股関節の拘縮の原因はどこにあり、どのように治療していくのか。お悩みの方も多いのではないでしょうか。
今回はあまり触れられる機会が少ない、股関節の拘縮について考えていきましょう。
まず先にお尋ねしますが、「拘縮(こうしゅく)」という言葉や状態をご存知ですか。
拘縮とは「関節の可動域が制限された状態」のことを言います。ですから、拘縮という言葉がどうもピンとこない方は、「関節の角度が悪くなった状態」と思ってください。
関節の角度が低下する原因にはいろいろあります。
拘縮は骨折や手術後のギプス固定などで一定期間動かさないことで起こり、上記図の中で靭帯や関節包など関節周囲の軟部組織が主に原因となります。
車の渋滞にヒントがある
先日、こちらのブログに届いたご質問を1つご紹介します。
題名:股関節拘縮のリハビリ
性別:女性
年齢:30代
診断名:その他疾患
メッセージ本文:
こんにちは、はじめまして。
3年前に左半月板損傷し、昨年の5月にスポーツクラブでのトレーニング中に再度痛めてしまい整形外科スポーツクリニックに通院しています。
現在左膝の方は治まっていますが、リハビリを行うにあたって色々な問題が出てきました。
極端に右股関節がかたく、腰痛や右のお尻の辺りから大腿部の痛みで思うようにリハビリが出来なかったため再度診察を受けました。
その後、「腰痛症」「神経痛」と診断が出て◯◯(薬の名前)等処方されましたが合わず中止されました。そして最近「股関節拘縮」と病名が変わっています。
MRIの検査をしましたが、ヘルニアでもなく股関節も変形などはないとのことです。
リハビリの内容は週に1回、股関節周囲をホットパックで温め、理学療法士の指導のもと筋力トレーニングなどを行っています。
ただあまり変化が分かりません・・・。
今後メンテナンス的な感覚でそのままリハビリを続けていく方がいいのかどうか、最近悩み始めています。
ひとつは、現在通っているスポーツクラブで、ダンス(ドクター許可済)などを行っているのにも原因はあるのかと思いますが、逆に動いているときの方が痛みがないのでとりあえず続けています。
仕事は事務職なのでほぼ1日座りっぱなしで、座っていると激痛ではないですが右の腰の辺りからお尻、大腿部の裏に突っ張るような違和感があり、動き始めに大腿部に痛みが出ます。
他に相談できるところもなく調べてたらこちらのサイトに辿り着きました。お忙しいところ申し訳ありませんが少しでもアドバイスをいただければと思い質問させていただいております。
どうぞよろしくお願いします。
左膝の半月板損傷から腰痛などを起こし、現在は股関節に拘縮がある方です。
まずこの方の場合、「腰が痛いから腰痛」「殿部から大腿部が痛いから神経痛」と、とりあえず診断名をつけられている印象です。
あと股関節拘縮は、診断名というよりも症状の名前です。
たとえば「急性気管支炎で咳がでる」という話であれば、「咳」という診断がついているのと一緒です。
この話でいえば、咳を治すのではなく、急性気管支炎を治す方法を考えた方がいいことは、何となく理解できると思います。
それを股関節の治療に当てはめるなら、股関節拘縮を治すことも必要ですが、なぜ股関節に拘縮や痛みが起こっているのか、その原因を尽きとめることが必要でしょう。
ここで少し頭を切り替えて、道路で起きる車の渋滞を考えてみましょう。
車で走っているときに渋滞が起こると、すぐ後ろの車の運転手には原因がわかりますが、それ以降の車の運転手は分からないことが多いです。
警察が来て交通整理を始め、ようやく動き出して事故現場の横を通ったときに、「あぁ、事故があったから渋滞が起きてたんだ」と分かるわけです。
このシチュエーションで、完全に渋滞を解消するためには、元となる部分、つまり事故に巻き込まれた人を救助して、事故車両を撤去したときにようやく解消する方向に向います。
警察が交通整理をしているときは少しずつ動きますが、問題が解消したわけではないです。
では股関節拘縮の治療に当てはめてみましょう。
事故の話でいえば、事故現場が股関節で、事故車両が主たる原因となります。(たとえが悪いのはご容赦ください)
原因が分からずとりあえずリハビリを進めることは、警察が交通整理をしてゆっくり動いているようなもので、本当の意味での解決とはならないのです。
股関節拘縮の治療のポイントは、なぜその拘縮が起こっているのか、原因は何なのかはっきりさせることです。
これさえ分かれば、対処の方法は自ずと見つかるでしょう。
この方のご質問にありました「スポーツクラブで動いてもいいのか」は、その診断や原因次第です。
何が原因で、なぜかたくなっているのか、そして痛みがでているのか、まずははっきりさせないといけません。
もしかしたらダンスで痛みがなくても悪い方向に働く可能性もありますよね。
もしそちらのクリニックで解決しないのであれば、股関節の専門医にご紹介してもらって、原因を調べていただくのもいいでしょう。
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まとめ
股関節拘縮の原因と治療のポイントについてお伝えしました。
ただ今回お伝えした「まず原因をはっきりさせること」は、何も拘縮に限った話ではありません。
変形性股関節症の治療でも、風邪の治療でも一緒です。
まずは原因をしっかり明らかにして、その状態でリハビリを進めるようにしましょう。