変形性股関節症などで人工股関節置換術を受けるとき、術後にどんな生活が可能になるのか、ほとんどの方が不安になります。
患者さんの不安は、手術を受けるまでは痛みに焦点が当たることが多いです。
「この痛みさえなんとかなれば」と思っているのですが、いざ手術を受けると脱臼などの問題もあり、医師や理学療法士から説明されていたような明るい未来のイメージが持てない方もいらっしゃいます。
今回は病院で受ける退院指導にスポットを当てて考えてみましょう。
退院指導を役立つものをするために
私が理学療法士になった頃、病院で手術とリハビリを受けて退院される方のADLや動作に関する退院指導といえば、理学療法士や作業療法士が行っていることが多かったです。
近年は病棟スタッフも積極的に関わるようになり、医師、看護師、リハビリが協力して良い意見を出し合えるようになってきています。
でも、まだまだ全ての病院が良い退院指導を行っているかと言えば、答えはNOです。
先日ある病院の、人工股関節置換術の退院時のパンフレットを拝見しましたが、「何年前のもの?」って聞きたくなるほど古い内容でした。
これでは、とても個々の患者さんの状態に合うものとは思えませんでした。そんなパンフレットを配っても役に立たないです。
あんなパンフレットなら、この記事を見ておく方がよっぽど役に立ちます。
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特に最近は術後の退院までの期間が短くなってきているので、退院に際して看護師や理学療法士からの指導って、重要性が増してきていると思います。
だったらせっかくなので役に立つ情報を、その人が使える形で教えてもらえるのばベストですよね。
私が病院に勤めているとき、退院する患者さんのリハビリで特に気をつけていたのは、退院後にその方がどんな生活をされるかです。
ご自宅の環境はそれぞれ違うわけですし、退院される方の動作能力はもちろんのことながら、同居人がいるかどうか、どれぐらいの介護力が期待できるかなど、退院後の生活には考えることがたくさんあります。
実際、ご自宅に伺って退院時の指導をすることがあるのですが、これは退院される方にとっても、私たちリハビリのスタッフにとっても、退院後の生活をイメージするためにとても貴重な機会となります。
どんな動作が必要なのか、どんな動作は必要ないのか、どの動作の獲得の優先度が高いのか、つぶさにチェックします。
たとえば和式トイレもは使える越したことはないですが、ご自宅が洋式トイレで、あまり出かける機会がないのであれば練習する必要はないですよね。
同様に足の爪を切る動作は、同居人がお元気で介助ができるのであれば獲得の優先度は低くなります。
人工股関節置換術をされる方の年齢や性別、生活環境によって、必要なADLは変わってきます。特にご高齢になればなるほど、やらない動作も増えてきますので、本当に必要な動作の指導が求められます。
パンフレットに書いてあるような、誰にでも当てはまりそうな動作を指導されても、その人にとって「やらない動作」であれば無駄に終わってしまうので注意が必要です。
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まとめ
人工股関節置換術後の退院指導を受けるときの注意点についてお伝えしてきました。
いろいろ書いてきましたが、人工股関節の手術を行っている病院ならあれこれ不安に思わなくても、その方に合った術後動作や生活を提案してくれます。
ただ退院までの日数が少ない病院では、そこまで手がまわらない可能性もあるので、不安な動作があればご自身でリハビリのスタッフや病棟の看護師に質問して、不安の解消に努めましょう。