大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折とは?この骨折での股関節痛には要注意

このページにはプロモーションが含まれています。

近年明らかになりつつ大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折による股関節の痛み。

その痛みを放っておくと手術適応になる可能性もあり注意が必要です。

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折という名前を聞いたことがありますか?ほとんどの方はご自身が診断されたり、ご家族がこの診断を受けたときに初めて知る骨折だと思います。

私が理学療法士になった頃にはこの骨折は皆無でした。(私が症例として出会っていないだけかもしれませんが)

 

ただ最近になりこの名前をいろいろな場面で見るようになってきました。

 

目次

スポンサーリンク

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折とは?

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折は、名前の通り大腿骨頭を覆っている軟骨の下を骨折するのですが、この骨折が「脆弱性(ぜいじゃくせい)」によって起こります。

「脆弱性」とは「脆い(もろい」+「弱い」と分解すれば理解しやすいと思います。

 

ではなぜ脆弱性が起こるのか?これの大きな原因は骨粗鬆症性(こつそしょうしょう)と言われています。

骨粗鬆症性が原因で起こるということは、大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折を起こしやすい年齢は比較的高齢(50歳代以降)だということも想像できますよね。

 

症状的には股関節周囲(股関節、鼠径部、殿部など)に痛みが生じます。ただし病院でレントゲン撮影をしても何も写らないこともあり、この時点では股関節の炎症などで済まされることもあるようです。

ただし本当に大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折の場合、この時点で疑わないと、急激に圧潰(圧迫されて潰れる)が進むこともあり注意が必要です。

確定にはMRIを撮ればすぐにわかりますので、疑わしい場合はMRIを撮ってもらうようにしましょう。

 

もう1つ注意が必要なのは、大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折は特発性大腿骨頭壊死症と間違いやすいということです。

ここで先ほどの好発年齢がポイントになってきます。大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折は比較的高齢と先ほど書きましたが、特発性大腿骨頭壊死症の場合は30~50代で発生することが多いです。

 

また大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折の場合は、骨粗鬆症性や肥満がベースにあることが多いですが、特発性大腿骨頭壊死症ではステロイドや飲酒が原因になることがあります。(もちろん特発性も)

治療法としては初期であれば松葉杖を使って体重がかからないようにしたり、ハイドロキシアパタイトを埋め込んで治癒を目指すこともありますが、発見が遅れると人工股関節置換術の手術になることも多いです。

 

このあたりの診断や治療の話は医師の仕事の領域ですので、医師にしっかり診察してもらってください。

 

スポンサーリンク

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折に関するご質問

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折に関しては、おおまかにご理解いただけたでしょうか。

以前こちらのブログに、大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折に関する質問が届きましたのでご紹介させていただいます。

※プライバシー保護の観点から、文面は一部加筆・修正しています。


題名:大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折について

性別:女性

年齢:60代

診断名:その他疾患

メッセージ本文:
初めまして。こちらのホームページを偶然拝見し、見当違いな質問とは思いますが、私の母の話でご意見をいただけたらと思いメール致します。

 

母は60代で、2009年に右膝に人工関節手術をしています。

現在は手術したはずの膝に違和感があり、脱臼のようにカクカク中に入れた機械が動き、思うように体重をかけられずにいます。

 

2010年に左足首と足裏に、体重をかける度に生け花のケンザンを踏んだような針を刺す痛みが電流のように走るようになり、足をつくことが出来ず、同じ病院にて偏平足を治す手術をしています。

母親の腰骨より骨を取り、それを足首の骨に移植し、偏平足だった足底をアーチ状になるようにしました。

この手術で痛みがとれるかもしれないという医師の判断にお任せしましたが、こちらの手術は結局足首の痛みを取る結果にはならず、現在も痛みは続いています。

 

2回の手術を行いましたが良くならず、手術前は二足歩行できていたのに、いまは通常は杖、痛みがひどい場合や長距離を歩く場合は車いすを使用する生活になっています。

 

その母親が先日股関節の痛みを訴え、レントゲンでは異常がありませんでした。ただ痛みが治まらず、何度もお願いしてようやくMRIを取っていただいた結果、『右大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折』と診断されました。骨粗鬆症が原因ではないかとのことです。

そこで同じ病院で人工股関節置換術をするように言われています。

 

ただここまでの経緯で、担当医の態度などいろんなことがあり信頼関係が築けていません。この先生に母親の手術をさせたくないと思い、思い切って私が◯◯県に住んでいるので、母親を◯◯県の病院で手術をさせようと考えています。

私の住む地域内で通える病院を探したところ、△△医療センターの股関節担当の先生、✕✕病院の先生のお名前をよく拝見します。

 

しかし実際問題、人工股関節置換術の手術はいまは騒ぐほどの手術じゃないと言われているそうで、

「田舎からわざわざ母親を◯◯県まで連れ出して、この先リハビリとかどうするの?」

「リハビリの度に田舎から呼ぶの?」

「もし田舎に帰っているときに調子が悪くなったらまたそのA病院に救急患者として行くんだよ、大丈夫?」

「だったらおとなしくいまお世話になっている病院の担当医に任せたら?」

と周りに止められています。

 

先生が同じ立場に立たされたらどうされますか?信頼関係が築けていない先生に母親の手術を任せますか?

その先生に任せれば母親が◯◯県に出てくることもないし、お金の負担もいらないし、無事手術が成功してくれれば本当に問題ないのですが、いままでのことを考えると不安で。

私の考えは間違っていますか?

 

いま手術をしていない左膝も人工関節を入れるように勧められており、電気が走る痛みについては腰から来ていて、いつか腰も手術したほうがいいと言われていて、もう下半身全部の関節を手術と言われています。

病院にずっと通院していたのはなんだったのだろうと思っています。

 

いまはまず人工股関節置換術です。國津先生は◯◯県だとどの病院の誰先生がいいとか助言をいただくことはできますか?

また膝・足首と痛みだらけの状態で人工股関節置換術をして、すぐリハビリなんてできるのか心配しています。

 

いま現在杖をつかないと歩けないのに、リハビリなんてできるのだろうか・・・。この手術をきっかけに、完全に車いすの生活になってしまったらどうしようと不安で仕方ありません。

ここまでの経緯を病院に説明し、患者に寄り添いちゃんとその人なりのリハビリを考えて下さる病院はありませんでしょうか?

 

本当に長文ですみません。よろしくお願いします。

 

お母様のことですので、心配な娘さんのお気持ちが痛いほど伝わってきますね。

こちらのご質問に対する私の回答がこちらです。


はじめまして。お問い合わせいただきましてありがとうございます。

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折は最近少し耳にするようになったのですが、私は症例を担当したことがございませんので、今回お聞きした情報で、私が□□さんの立場なら、という流れでご返答致します。

 

まずおっしゃっているように、人工股関節置換術という手術は整形外科では特殊なものではありません。言い方は悪いのですが、整形外科ではの手術の中ではメジャーな手術です。

ですから正直、テレビや雑誌に出てくるような名医でなくても、普段からたくさん症例を経験されている医師であれば、成績は大きく変わらない印象です。

 

ただ、いまの医師に信頼関係がないのであれば手術はお勧めしません。

 

これは学校の先生でも同じだと思うのですが、信頼関係がなければこちらの受ける印象は違います。

もし信頼関係がないのであれば、どんな状況になっても納得いかないと思います。少しでも不満があれば、「あの先生はやっぱり」とさらに悪く考えてしまいます。

ですからその医師に拘る必要はないと思いますが、◯◯県までお連れするのもリスクがあります。

 

こちらも書かれていますが、退院後に◯◯県でお住みにならないのであれば、田舎で生活・リハビリを続けていくことになります。

違う病院で手術した患者さんに何かあっても、執刀医じゃない医師は積極的に関わりたくないのが本音のようです。(何かあったときに自分の責任になるのは嫌なので)

ですから執刀医は近くにいた方がベターです。

 

あと外科医はやはり手術を勧めることが多いです。

今回の話でいえば、痛みが腰から来ているのであれば、偏平足の手術は必要だったのかと読んでいて疑問に思いました。そこが疑問になると、腰の手術も本当にいるのかなって不安になってきます。

 

いまの状態ですと、

手術してうまく改善していない

違う症状を引き起こす

また手術

違う症状を引き起こす

・・・

の無限ループに陥っていますので、どこかで断つ必要があります。

 

手術は完治を目指すものではなく、変えられる可能性のある最後の手段、といった感じでしょうか。

 

まとめになりますが、

  • まず人工股関節置換術が絶対必要なのか、違う方法はないのか探ってみる。
  • 人工股関節置換術が必要であれば、地元の病院でするのか、お母様が住まわれている地域の他の病院でするのか考えてみる。
  • 腰の手術は本当に必要か改めて考える

 

申し訳ないのですが、◯◯県の病院事情はよくわかりません。

 

以上、簡単ではございますが、ご回答とさせていただきます。

失礼致します。

 

 

スポンサーリンク

手術に対する悩み

先ほどの回答に関して、再度ご連絡がありました。


突然の不躾なメールに丁寧な返信ありがとうございます。

あの後両親とよく話してみたのですが、実は既に両親は他の総合病院にも行ったそうです。ところが、結局、「いまの病院にお世話になられているなら、その病院に行ってください」と言われてしまったそうです。

 

実はその病院にもいい先生は沢山いらっしゃいます。私もお会いしており、とても好印象の先生です。

その先生に担当医をかえてもらえないか?とお願いしましたが(いまの担当医が合わないからとは言っていませんし、そんなこと言えません)患者には先生を指名する権利はないとのことで断られました。

つまり、他の総合病院もダメ、いまかかっている病院の他の医師に変更も出来ない状況です。

 

この現状はとても辛いです。余計な話を長々と申し訳ありません。

 

もう2つ質問させてください。

人工股関節置換術をしたとして、リハビリをすると思うのですが、いま杖をついた状態でこの手術をして、どうやってリハビリするんだろうと思っています。ちゃんと歩けるようになりますか?

せめて杖をついて歩いているいまの母と同じくらいまでに回復できますか?

本当にこの手術をきっかけに母親が寝たきりになるのが怖いです。

 

そしてもう一つ。

もしもこの人工股関節置換術の結果、脱臼するようになってしまったら(この手術の危険性として説明を受けています)もう一度手術して、その脱臼を治すことはできますか?

それともこのまま脱臼の症状を抱えたまま日々の所作に気を付けつつ、生きていくしかなくなりますか?

 

お忙しい中、申し訳ありませんが、教えを乞いたいと思います。

宜しくお願いします。

 

違う病院にかかったり、先生を変えてもらうことについては難しいことも多いですよね。

たとえば違う病院に行ったとしても、医局が同じであったり、知り合いだったりすると、「その先生はいいからそうしなさい」というような話になることがほとんどです。

ですからいまのセカンドオピニオンで行っても、意味がないんですよね。

 

あと他の先生を選べないのも、先生方の大人の事情的なところもあるのでしょうか・・・。

そんな病院なら本当はかえた方がいいのでしょうが、違う病院でも受け入れられないとなると難しいですね。

 

ご質問にお答えすると、

>人工骨頭置換術をしたとして、リハビリですが、今、杖をついた状態でこの手術をして、どうやってリハビリするんだろうと思っています。

>ちゃんと歩けるようになりますか?せめて杖をついてあるいている今と同じくらいまでに回復できますか?

人工股関節置換術は日本でも年間約2万人が受ける手術で、手術の成績としてはものすごくよいものです。

基本的は前向きに回復するための手術なので、したからといって悪くなることは、リハビリを拒否したり、感染症などの合併症が起こらない限り、可能性としては低いです。(絶対ではないですが)

 

逆にそのままで何も手を打たずに良くなる可能性はありますか?もしくは保存療法でよくなる可能性はあるでしょうか?

それが見込めるなら手術しなくてもいいですが、落ちていってるのであれば、そのままでも寝たきりになってしまいます。

 

そのあたりをどう考えるかですね。

 

あと脱臼の危険性は基本的には一生あります。もちろん手術後時間が経過すれば抜けにくくはなりますが、脱臼の可能性はゼロにはなりません。

脱臼したら、整復(戻す)には徒手ですることもありますが、たいていもう一度開いて戻すことになります。

 

脱臼を起こすと何度も何度も起こす可能性が高まるので、できれば脱臼しない方がいいです。

手術が前方侵入であれば脱臼のリスクは小さくなるので、前方侵入でする病院で手術すればいいかもしれません。

 

脱臼についてはこちらにまとめてあります。

関連記事

あわせて読みたい
【理学療法士監修】人工股関節置換術・人工骨頭置換術の脱臼姿勢まとめ 人工股関節置換術(THA)や人工骨頭置換術(BHA)後に怖い脱臼ですが、脱臼姿勢(肢位)をしっかり理解しておけば、予防することは可能です。 今回は人工股関節置換術と...

 

スポンサーリンク

まとめ

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折についてまとめてきました。

 

大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折はまだまだ治療法が完全に確立されたとはいえず、未知なる部分も多いです。

また特発性大腿骨頭壊死症と間違えられたり、人工股関節置換術になる症例も多く、疾患そのものだけでなく悩まれることも多いのではないでしょうか。

 

少しでも参考になれば幸いです。

目次