股関節痛と向き合うときには、自分の本当の症状はどうなのか、悩むことも多いと思います。
今日は股関節の痛みに悩む女性からいただいたご質問をご紹介させていただきます。
かなり長文ですが、股関節に痛みを抱える方の悩みがわかるので、ぜひご覧ください。
いただいたご質問はこちらです。(※掲載許可はいただいております)
年齢:30代
性別:女
診断名:不明
病歴:現在パニック障害、逆流性食道炎、じんましんを治療中(服薬しています)
手術:なし
リハビリ歴:なし
どんな痛みがあるのか:電気が走るような鋭い痛みや刺すような痛み
どこに痛みがあるのか:右股関節あたりが主。歩いていると膝の上あたりやももの横あたりも痛くなる
どんな時に痛みがあるのか:開脚(股関節を開く?伸ばそうとする動作)、長時間歩く、階段を降りる、下り坂を歩く、車から降りる(体をまっすぐにしてから降りるようにしてからはなくなりました)
半年ほど前から右股関節の痛みが出始めました。最初は、買い物に出かけた時などたくさん歩くと右お尻のくぼみあたりをとんとんとたたきたくなるような痛だるいような症状でした。
そのうちたくさん歩くと足を着くのが痛くなるほどの刺すような痛みが出始めました。でも一休みしたり、一晩寝てしまえば嘘のように痛みが消えるという状態でした。
それが2か月ほど前から仕事中にも痛みが走るようになり、また車の乗降や湯船をまたぐ時などに鋭い痛みが走るようになり、12月半ばに家の近くの整形外科を受診しました。
股関節とももから膝の全面が痛むと伝えるとDrは「腰が痛いんじゃない?」と言われたので「腰は痛くありません」と答えたのですが「大体ももが痛いっていう人は腰から来てるんだよね」と言われました。
その整形外科では股関節と腰の写真を3枚(仰向け・横向き・膝を曲げた状態での横からの撮影)を撮りましたが案の定、背骨の一番下の軟骨が少し他よりつぶれてるけど、これで痛みが出るような状態ではないとのこと。
わかったのは生まれつき股関節が浅い人がいるけど、そうではない事だけわかりました。一応、坐骨神経痛の漢方と血液の流れをよくする薬を出されましたが、1週間飲んでも効かなかったのでやめてしまいました。
その後、仕事が多忙だったこともあり仕事中から足を着くたびに激痛が走るほどになったため、以前違う痛みでかかったことのあるDrが開業されているのでそちらの整形外科に行ってみました。(スポーツ整形のDrです)
こちらでも立位で股関節のレントゲンを撮りましたが、生まれつきのものではないとのこと。
股関節を開いた時とうつぶせでかかとをおしりに近づけた時に、股関節の前側に痛みがあったため、股関節唇ではないかという事でMRI検査も受けましたが、画像上そのような状況はみられないとのことでした。
皮膚に近い神経に触れるとかなりの痛みがあったため、筋肉や神経の痛みではないかとのことでその痛みのある神経に直接ブスコパン注射をしてもらったのですが、こちらもいまいち効果がありませんでした。そのため痛み止めの内服薬で様子をみてくださいという状態でした。
それから2週間しか経っていないのですが、おふろで足首をまわすストレッチをしていたところ右足が固い気がしたので、おふろから出て床の上で足の裏同士を合わせて体を前に倒すストレッチをしようとしたら、痛みで右足が床の方へ倒せない状態でした。(左は問題なく床と水平になります)
しかも今まで痛みが出始めると足を引きずってしまっていたのですが、常に足を引きずるようになってしまっていました。自分でもびっくりして、普通に歩いてみようとするのですが、まるで歩き方を忘れてしまったかのようにうまく歩けません。
バランスがとれず、時々がくんとなるようなこともあり、再度2週間前の整形外科へ行きましたが、見放されたのか(?)今回は違うDrに通され、また最初と同じようにベットの上で足を曲げたり押されたりし、今回は婦人科系の病気かもという事で血液検査をされました。(まだ結果は出ていません)でもやはり関節自体に問題はないと思うという回答でした。
私自身としては自分の症状からして変形性股関節症なのではと思っているのですが、やはりレントゲンやMRIで異常がみられなければ変形性股関節症ではないのでしょうか?
とりあえず血液検査の結果を聞きにいかなければならないので、もう一度そこの整形外科には行くのですが、それでも異常がないとなった場合、どこに治療を求めていいのかわかりません。
2か月前は多少痛みがあっても小走り位はできたのに、今では普通に歩くこともままなりません。これだけ急激に股関節が悪くなることはあるのでしょうか?
國津先生のお考えをお伺いできたら幸いに思います。突然の長文で大変申し訳ございませんが、藁にもすがる思いで質問させて頂きました。どうぞよろしくお願い致します。
自分の症状と向き合う
こちらの質問を拝見して最初に感じたことは、痛みと本当に熱心に向き合っているということです。
「痛みがあったらみんな熱心に向き合うよ」
と思うかもしれませんが、自分の症状を理解せずに、たった2行ぐらいで、
「昨日から右の股関節が痛いのですが、どうすればいいですか?」
というような質問をメールで受けることもあります。
ご質問のフォームにも書いてありますが、どのような痛みなのか詳しくお伝えいただかなければ、ご質問にお答えすることなどできません。
そういう意味で、ここまで詳しく書かれている方は自分の症状と向き合っていると言えます。
本当はこの時点で行かれている医療機関で、何か答えが見つかれば一番良かったのですが。
ご質問の吟味していくと、2つの病院で2人の医師がレントゲンを撮って診察しているので、レントゲン上では変形性股関節症ではないという印象です。
たしかに初期に起こっているお尻の痛だるい感じは変形性股関節症の初期の症状に似ているので、医師が変形性股関節症や腰の症状を疑うと思います。
ただ痛みについて「電気が走るような鋭い痛みや刺すような痛み」と書かれていますが、変形性股関節症の症状と少し違うかもしれませんね。
あと変形性股関節症は高齢で、筋力低下が進んでいる場合以外はお若い方で歩けなくなるというのは、ほとんどないと思います。
このあたりの症状から考えていくと、神経系の症状も疑っていく必要がありそうです。
検査をするなら腰や仙骨周囲。レントゲンではうつらない神経症状を疑って、ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、仙腸関節障害などをMRIで調べてみれば何か分かるかもしれませんね。
特に
>おふろから出て床の上で足の裏同士を合わせて体を前に倒す
>ストレッチをしようとしたら、痛みで右足が床の方へ倒せない状態でした。
このようにお聞きすると、仙腸関節の障害も考えられるところです。
ここまで書いていても、もしかしたら全ての検査を行なっても、期待するような結果がでない可能性があります。
本来ならストレッチや筋力トレーニングなどの運動療法をお勧めしたいころですが、答え(診断結果)が見つからない中、運動療法をするのは難しいことです。
スポンサーリンクMRIでも神経はうつらない?
ご回答申し上げたところ、以下のようなご返信がありました。
やはり関節ではなく神経の方の可能性が高いという事なんですね。病院でははっきりした答えをもらえず、神経かもしれない位の回答だったので、ひとつひとつこういう症状だから変形性ではないと回答して下さったので、非常にわかりやすかったですし、納得ができました。本当にありがとうございます。
でも國津先生のブログは股関節痛の方のためのものなのに、結果的に股関節ではない所の痛みの相談になってしまいましたね。申し訳ございません。
先生がブログでおっしゃっているように、股関節の正確な場所がきちんとわかってないのに、股関節付近の痛みを股関節痛と思い込んでしまっていたのだと思います。
でもやはり素人ですと股関節のストレッチをしようとして、股関節が開かなかったとなるとどうしても股関節に異常があるように思ってしまいます。
仙腸関節ですか。恥ずかしながら初めて聞きました。病院でもまったく言われたことがないので、どちらもあまり重視していないDrなのかもしれないですね。
最初の整形外科で腰のレントゲンを撮った際にはヘルニアはみられないとの事だったのですが、先生が挙げて下さった症状はやはりMRIでないとはっきりとした診断はできないものでしょうか。
あと今行っている方の整形外科では、神経はMRIでも映りにくいから診断が難しいんだよねと言われているので、どこか大きな病院に紹介状を書いてもらった方がいいでしょうか。科は神経科でいいのでしょうか。それともやはり整形外科でいいのでしょうか。
結局、質問責めになってしまい申し訳ありません。股関節とは関係なくなってしまいましたし、お忙しいと思いますのでもしまだご回答いただけるようでしたら、お時間のある時にお願いできると大変ありがたく思います。よろしくお願い致します。
ヘルニアとMRI
基本的にはヘルニアかどうかは、レントゲンでは確定診断できません。言うなればヘルニアの疑いある骨がレントゲン上写るだけです。
ヘルニアかどうか、確定診断を下すには腰のMRIが必要です。ヘルニア自体はMRIうつります。神経の大元である脊髄のレベルで圧迫しているということが分かります。
ただし脊髄からわかれた枝状になった部分の神経に何か問題があったときには、MRIでも特定しにくいことも多々あります。
私が患者さんに説明しているたとえ話でいうと、 Aさんが名古屋から東京に車でむかったとしましょう。
その際には自宅→地道→東名高速→地道→目的地という感じで向かうと思うのですが、神経でいうと東名高速が脊髄にあたり、太い道路です。東名高速を降りた後の地道が脊髄から枝状に分かれた部分の神経です。
目的地で待っている人が待てど暮らせど、Aさんが目的地に到着しなかったら(携帯をもっていないとしたら)交通情報を調べたくなります。
東名高速で大きな事故でもあればすぐにテレビやネットのニュースになって知ることができますが、地道であった小さい事故などの情報は知ることができません。
MRIをとっても東名高速(脊髄)の情報はわかりますが、 地道(下道)の情報はわからないこともあるのです。
仙腸関節
引用)図解入門よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book)
仙腸関節はいま執筆している著書にも書いているのですが、骨盤にあるマイナーな関節です。
仙腸関節に障害があるとどうなるのか、これについての議論はいろいろあるのですが、一部の理学療法士や治療家の中では「骨盤のゆがみ」と称して、体中の問題の原因は全てここから来てる、なんて言ってる人もいます。
それは大げさかもしれませんが、脚の問題では仙腸関節から由来するものがあることも事実です。
ただし仙腸関節にしろ、坐骨神経にしろ、梨状筋症候群にしろ、枝分かれした細い神経に問題があったときには、MRIでも発見することができないかもしれません。
また「坐骨神経痛の漢方薬をいただいた」と書かれていましたが、漢方薬は長い期間飲んで効いてくれば良いという感じです。
ですからで神経系に障害に使われる漢方薬やビタミンB12の薬は劇的に効くことは望めないかもしれません。
いま行かれている医師のところには理学療法士がいないのか、大変失礼なのですが、ご出産はされていないのか、こちらのメールを拝見して気になったので、私の方から質問をしてみました。
スポンサーリンク股関節の痛み?それとも腰からの痛み?
再度の質問にも早急に答えて下さり、本当に感謝です。ありがとうございます。
やはりレントゲンではヘルニアはわからないんですね。一番下の間隔が他の間隔より少し狭いという程度で坐骨神経と診断されてたってことですよね… ちょっとぞっとしてきました。
今行っている整形外科ですが、個人病院ですがおそらく理学療法士の方もいらっしゃると思います。
牽引の補助をやっている方は違うんでしょうか。たまに「リハビリ2階でやりますよ」なんて言ってる声が聞こえるので、おそらくいらっしゃると思います。
でも私ははっきりした診断がついていない状態だからか、特にリハビリもやってないですし、右股関節の開きが悪いと伝えたのに「動かさないと尚更動かなくなるだけだから、痛みが多少あっても動かした方がいいですよ」と言われただけでどんなストレッチや運動をしたらいいのか具体的なことはまったく教えられていない状態です。
とりあえず今はお風呂の中で足の筋肉をほぐすようにマッサージしたり、お風呂から出た後に、足の裏を合わせて股関節を伸ばすストレッチだけはやっています。
でも無理に押したりするのも怖いので、ただ足の裏を合わせるだけ位にしてますが…。
それから出産はしていません。仙腸関節に関わることなのでしょうか。でも先生とこのようなやりとりをさせて頂いたからなのかわかりませんが(笑)急に今朝から腰に痛みがあります。よく言葉に影響されてなんて事がありますけど、なぜかほんとに痛みがあります。
もしかしたら股関節をかばっているからかもしれないですし、歩き方がおかしいからかもしれないですし、昨日長い時間座りっぱなしだったからかもしれないですが、起きた瞬間から痛みがありました。
股関節付近で起こるような電気が走るような痛みではなくて、どちらかというと鈍痛です。素人の私の感覚なのであてにならないとは思いますが、腰を前に曲げると痛みが出て、骨盤を通って股関節付近まで痛みが走るような感覚です。
今日も仕事中に何度か股関節付近にはピリッとくるような痛みは走っています。歩き方もやっぱりうまく歩けません。仕事内容は基本、立ち仕事で座れるのは休憩時間位。
忙しい日は常に歩き回っている状態です。なので忙しい日ほどどうしても痛みは強くなります。どんどん仕事を1日1日こなすのがしんどくなってしまっているので、休職なども考えている位なのですが、このご時世なのでなかなか怖くて言い出せません。
もし先生のお考えになる仙腸関節などの疾患だった場合、完治するものなのでしょうか。なんとなく神経関係の疾患となると一生付き合わないといけないような印象があるのですが…。
そう考えると整体やカイロなどで骨盤矯正して頂いた方が、楽になるのではないかという考えすら浮かんでしまうのですが。
何度も質問ばかりで申し訳ありませんが、お時間のある時で構いませんので、お考えをお伺いできたらありがたいです。
それから足の薬指に走ってる神経って股関節や仙腸関節と関係ありますか?歩くと足の裏側のちょうど薬指の所に痛みが走ることがあるので、もしかして関係あるかと思いまして。
どうぞよろ しくお願い致します。
ヘルニアの例えがとてもわかりやすかったです。國津先生に診察して頂けたら、納得できる診察が受けられると思うのですが。
いつもありがとうございます。
こちらのご質問に対しての回答です。
牽引の助手をしている人はおそらく理学療法士ではないでしょうね。ストレッチやマッサージをしている人がいても、それが理学療法士かどうかはわからないです。
個人の整形外科だと、トレーナーや柔道整復師の人がストレッチやマッサージをしている場合もあるので、聞いてみるのが一番早いと思います。
診断が確定していない状態でリハビリの指示を出すことは医師はできないと思います。診断がついていないわけですから、それがリハビリで治るかどうかもわからないわけです。
本当は運動療法を行なっていく中で、現状を変えていくヒントが見つかる可能性もあるので、何らかの体操や動作指導を行えたらいいのですが・・。
出産と仙腸関節は関係があります。
出産時には靭帯がゆるみます。仙腸関節は強固な靭帯で固められているのですが、出産時にはゆるんでしまい、出産後も戻らず、仙腸関節がズレてしまうことがあります。
ただし仙腸関節や骨盤周囲のトラブルが、どこまで痛みの主原因になるのか、正直はっきりしないところです。
街中の整体院では「骨盤矯正」を売りにしているところも多いのですが、宣伝文句に近いと私は考えています。
骨盤に問題があれば身体に不調が起こると、広告やテレビを観て私たちの意識の中に刷り込まれていて、それを利用した商売みたいなものです。
腰が痛み出したと書かれていますが、腰部の障害は股関節の障害とリンクします。
腰痛から股関節、股関節から腰痛と、距離が近いこともあり、巻き込まれてしまうことも多いです。
あと足先のしびれは、坐骨神経痛の延長というか、坐骨神経の末端に出ている痛みかもしれません。神経系の障害だと考えると、こちらも十分関係があると思います。
こうしてお聞きしてじっくり原因を考えていくと、股関節の問題というよりも、腰に何らかのトラブルがある可能性を否定できません。腰を中心にもう一度検査をしてみるのもいいかもしれませんね。
スポンサーリンクまとめ
「股関節が痛い」と整形外科を受診される方の中にも、「股関節ではなく腰が悪かった」ということは珍しくありません。
起こっている症状の1つ1つを丁寧に吟味していくことで、本当の原因につながるヒントが見つかるはずです。
今回は右股関節ののお話でしたが、これは右に限らず左の股関節で起きる可能性もありますからね。
1つの部位の痛みに固執することなく、どこで、どんな問題が生じているのか、じっくりゆっくり考えてみましょう。
ご自身で筋肉や関節のことをもっと知りたい方にはこちらがオススメです。
最後にこちらの方から届いたお礼のメールをご紹介して今日のブログを締めたいとおもいます。最後までご覧いただきまして、ありがとうございます。
國津先生、毎日早急に答えて下さり本当に感謝です。ありがとうございます。
毎日のように質問攻めにしてしまっていて先生には本当に申し訳ないと思っています。ブログ掲載でどなたかのお役に立てるといいのですが…。
やはり先生のお考えも腰ということなんですね。でも國津先生にはきちんと理屈を説明して頂いているので、ほんとに納得です。
今の整形外科の先生にやっぱり腰が原因じゃないかと言われても、心の中ではうーんと疑ってしまっていたと思います。
今朝起きた感じ、腰は少し楽になっているのですが、まだ鈍痛は感じます。先生のおっしゃる通り、腰を調べなおして頂いた方がよさそうですね。次回の受診の結果がはっきりしてからですね。
ブログでもまだ告知されていないので、まだなのだと思いますが、他の方々と同じで私も、もし状況が許せばぜひ國津先生に施術して頂きたい一人です。その告知を心待ちにしております。
この度は長々と私の質問に丁寧に答えて下さり、本当にありがとうございました。またわからないことがあったり、もしかしたら次回受診後にすぐにまた質問させて頂くかもしれませんが、その時はどうぞよろしくお願い致します。