人間の背骨はいくつあるかご存知ですか?
今回は人間の背骨の解剖について詳しく解説します。この記事を読めば人間の背骨の解剖や構造が理解できて、かなりイメージできるようになります。ぜひ最後までご覧ください。
背骨といえば人間の骨の大黒柱、それはなんとなく理解できていると思います。でも家の大黒柱のように1本の柱がでまっすぐ伸びているわけではありません。
実は背骨はたくさんの骨の組み合わせでできており、しかもまっすぐではなく湾曲しています。人間はまっすぐ立っているつもりでも。
なんかややこしそうですが、そのあたりもしっかり解説していきますのでご安心ください。
背骨と脊椎の違いは?脊椎って何?
先に少しだけ言葉の説明をしておきます。脊椎(せきつい)という言葉を聞いたことはありませんか?脊椎の「脊」は背中の「背」に間違えられることがありますが違います。
脊椎とは解剖学的には背骨のことを指します。
脊椎といえば中学校の理科で脊椎動物というのを習ったと思います。脊椎動物とは魚類、両生類、鳥類、爬虫類、哺乳類など、背骨がある(=脊椎がある)動物のことです。ちなみに無脊椎動物とはタコやカニなど、背骨がない動物のことですね。
医療用語では背骨を脊椎と表現していますので、背骨を専門にしている外科は「脊椎外科」と呼びます。
あともうひとつ、脊椎と似た言葉で脊髄(せきずい)がありますが、脊髄は背中を通っている一番太い神経の束のことです。ですから脊髄は骨ではありません。
こちらの記事では脊椎とは表現せずに、一般的な呼び名である背骨と書いていきます。
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背骨の構造の基本を理解しよう
背骨の数を発表する前に、もうひとつだけ見ておいて欲しいものがあります。それは背骨の基本構造です。
人間の背骨は、
- 頚椎(けいつい、首の骨)
- 胸椎(きょうつい)
- 腰椎(ようつい)
- 仙骨(せんこつ)
- 尾骨(びこつ)
からなります。
そしてひとつひとつの背骨はこんな形をしています。
椎体といわれる本体部分に突起物がでていて、後ろに飛び出しているのが棘突起(きょくとっき)、横に飛び出しているのが横突起(おうとっき)といいます。
上からみればわかりますが、椎体(BODY)の後ろに丸い穴があって、この穴(椎間孔)の中を脊髄が通ります。
ここまではよろしいでしょうか。
そして少しだけ難しい話をすると、頚椎と胸椎、腰椎の形は微妙に違います。
たとえばこれは胸椎のイラストです。
先ほどの背骨のイラストと違うところわかるでしょうか?
この図でいうと上肋骨窩(じょうろっこつか)、下肋骨窩(かろっこつか)、横突肋骨窩(おうとつろっこつか)という部分があります。「窩」は『くぼみ』という意味で、このくぼみに肋骨がはまり込みます。
肋骨は腰にはありませんので、肋骨窩は胸椎特有となります。
まあここまで詳しく覚える必要はないと思いますので、とりあえず背骨がどんな形をしているかくらいは覚えておいてください。
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背骨は数はいくつある?
おまたせしました。では背骨はいくつあるのでしょうか?イラストを見てもらった方がわかりやすいので、こちらの図をご覧ください。
人間の背骨を右横(右側面)から見ています。これを見ればわかりますが、頚椎は7個、胸椎は12個、腰椎は5個、それらと仙骨、尾骨があります。
せっかくなのでそれぞれを図で確認しておきましょう。
例えば8番目の胸椎であれば第8胸椎と表現しますし、5番目の腰椎なら第5腰椎と表現します。
ふたつだけ例外があって、第1頚椎は環椎(かんつい)、第2頚椎は軸椎(じくつい)と呼びます。
軸椎って聞いたことないですか?どなたかがお亡くなりになって火葬場でお骨拾いをしたことがある人なら知っていると思いますが、手の平を合わせて拝んでいるように見える骨、あれが軸椎です。
首が左右に向けるのはこの軸椎の動きによるものが大きいです。
ここまで読んで鋭い人なら気づかれたと思いますが、仙骨と尾骨だけ呼び名が違うことに気づきましたか?頚椎、胸椎、腰椎ときているのに、仙椎、尾椎ではなく仙骨と尾骨と表現しています。
実は仙骨と尾骨は元々背骨の続きとして存在していました。
仙椎は5つの骨からなり、進化の過程において成人する頃にはひとつの仙骨となります。ですから子供の頃には仙骨は仙椎として分かれています。尾骨はしっぽが退化したものといわれていて、3~6個(5個と書いている本もある)の尾椎がくっついていますが、これも成人する過程でくっついてひとつの尾骨となります。
ですから今回の記事のタイトルである「背骨はいくつ?」と聞かれれば、「成人の背骨の数は26個(仙骨と尾骨をそれぞれひとつとすると)」となりますし、「子供の背骨の数は30個以上」となります。
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背骨はS字に湾曲している!
最初の方で申し上げましたが、背骨はたくさんの骨の組み合わせで、全体で見るとS字に湾曲しています。
この図は左側から背骨を見ています。向かって左が前になりますので、頚椎では前弯、胸椎では後弯、腰椎では前弯しています。(もっというなら仙骨と尾骨でもう一度後弯している)
こんなにカーブしてるのに人間は垂直に立っているつもりなんですよね。
逆にいうとたとえばこんな不良姿勢でいる人。
一番右の人は良い姿勢ですが、右から2人目はいわゆる猫背(円背)ですね。これだと胸椎の後弯が強くて、腰椎の前弯が減っています。また右から3人目は逆に腰椎の前弯が強くなっていそうです。
背骨をレントゲン画像で見るとこんな感じです。
これは腰のレントゲンですが、右半分は背骨を右側から見た図です。腰椎が前弯していることがわかりますね。
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おまけ①:背中の出っ張りの正体は?背骨はなぜ出てるの?
背中の真ん中を触るとボコボコするものがありますよね?これって何かわかりますか?
これは背骨の棘突起です。
棘突起は医師の診察や、理学療法士のリハビリ時に触診のランドマーク(=キーポイント)になります。
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おまけ②:背骨がストレートに?いま話題のストレートネックとは?
最近テレビや雑誌でよく取り上げられてるストレートネックをご存知ですか?
直訳するとストレート(まっすぐな)ネック(首)ですが、先ほどご紹介したように首はまっすぐではなく前弯しているんでしたよね?それが何らかの原因でまっすぐになってしまうのがストレートネックです。
たとえばこちらのレントゲン。
頚椎は前弯しているのがわかります。
ではこちらはどうでしょう。
頭部の角度が違うので申し訳ないのですが、先ほどよりもまっすぐになっているのがわかると思います。ひどい人だとストレートを通り越して、頚椎が後弯している人もいます。
ストレートネックの原因はパソコンやスマホなど、うつむき加減になる姿勢といわれていますので、パソコンやスマホの使いすぎには気をつけましょう。
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おまけ③:キリンの背骨の数は人間よりも多いの?
首が長いことでおなじみのキリン。キリンの頚椎がいくつあるのでしょうか?
こちらの図をご覧ください。
実はキリンの頚椎の数は7個で人間と一緒です。
何か拍子抜けな感じですが考えてみれば当たり前で、キリンは哺乳類なので猫も犬もキリンも人間も脊椎は7個です。その代わりキリンの頚椎はひとつが大きければ30cmくらいあることも。
今度キリンのあの長い首を見ることがあれば「首の骨の数は人間と同じなんだなぁ」という目で見てください。きっとキリンの首の動きがもっと不思議に思えるはずです。