で自転車に乗れるのも、小脳がちゃんと働いてバランスが保ってくれているからです。
また細かな動きを調整する機能があり、例えば箸や鉛筆など指先を使った細かな作業や、距離感を調整したりしています。
一番分かりやすい例として、冷蔵庫からたまごを取り出すところを想像してみてください。
たまごを取り出すには、
たまごのところまで手を伸ばす
↓
たまごを割れないようにつかむ
↓
割れないぐらいに強さでつかみながら持ち上げる
↓
その力加減を保ちながら使う場所まで運ぶ
厳密にいうとこんな複雑な作業をしています。
たまごのところまで正確に手を伸ばせるのも、たまごが割れない程度でつかめるのも、実は小脳が機能しているからです。
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小脳に障害が起こるとどうなる?
小脳に障害が起こると姿勢や立位でバランスを保てなくなります。
そして有名な症状として運動失調があります。
運動失調は手足の筋力低下や感覚障害がないにもかかわらず、動作スピードのコントロールや力の加減がうまくいかず、スムーズな動きができなくなる症状で、日常生活にも大きく関わってきます。
例えば先ほどのたまごの例なら手をうまくたまごのところに伸ばせなかったり(測定異常)、たまごに近づくと手が震えたり(企図振戦)、たまごを適切な力でつかめなかったりします。(協調性の障害)
小脳の障害は小脳梗塞や小脳出血、腫瘍、外傷などで起こります。
脳出血全体では小脳出血は約10%程度と少ないです。
有名人ではMr.Childrenの桜井和寿さんが軽度の小脳梗塞を発症し、現在は回復して活躍されていますね。
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ロンベルグ試験の意義
ロンベルグ試験とは簡単にいうとふらつきを調べる検査で、理学療法の場面でもこの検査を用います。
特に小脳に梗塞や出血があった患者さんには使います。
ロンベルグ試験はふらつきやバランスを調べるために行われていますが、医師が診察で行う場合には、問題を把握するために使われるようです。
立位でふらつきが出る原因は小脳の障害だけではありません。耳の奥にある前庭に何かトラブルがあっても起こりますし、脊髄神経が障害された場合でも起こります。
それらを判別するために、ロンベルグ試験が行われます。
小脳の障害であれば閉眼時だけでなく開眼時にもふらつきがあり、脊髄性の問題であれば閉眼時にふらつきが強くなります。(前庭に問題がある場合にも強くなる)
要は視覚の働きを排除したときに問題が起こるかどうかを診ているのです。
もちろんロンベルグ試験だけで診断がつけられることはなく、MRIやCTなど他の検査もふまえて診断がつけられます。
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ロンベルグ試験の方法
それでは方法についてご説明しますが、やり方はそれほど難しくありません。
まず開眼で立ってもらいます。
次に閉眼で立ってもらい、身体のふらつき具合を開眼時と比較します。
ロンベルグ試験の判定としては、閉眼状態の身体の動揺が明らかに強くなれば陽性と判断します。
こんな感じで記録しておくと分かりやすいですね。
陰性:開眼と閉眼において保持時間の差がない。動揺の増加なし
陽性+:閉眼によって、わずかに動揺増加。転倒なし
陽性++:閉眼によって、動揺が著しく増加。転倒することなく30秒保持可
陽性+++:閉眼によって短時間すら保持困難
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まとめ
小脳の役割とロンベルグ試験についてお伝えしてきました。
運動失調がみられる場合、何が原因になっているのか調べる必要がありますが、ロンベルグ試験はそのひとつの判断材料になります。
ストレッチのように日々行うものではありませんが、ふらつきがあった場合、簡易検査として試してみるのもいいでしょう。
ただし先ほども述べましたが、最終的にはMRIやCTなどの検査もして、医師が診断を下しますので、くれぐれも自己判断は止めましょう。