股関節の解剖を理解すると、治療がみえてくる。以前からそのように申し上げております。
今回は股関節の解剖の中でも少し見落とそされがちな、靭帯の解剖についてお伝えしていきます。
シリーズでお伝えしております、股関節の解剖シリーズ。
今回のテーマは靭帯です。
靭帯については、まず全体像にふれ、その後にそれぞれの靭帯についてひとつずつ詳しくみていきましょう。
細かいことですが、それぞれの靭帯が持つ役割は違いますので、その違いに触れてください。
股関節の解剖を知ること、それは痛みの理解の第一歩となる・・。
なんか大げさな文章で始まりましたが、ぼんやりとですが、そんなことを考えています。
以前、申し上げましたが、1にも2にも股関節の解剖を理解しておかないと、症状を理解していくことはできません。
今回は股関節の運動学において、あまり触れられることのない、『靭帯』についてみていきます。
靭帯の解剖に触れることはなかなかありませんが、すごく大事なのでしっかり理解しましょう。
股関節靭帯の全体像
「股関節の靭帯?あんまり聞いたことないなぁ」と思った方、大正解!
股関節にある靭帯で有名なものは、はっきりいってありません。
なぜかというと、股関節の治療を受けるとき、骨や筋肉、関節に問題があることが多く、「股関節の靭帯が傷んでます」と診断されることはまずないです。
だからほんとマイナーなんです。
靭帯といえば、サッカー選手がよく切る前十字靭帯とか、足首を捻挫したときに痛める前距腓靭帯などが有名です。おっと、捻挫って靭帯の損傷なんですよ?ご存知でしたか?
何をいうても想像がつかないでしょうから、まずは股関節の靭帯の全体像を知っていただきたいので、靭帯の概要を紹介した分かりやすい映像をご紹介致します。
めちゃ分かりやすいでしょ。でも輪帯?腸骨大腿靭帯?なんやねん?ってなった人の方が多いと思います。いやいや、それでいいんですよ。
映像にもありましたように、股関節の靭帯は股関節を取り囲むように、びっしり巻き付いています。
靭帯がないと、ゆるくてゆるくて股関節がすぐぬけちゃいます。動きを作りながらも、適度に、そして強固に股関節を守ってくれる存在にもなりえます。
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股関節の靭帯
腸骨大腿靭帯
1つ目は「腸骨大腿靱帯」です。まずはイラストで確認してみましょう。
股関節前面にある非常に強い靭帯。その名の通り、腸骨と大腿骨を結んでいて、人体中、最も強靭な靭帯です。
「Y」の字をひっくり返したような形(上部と下部に分かれている)になっていますので、別名Y靭帯とも呼ばれています。
上部線維は伸展、内旋、外旋を制限し、下部線維は伸展、外転、内転、外旋を制限しています。
腸骨大腿靱帯は、関節包という関節の袋の前面と上面を補強する役割も担っています。
坐骨大腿靭帯
次に坐骨大腿靭帯です。
股関節の関節包の後方を補強する靭帯で、その名の通り、坐骨と大腿骨にまたがっています。
寛骨臼縁の後下部から起こり、らせん状にまきついて、一部は輪帯に、一部は大転子内側に付着します。
この靭帯は股関節の伸展と外転を制限します。
恥骨大腿靭帯
3つ目は「恥骨大腿靭帯」です。イラストではこんな感じになります。
恥骨大腿靭帯は、これもその名前の通り、恥骨と大腿骨を結ぶ靭帯です。
寛骨臼縁の恥骨部と恥骨の上方部にかけての部分から起こり、外下方に走って関節包の前下面を強めます。
恥骨大腿靭帯は、股関節の伸展、外転、外旋を制限しますが、特に外転を制限する強い靭帯です。
大腿骨頭靭帯
大腿骨頭靭帯はちょっと変わってます。まずは股関節を真横から見ると、こんな感じです。
次に大腿骨を外して、寛骨臼といって、大腿骨の骨頭がはまり込むくぼみを覗いて見ましょう。
そうすると、そのくぼみの中にありました。こちらが大腿骨頭靭帯です。
大腿骨頭靭帯は、寛骨臼と大腿骨頭を結んでいて、関節包(関節を包む袋)の中に存在します。
股関節を内転すると緊張する(制限をかける)のですが、いままでの靭帯と違って、大腿骨頭靭帯には、骨を連結部を補強する役割はありません。
この大腿骨頭靭帯の中に細い血管(閉鎖動脈の枝)が通っていて、大腿骨頭に栄養を渡せるようにしています。
運動というよりも、血管の橋渡しなど、生理的な機能を担っています。
寛骨臼横靭帯
この靭帯はなかなか耳慣れない靭帯ではないでしょうか。って股関節の靭帯はどれもマイナーなものが多いですが^^;
大腿骨頭靭帯と同じく、股関節を横から見てみましょう。
そして大腿骨を外すと前回ご説明した大腿骨頭靭帯が見えますが、その下に寛骨臼横靭帯があります。
寛骨臼横靭帯は前からみると、こんな位置になります。
寛骨臼横靭帯は、関節窩というくぼみの下部(寛骨臼切痕)にあり、関節唇の続きとなって、横切っています。
寛骨臼横靭帯は、関節唇とは異なり、軟骨細胞を持ちません。
あまり知られていない靭帯だと思いますので、「まあこんなのがあるんか」程度に知っておいてください。
輪帯
最後は「輪帯」という靭帯です。
「寛骨臼横靭帯」のところでも書きましたが、これもかなりマニアックな靭帯ですので、「まあこんなのがあるのか」ぐらいの感じで知っておいてください。
それではさっそくイラストからみていきましょう。いつもはわかりやすいイラストがあるのですが、今日はいいのが見当たりませんで^^;
実物の骨模型の写真から1つ抜いてきたので、そちらをご覧ください。
ちょっと分かりにくいですが、右の股関節を後ろから見た写真です。
輪帯はその名前のとおり、輪状になっている靭帯で、関節包の内面の深部にあって大腿骨頭を取り巻くようにあります。
輪帯の仕事は大腿骨頭が寛骨臼から抜けないようすることです。
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まとめ
股関節の靭帯の解剖についてお伝えしてきました。
靭帯は股関節が動き過ぎないように制限する、大切な命綱です。緩んだり、機能しないと、何か障害をつくってしまう可能性があります。
治療では筋肉ばかりがクローズアップされることが多いですが、意外と靭帯も重要です。
それは料理でいう隠し味のようなもの。
この機会にぜひ覚えておきましょう。