妊娠すると女性には身体の変化が一気に訪れます。
ただし妊娠中の身体変化は、非妊娠時とは少し異なるので注意が必要で早めに改善が必要です。
妊娠すると女性は腹部が大きくなるのは周知の事実ですが、これに伴い妊婦にはさまざまな身体変化が生じます。
ここで言う身体変化とは、いわゆる産科医が担当するような胎児そのものに関するものではなく、股関節痛や腰痛、恥骨痛など、それに付随する整形外科的なものです。
最近は妊婦体験ジャケットなるものが登場し、妊娠を体験できない男性でも擬似妊婦体験ができるようになりました。私も理学療法の学生時代に、ある施設で体験させていただいました。
あの状態で日常生活をしていれば、腰痛を起こすことは容易に想像できたのですが、それだけでは不十分です。
今回は股関節痛や腰痛の原因とその対策を考えていきましょう。
妊婦の50%以上が腰痛を経験
妊娠中の変化といえば一番わかりやすいのは腹部が前方に張り出すことでしょう。これを考えるだけで動きにくくなりそうなことはわかるのですが、なぜ股関節痛や腰痛が起こるのでしょうか。
妊娠中の女性は胎児の成長に伴い、ホルモン分泌に伴う筋肉や靭帯の緩みが起こっています。これは非妊娠時には経験したい、妊娠時特有の身体変化です。これにより姿勢が変化して、身体各部への過度な負担が起こります。単に腹部が前方に張り出すというのではないのです。
さきほど擬似妊婦体験では不十分と書いたのはこれが理由で、決して腹部が前方に出っ張ることにより、股関節痛や腰痛が起こるわけではないということです。
まずはここまで理解出来ましたでしょうか。
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妊娠時の立位姿勢の変化
妊娠中の女性は、妊娠初期から中期に入る16週目頃から下腹部の膨らみを自覚するようになります。
下腹部の膨らみの分だけ重心が前方に偏位しますが、人間は姿勢が崩れて前にいくのを自然と嫌がりますので、骨盤を後傾させ静止立位を維持します。
妊娠中期ぐらいまではこれで対応できますが、妊娠が進むとさらに前方に偏った姿勢になるので、上部体幹を伸展させて前方への偏位に対応します。
妊娠後期ではこの姿勢を保てなくなり、骨盤が前傾し、さらなる上部体幹の伸展により腰椎の前弯を強めます。
このように腰椎の前弯が強すぎると、腰部の筋肉を痛めたり、神経性の腰痛になったりします。現に妊婦の50%以上が腰痛を経験しているというアンケート結果もあります。
それに加え、出産や育児への不安など心因的な要素も腰痛を増強させる因子として関与しており、妊娠中の腰痛を予防することはQOL向上の大きな課題となります。
心因的な要素が腰痛の起因や増悪に加わってくる仕組みは、一般的な腰痛と同じですね。
一方、股関節痛はなぜ起こるのでしょうか。
これにはいくつか原因があるのですが、女性は出産という役割があるため骨盤が男性に比べて平べったい形状になっています。この骨盤の形状の違いにより、女性の方が股関節痛が多くなります。
どういうことかと言うと、こちらのイラストのように、重心線から股関節の距離が女性の方が遠くなるためでしたね。
このあたりの話はこちらで詳しく述べていますので、わからない方はこちらをご覧ください。
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さらにさきほどもお伝えしたように、妊娠中には筋肉や靭帯がゆるみます。
もともと骨盤や股関節は靭帯という命綱に守られているのですが、この命綱が緩むわけです。そうなると筋肉の負担が増えるので、股関節周囲に痛みがでてしまいます。
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妊婦のためのストレッチ
腰痛への対策は、まず上記のようなことが起こっていることを理解するべきです。
その上で、日常生活や姿勢に気をつける必要があるのですが、中に家事を行う際には腰部の負担を増加させないように安楽な方法で行うようにします。特に前かがみになるような姿勢には注意してください。
合わせてストレッチをしていくことで効果が期待できます。そこで簡単なストレッチをご紹介します。
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出産後にも忘れずケア
実は腰痛は出産後も続くことがあります。
これは開いた骨盤が戻らなくなっていることに起因して、姿勢や歩行が元に戻らないことが原因です。さらに腰痛を抱えながら家事や育児に追われるため、なかなか腰痛が治りません。もちろんそこに心因的な要因も加わります。
ですから、出産前から腰痛を引きずらないように、出産前からしっかりケアしましょう。
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まとめ
妊娠中の身体変化についてお伝えしてきました。
繰り返しになりますが、妊娠中に女性に起こる変化は単に腹部が前方に張り出すだけではありません。そこにはホルモンバランスの変化や、筋肉・靭帯のゆるみ、心因的な要因など、さまざまな要因が複雑に絡まりあっています。
妊婦特有の姿勢や身体変化を理解し、出産前後の生活を快適に過ごしましょう。