股関節のストレッチをしても、なかなか柔らかくならない。そんな経験はないでしょうか。
前回のブログで関節の硬さは筋肉のストレッチだけでは柔らかくならない理由をお伝えしました。
何となくですが、筋肉のストレッチだけをしていても、関節が柔らかくならない理由がわかったのではないでしょうか。
ただし、いまでも股関節に痛みや疾患を抱え病院を受診し、リハビリを受けると筋肉のストレッチを指導されることが多いです。
でも筋肉のストレッチ、続けていてもなかなか柔らかくなったと実感することができず、柔らかくならないとモチベーションが続かず辞めてしまう方もいいのではないでしょうか。
柔らかくなり痛みが改善すると信じて取り組むストレッチ。なぜ股関節は柔らかくなり、関節可動域を獲得することができないのでしょうか。
その原因と理由に迫ってみます。
効果的なストレッチができているのか?それとも?
股関節の関節可動域が悪いときに、私たち理学療法士はストレッチを指導するのですが、このストレッチが患者さんにとってとても難しいと感じる場合があります。
これらの問題を考えるとき、治療者・指導者の問題とストレッチを続ける患者さん側の問題に分けてみるとわかりますいと思います。
治療者・指導者の問題
1.疾患への理解不足
そもそも関節疾患への理解が乏しく、なぜ関節が硬いのか、なぜ痛みが起こっているのか理解できていないケース。
全てとは言いませんが、スポーツジムのインストラクターに多いと思います。
彼らは筋力を鍛えたり、ストレッチをしたり、身体を動かす知識、技術、方法には長けていますが、疾患がベースにあって痛みや動作を改善させるためのトレーニングではなく、ノーマルな状態をより高めるためにトレーニングすることがほとんどです。
ですから病院や医院でのリハビリを打ち切られた方がスポーツジムに通ってもよくならないケースが多いのです。
2.指導力不足
若い理学療法士に多いと思いますが、効果的なストレッチを指導できていないことがあります。
これは先ほどの疾患への知識不足からくるものもあると思いますし、経験がなくとにかく伝えるだけで精一杯というケースもあると思います。
患者さん側の問題
1.再現性がない
これは患者さんの問題というよりも、ほとんど治療者・指導者側の問題だと思いますが、分類上こちらに入れました。
リハビリ室で教えてもらった方法を適切に再現できていないことが多いです。
自主トレを指導した患者さんを次回担当したときに、
「先生、あれどうするんだったかな?忘れてしまった」
と言われることがあります。
例えば料理教室に参加して、講師が簡単そうに作っているのを見ると、家で帰ってからできそうな気になりますが、実際に帰って一人でやってみると「あれ?」って思うことがたくさんあります。
「包丁でどのように切れ込みを入れてたっけ?」
「どの順番で炒めてたっけ?」
「塩適量ってどのぐらいだったかな?」
などなど、思い出せないこともでてくるでしょう。
これと同じようにリハビリ室で指導されたストレッチも、実際家で一人でやろうとすると、なかなかうまく行えないことが多いです。
これについては一度聞いただけでうまくできる人は少ないと思いますので、何度も担当者に聴いて自分のものにしていくのがいいでしょう。
2.継続性の問題
ストレッチもそうですが、筋トレや姿勢、歩行など、指導された自主トレをやっていない方も多いです。
もちろん皆さん忙しいと思いますが、リハビリの時間だけ理学療法士が治療しても、その他の時間何もしなければ良くなりません。
例えば1週間に1回40分のリハビリがあるとして、この時間はがんばったとします。でもそれ以外の時間何もしなければ、効果がないと考えた方がいいでしょう。
いまの医療の制度では外来で継続的にリハビリをしていけるのは、週に1、2回で20分か、40分という場合が多いのです。
40分としても1週間168時間のうちの1時間弱。それ以外の167時間をどう過ごすかで、結果は変わってくるでしょう。
脳卒中になった長嶋茂雄さんは
「リハビリは1日休むと身体を戻すのに4日かかる」
とおっしゃっていました。
継続的にリハビリをしていくことは本当に大切です。
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関節が硬い原因は筋肉だけではない
これまでストレッチについてお伝えしてきましたが、そもそも股関節が硬い(それ以外の関節でも同じですが)ことだけの問題ではありません。
例えば関節可動域の制限因子としては
- 骨の変形など骨が原因となるもの
- 筋肉の短縮など筋肉が原因となるもの
- 脳卒中など中枢性障害の不随意的な筋収縮によるもの
- 靭帯、関節包などの関節周囲の軟部が問題となるもの
- 痛みが原因となるもの
などがあります。
関節可動域の改善にはこれらの原因を考慮して、適切な治療や運動が必要なのです。
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トンネルの掘削とリハビリ
リハビリでは硬くなった関節の可動域を改善させるために、関節可動域運動を行います。
関節可動域運動では硬くなった関節の可動域を改善させていくわけですが、ただ強引に硬いところが無理やり動かしていけばいい、というものではありません。
硬くなった関節の可動域を改善させることを、私は患者さんに説明するときにトンネルを掘り進めていくことに例えています。
トンネルを掘り進める最初の部分は、トンネル掘削の専門家である理学療法士の仕事です。
どこが硬いのか、なぜ硬いのか明らかにしながら掘り進めていきます。これはヒトの身体の関節でも同じで、筋肉が硬いのか、関節が硬いのか、それ以外なのか、それによって治療法は変わってきます。
ある程度掘り進めれば、掘り進めたところまでは自由に行き来できるようになりますが、そのままにしておくと土砂が崩れて埋まっていくかもしれません。
リハビリに当てはめると、獲得した関節可動域は自分で動かせる範囲となります。この範囲を自分で動かさないと、土砂が埋まるように関節がまた硬くなります。
ですから、患者さん自身にご自宅でできる体操(この場合主にストレッチ)を行なってもらうことがあります。
これはトンネルを掘る作業で言えば、自宅でトンネル掘削の専門家作ではない方に掘った範囲を維持してもらったり、さらに掘り勧めることを意味します。
リハビリでは掘削のプロである理学療法士が知識や特別な技術、時には物理療法などの道具も使いながら掘り進めていきます。
専門家でない患者さんは掘削(関節可動域の改善)についてあまり知識はないので、指導された方法を頼りに掘り進めていきます。
そうしてお互いが協力してトンネルを掘りすすめ、関節の可動域を獲得していきます。
引用)図解入門よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book)
関節可動域はどこまで改善するのか
ここまでトンネルの掘削に例えて関節可動域をさせる方法を考えてきましたが、トンネルの掘削は万能ではありません。
どこまで関節可動域が良くなるかは、疾患の経過や手術方法、年齢などにより大きく変わってきます。
10歳の子どもと80歳の高齢者が全く同じ骨折をして、同じ期間ギプスで固定して拘縮ができたとしても、10歳の子ども方が早く治りそうだと何となく想像できると思います。
経過が長い方、年齢が高い方の方が改善する速度は遅いですし、改善しない部分も多いでしょう。
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まとめ
股関節が硬さとその理由、改善方法についてお話ししてきました。
関節が硬い原因は筋肉だけではないので、筋肉のストレッチだけしていれば良くなるというのは間違いです。
ただ病院もそうですが、トレーニングジムや接骨院では筋肉のストレッチばかり指導していることが多いです。
なぜ硬いのか、その本当の理由を評価してアドバイスをもらい、改善方法を一緒に考えていくことが真の近道ではないでしょうか。