「股関節が硬い」、そんな悩みを抱えている方お多いとは思います。
でも筋肉のストレッチだけで改善しようとするのは難しいのです。
その理由とは?
股関節が硬いと、必ずやろうとするのはストレッチではないでしょうか。
実際、医師の診察でも「ストレッチをしましょう」と声かけされることが多いです。
でもストレッチはそれほど万能な体操ではありません。
ストレッチだけすれば関節が柔らかくなる、なんてことはないのです。
この事実はほとんどの方が知りません。
先日、股関節の硬さについて、非常に参考になるご質問をいただきましたので、本日はご紹介したいと思います。
股関節の硬さ=筋肉の硬さ?
いただいたご質問はこちらです。
いくつかブログを読ませて頂いて先生の所に通いたい、と思いましたが私は東京在住、先生は関西とのことで残念です。
私は30代の女性で、日頃は月~金の事務職で座りっぱなしです。
私の趣味はクラシックバレエで、6歳~13歳までちょっとかじっておりまして、また30歳を過ぎてから再開しました。
しかしながら私の股関節は大変固くて悩んでおりました。周りにも大人からバレエを始めた方はたくさんいますが、皆さん私より柔らかいです。
私の場合は左右開脚でせいぜい120度、前後スプリッツは床に手を付いています、たぶん140度程度でしょうか。
そしてストレッチで痛いのは筋肉ではなく股関節や膝の関節です、何かに引っかかってしまう感じ。ウォーキングでも腰から足が動いてしまい、クネクネと腰を振っている状態です。
大人だし無理はしないつもりでやっていますが、ここ3年ほど膝を捻って後十字を伸ばしたり、トゥシューズを履いて肉離れをやったりと、年齢もあり怪我と不調が続いています。
幸い私の先生が医療従事者として働きつつバレエを教えてくれることもあり、 医師に聞いて骨や筋肉の勉強をして個々に合わせた指導や怪我のケアをしてくれています。
股関節以外ではハムストリングスと殿部の筋肉がかたく、ストレッチは欠かせません。 しかしながら股関節でロックがかかり、ストレッチが効かないのでバレエ教師の薦めで整形でレントゲンを撮ってもらいました。
診断名は言われませんでしたが、臼蓋が小さくて隙間がないから大腿骨が動きにくい、軟骨が痛んで白くなってる、それだけ柔軟性あれば普通は充分、バレエも無理はしないように、言われました。
産まれてすぐに股関節の開きが悪い、と短期入院したそうですが特に原因も見つからず、その後の検診でも異常ないと言われたそうです。
バレエが股関節に難がある人に向かないのはわかりますが、反対にバレエで筋力が多少あるおかげで今も多少の痛みがあっても日常生活に支障がないとも考えています。 できるならばもう少し可動域を広げたいところですが、老後を考えると無理はできません。
反対に股関節を助けるためにも、バレエを通じてある程度筋肉は鍛えていきたいと考えています。
バレエのレッスン以外にも同じ先生にピラティスも教えてもらっています。
他にもバレエを続けるにあたって、ストレッチや筋トレで良いアドバイスがあればどうかお願いいたします。
※プライバシー保護のため一部修正を加えています。
こちらのご質問に対する私の回答です。
実際のところは触ってみないとわかりませんが、メールを拝見して感じたことをお伝えします。
著書にも書きましたが、関節が硬い原因は筋肉だけではありません。
例えば蝶番のついた扉でいうと、蝶番の部分が関節で、硬いからといって力いっぱい開閉しようとすると、蝶番(関節)部分にストレスがかかります。
書籍やインターネットで言われている関節可動域を改善させる方法はほとんどが筋肉のストレッチで、少数ですが関節だけにアプローチする手技を紹介したものもあります。
要するに足して2で割ったものがないのが現状です。
どこが硬いのか問題を明らかにする必要があるのですが、○○様の場合、関節に問題がありそうですね。
>診断名は言われませんでしたが、臼蓋が小さくて隙間がないから
>大腿骨が動きにくい、軟骨が痛んで白くなってる、
>産まれてすぐに股関節の開きが悪い、と短期入院したそうですが特に原因も見つからず、
>その後の検診でも異常ないと言われたそうです。
このあたりを読むと、当時は明らかにできなかったけども、臼蓋に何らかの問題があった可能性もありますよね。
おっしゃるように筋肉を維持していくことは大切です。またバレエダンサーの中では硬い方でも、一般人に比べると柔らかいと思います。(私は開脚90°もできないです・・・)
可動域が増えるということは、広い可動域に対して筋肉は責任をもたないといけません。
極端な例でいえば、股関節が屈曲も伸展も0°、全く動かなければ筋肉は動かす必要がないので、0°の位置で保持する責任しかありません。
でも屈曲120°、伸展30°、合計150°の領域で運動と保持の両方の責任が生じます。柔らかくて筋肉がないと、これはこれで問題です。
ですから可動域があるなら(今後もいまの可動域を維持するなら)筋肉も維持することが必要です。
>できるならばもう少し可動域を広げたいところですが、
>老後を考えると無理はできません。
このあたりは一概には言えませんが、可動域を拡げることが股関節を傷めることにならない場合もあると思います。実は動くべきところが動いていなくて、その動きが作れれば筋力も発揮しやすくなる可能性もあります。
申し訳ないのですが、具体的にこういう運動をした方がいいということは、このメールで申し上げることはできません。
スポンサーリンク
身体の声に耳を傾ける
この方がすごいと思うのは、ストレッチをしている中で、どこが硬いのか、どう硬いのか、それをご自身で理解されているところです。
簡単そうに感じるのですが、これが皆さんなかなかできないのです。
身体が硬いとどうしても無理な筋肉のストレッチをしたり、本やインターネットに書かれている方法を信じたりしがちです。
ときには豪快に、無茶な人なら拷問のように・・。実際に某学校の空手部や相撲部ではいまだに開脚した姿勢をとり、その上から先輩が載っかかるような拷問に近いストレッチが行われるようです。
「身体の声に耳を傾けて最善の策を考える」
痛みや疾患と向き合う上で一番大事なことではないでしょうか。
回答申し上げた内容に、後日次のようなご返信をいただきました。
早々のお返事とアドバイスありがとうございました。
國津先生のおっしゃるとおり、巷では股関節が固いのは筋肉が硬いからと言われ、今までもバレエ教室でも色々と殿部や腸腰筋のストレッチを教えてもらったり、先生によってはストレッチの姿勢を私にとってはありえない場所に矯正されました。
これで痛いのが筋肉ならば私も我慢できるのですが、どうも痛みの場所が違う、伸びている感覚がないと思っていました。
ただ痛いだけ、付け根に何か挟まる感じがすると言ってもしっかり上半身の引き上げができて、股関節をフリーにできれば挟まらない、と反対に身体の使い方の方を指摘されてきました。
今の先生が身体の構造に詳しい方なので、初めて骨格の問題かもしれないと認めてもらえましたが、どちらかといえばバレエに向いている身体の先生方には 「股関節が開きにくい形」は滅多にないケース、大抵は訓練で矯正できるもの、という認識です。
今の先生は可動域を広げるよりも、今ある可動域をキープしたまま踊るための使い方を指導してくれます。下半身に負担をかけないで股関節をフリーにするには上半身を強化する。
広背筋をウエストに向かってⅤの字に使うことで肩や上半身の余計な力みをなくし、下半身への負担を減らす、その分開いた股関節を腰骨から後へキュッと引っ張るそう です。
股関節から開くのではなく、ヘソの奥からパカっと開くイメージと言われます。
この先生の熱心で丁寧な指導に応えるためにも、自分でも色々勉強して自分でできる筋トレやケアをしたいと思っています。
脚の付け根の部分にひっかかりを感じているという具体的な内容だけでなく、上半身の使い方まで言及されています。
ここまでしっかり身体のことを考えておられる方なら、適切な治療と指導があれば問題は解決していきそうです。
スポンサーリンク
まとめ
今回は股関節の硬さについてはお伝えしました。身体が硬いからといって、無理なストレッチをしてもダメです。
しっかり自分の身体と会話しましょう。
これは身体の硬さだけの話ではなく、股関節や膝関節の痛みや腰痛の方にも言えることです。
仕事が忙しく無理をしてしまう方や、お子様が小さく忙しい主婦の方など、痛みがあってもどうしてもがんばってしまう方が本当に多いです。
ほんの少しでいいですから、立ち止まって自分の身体を向き合ってみましょうね。