鼠径部痛症候群という名前を聞いたことがありますか。
ほとんどの方は聞いたことがないと思います。
でも股関節痛をまぎらわしい痛みを発生するので、とても重要な症状です。
前回の記事で股関節唇損傷の手術後の痛みで悩んでいる方からの質問をご紹介しました。
この記事の中で私の返信を掲載していたのですが、そこに「鼠径部痛症候群」という名前がでてきていました。
鼠径部痛症候群とは?
鼠径部痛症候群は別名「グロインペイン症候群」で、英語では“groin pain syndrome”、“groin”は鼠径部を意味します。以前は「スポーツヘルニア」と呼ばれていました。
と、話を進める前に鼠径部ってどこか分かりますか?意外と鼠径部の位置をわかっている方が少ないのですが、鼠径部とは脚の付け根にある溝の内側(近位)部分のことです。もっとわかりやすく言うと、ビートたけしさんのギャグ「コマネチ!」で、手を動かしてるあたりです。
この下層には鼠径靭帯があります。
筋肉や血管、神経はこの鼠径靭帯の下を通ります。
そして腸などの内臓の一部が鼠径部から外に飛び出して膨らむ病気を鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)といいます。
鼠径部痛症候群はサッカー選手に起こることが多く、慢性的な鼠径部痛周辺の痛みが続きます。サッカー元日本代表の中田英寿氏や、横浜F・マリノスの中村俊輔選手も慢性的な鼠径部痛に悩まされていました。
鼠径部痛症候群では、鼠径部を中心に股関節内転筋の近位部、下腹部など股関節に近い部分に痛みが生じます。また股関節に可動域制限や筋力低下も起こるため、股関節疾患として扱われてしまうことがあり注意が必要です。
引用)図解入門よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book)
ですから、まずは鼠径部痛症候群は股関節痛としっかり区別して治療を進めなくてはなりません。
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治療のカギは全身の協調性にあり!
鼠径部痛症候群はサッカー選手によく起こるとお伝えしましたが、キック動作で腹部に力を入れた際に鼠径部に痛みが生じます。
鼠径部痛症候群では、体幹から下肢の可動性や安定性、協調性が何らかの原因で失われ、股関節や骨盤周囲が機能しなくなり鼠径部周辺に様々な痛みを引き起こします。
鼠径部痛症候群の治療は、外科的な手術が行われることもありますが、ほとんどの場合保存的に行われます。
まず腰背部、股関節の内転筋、ハムストリングのストレッチやマッサージで筋肉を硬さをゆるめ、柔軟性を高めていきます。その後、股関節の外転筋や伸展筋、腹筋や背筋など体幹筋の強化に努めます。
ここで大切なのは、筋肉を鍛えることに終始するのではなく、上半身と下半身の協調性を高め、バランスよく全身を使えるようにしていきます。
サッカー選手の場合、股関節だけボールを蹴るのではなく、全身を使ってボールを蹴るような動作を獲得していきましょう。
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まとめ
鼠径部痛症候群についてお伝えしました。今回はサッカー選手のお話が中心でしたが、サッカー選手以外にも起きる可能性はあります。
鼠径部痛症候群では鼠径部以外にも股関節周囲に痛みがでるため、股関節痛と混同しないように治療をすすめていくことが大切です。