股関節痛の原因のひとつとなる臼蓋形成不全。その痛みは初期なら改善できます。
今回のお話は臼蓋形成不全です。
こちらのブログを読まれている方ならもうご理解いただいているとは思いますが、臼蓋形成不全の症状を簡単におさらいしてみましょう。
臼蓋形成不全の病態
股関節は骨盤の寛骨臼と大腿骨の大腿骨頭によって構成されています。大腿骨頭がはまり込む寛骨臼のくぼみの上部に沿って張り出した部分を臼蓋と呼びます。この臼蓋は屋根のように大腿骨頭を被ってくれます。
この臼蓋の被いが少ないと、大腿骨頭と接触する面積が減るため、少ない接触面積で同じ体重を支えなくてはなりません。そうなると接触部分への圧力が通常よりも強まり、軟骨や骨が傷みやすくなります。
臼蓋形成不全の原因は、先天性股関節脱臼が原因となる先天的なものと、成長過程での何らかのトラブルが原因となる後天的なものに分けられます。
臼蓋形成不全は変形性股関節症の原因になることがあります。ですから臼蓋形成不全がレントゲンで発見されると、「将来的には変形性股関節症になる可能性があります」と診察で言われるケースが多いのです。
ただし変形性股関節症の診療ガイドラインを見ると、臼蓋形成不全は変形性股関節症の危険因子になるとは書かれていますが、すべてが変形性股関節症になるわけではないようです。
臼蓋形成不全でも痛みなく過ごせる方もいますので、そのあたりは生活様式やスポーツ歴、職業の種類なども深く関わってきそうです。
臼蓋形成不全では大きく保存療法と手術療法に分けられます。保存療法では股関節の可動域を改善し、姿勢や歩行などの動作を見直して股関節への負担軽減に努めます。
手術療法ではキアリ骨盤骨切り術や寛骨臼回転骨切り術などが行われます。
ここまではよろしいでしょうか。
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痛みや症状を改善するには
先日、臼蓋形成不全の痛みに悩む方からご質問が届きましたのでここでご紹介させていただきます。
題名:出産後の股関節痛
性別:女性
年齢:20代
診断名:臼蓋形成不全
メッセージ本文:
昨年9月に出産をしてから左股関節痛が出現しました。退院して1週間ほどしてから5~10cm程度の段差を降りたところ左股関節に痛みが生じました。
それから2~3ヶ月は歩行時、床や浴槽からの立ち上がり動作で痛みがあり、加えて座っていても、寝ていても鈍痛がある状態でした。
徐々に座位や歩行時の痛みは軽減しましたが、今年4月頃から起き上がりや寝返りの際にコキコキと関節内で音がするようになりました。特に股関節屈曲位から位置を変えようとするときに音がし、挟まるようなつまるようなかんじがします。
5月上旬に近くの総合病院を受診し、レントゲンをとり臼蓋形成不全と診断を受けました。また触診も行い、徒手テストで関節唇損傷はないと診断受けました。医師からは筋トレを行うようにと言われ、リハビリには通っていません。
以前にも自転車で転倒し、左股関節痛になり、レントゲンで臼蓋形成不全と診断を受けましたが、湿布をもらい痛みはみられなくなり、動くことができていました。
現在は座位、床や浴槽からの立ち上がりでは痛みはみられなくなりました。歩行時は違和感程度ある状態です。寝返り、起き上がりでの関節の音は続いていますが、なるべくならないような動作で行うようにしています。また骨盤ベルトを寝るとき以外はつけています。
産後ということもあり、子どもの世話があり、痛みがあっても我慢してしまうことが多いです。何か痛み改善するためにアドバイスをいただければと思います。
こちらの方の場合、「以前にも自転車で転倒し、左股関節痛になり、レントゲンで臼蓋形成不全と診断を受けました」と書かれていますので、ご出産以前から左股関節の臼蓋形成不全があったということが伺えます。
実際に拝見していないので、予想のお話になりますが、おそらく出産を機に靭帯が緩んだり、アライメント(形状)が変わったりして、動作時に身体を支えられなくなっているのがひとつ。
もうひとつは、関節自体が時間が経過して、以前よりも状態が少し悪くなっていることも考えられ、このどちらか、もしくはこのどちらもが原因になっていると思われます。
筋トレで治ると医師はおっしゃっているようですが、私ならリハビリを受けると思います。
現状では歩行時には違和感がある程度と書かれていますが、進行すると痛みや変形が強くなるおそれがあります。正しい立位や歩行を身につけ、関節が過負荷にならないようにしていくのが先決かと思います。
また個人的には骨盤ベルトをずっとつけ続けるのはあまりおすすめできません。その状態に身体が慣れてしまうと、正しく立つ、歩くということができなくなるからです。
お子様が小さく、なかなかリハビリに通うのは難しいかもしれませんが、立位や歩行の指導だけでも受けて継続していくことで効果があると思います。
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まとめ
臼蓋形成不全の痛みとリハビリについてお伝えしてきました。
今回のように、妊娠や出産がきっかけとなり、臼蓋形成不全の痛みが出現したり、レントゲンを撮って臼蓋形成不全の診断を受けることも多いです。
臼蓋形成不全はケアしないと、変形性股関節症につながる可能性もあり早めのケアをおすすめします。