自分が膝関節のアライメントが正常なのか、内や外に曲がっているか気になる方は多いと思います。
今回はその基準となるFTAについてご紹介します。
あまり聞き慣れない名前だと思いますが、分かりやすくご説明します。
股関節や膝関節など下肢に疾患を抱える人の多くは自分のアライメント(直訳すると「一直線に並んだもの」の意味。分かりにくいので「形」と考えてください)をとても気にされます。
特に変形性膝関節症などの膝関節疾患で病院を受診したことがあるなら、「膝が曲がっていますね」と指摘されたことがあるのではないでしょうか。
大腿骨の軸に対して脛骨が内に曲がっていることを医療用語では内反(ないはん)、外に曲がっていることを外反(がいはん)と呼びます。
引用)図解入門よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book)
実際、ぱっと見では正常な方でも、内反であることもあります。
そこで膝関節のアライメントのひとつの指針となるのが、今回ご紹介するFTAです。
内反とO脚は同じ?
とその前に、この話をすると「内反はO脚とどう違うのか?(外反はX脚とどう違うのか?)」と疑問を持つ方がいらっしゃるかもしれませんね。
実は医療従事者は、患者さんやご家族に分かりやすく説明するとき以外に、O脚やX脚という用語を専門用語としては使うことはほとんどありません。
内反と外反はあくまで大腿骨の軸に対して脛骨が内に曲がっているか、外に曲がっているかを表しています。
それに対してO脚、は下肢の見た目がOの形をしているのか、Xの形をしているのか、それだけを問題にしています。
あくまで概念の問題なので、ややこしい方は「内反ってO脚のことを言ってるんだな(外反ってX脚のこと)」と考えてください。
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FTAとは?
FTAとは、
F:大腿骨を意味する「Femoro」
T:脛骨を意味する「Tibial」
A:角度を意味する「Aangle」
の頭文字をとっていて、日本語では大腿脛骨角と呼びます。
その名の通り、大腿骨の軸(大腿骨の真ん中を通る線)と脛骨の軸(同じく脛骨の真ん中を通る線)が交わる角度のことを表します。
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FTAの正常角度
FTAの正常角度は176°です。
FTAが180°を超える、つまりFTAがまっすぐ以上になると内反となります。逆にFTAが165°以下になると外反となります。
※角度の数字については文献により変わりますが、おおよそこれぐらいと覚えてください。
ここでもうひとつ疑問が。
180°って真っ直ぐなのになぜこれが正常ではなく、内反とされてしまうのでしょうか?
これには大腿骨の頚体角が関係しています。
頚体角については以前こちらでお伝えしておりますので、それをご覧ください。
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頚部から床に伸びる大腿骨の軸は、大腿骨に頚体角があることにより、ほんのわずか内側に向いています。(本当にちょっとだけですが)
ですからそのまま膝関節もまっすぐ通過するとおかしくなるので、膝関節のところで修正をかけるようにわずかに外側シフトします。
そういう意味では、膝関節が4°ほどわずかに外反している状態を正常と呼んでいるとも考えられますね。
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FTAの測定方法は?
FTAは見た目で「176°」などと判定するものではありません。
FTAを測定するには、立位で下肢をレントゲン撮影して調べます。
ただし変形性膝関節症の初期で整形外科を受診したときには、膝関節だけのレントゲンを撮る場合がほとんどです。
立位で下肢全体のレントゲンを撮影することは少なく、人工膝関節置換術の手術を計画するときに撮影すること多いです。
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アライメント不良とその原因
さきほど冒頭で「ぱっと見では正常な方でも、内反であることも少なくありません」と書いたのですが、アライメントの問題は膝関節だけの問題ではありません。
石井は
膝関節の変形の形態と骨盤,股関節,足関節の動きの連鎖とは,密接 な関係が存在することが示された。特に膝関節内反足関節外反,骨盤挙上,膝関節の外旋という運動連鎖が,症状の進行と密接な関係を有していることが示唆される。
引用)石井慎一郎,他:変形性膝関節症患者の下肢運動連鎖.東京保健科学学会誌:93-96,199
と述べています。
つまり骨盤や股関節、足関節に何か問題があれば、運動連鎖により膝関節の内反や外反に影響を及ぼされるということです。
これはいつもこちらのブログをご覧になっている方ならご理解いただけると思いますが、膝関節に何か問題があるからといって、膝関節だけを治療していてもダメですよ。
身体は全てつながっていますから、包括的にその症状と向かい合うべきでしょう。
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まとめ
膝関節のFTAについてご紹介してきました。
あまり触れる機会はないですが、実際膝関節を評価するときには重要な指標となります。
ただしFTAで内反していることが分かっても、膝関節だけが悪いわけではなく、なぜその状態が起こっているのか、それを包括的に考えて治療していく必要があるでしょう。
その点だけ注意してくださいね。