重心という言葉をご存知ですか。今回は人の運動を考える上で大切な重心の位置とその役割についてのお話です。
重心という言葉を聞いたことはありますか。
人の重心は「頭部、体幹、四肢の各部分の質量の中心を求め、合一して得られたもの」と定義されます。
わかりにくいので、ここでは体重の中心と考えてください。
では人の重心はどこにあるのでしょうか。
人の重心の位置
よく人の身体の中心は臍(「さい」と読みます。へそのこと)だと言われますが、これは長さ的なもの重さを考えたものではありません。重心は体重の中心ですから、人の重心を考えるときには、身体の各部位の重量の差を考える必要があります。
どういうことかというと、両手よりも両脚の方が重そうですよね。そうすると、臍より少し下の方に重心があるのかなと、なんとなく予想がつきます。
こちらの図をご覧ください。
引用)図解入門よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book)
人の身体で一番の重いのは体幹と呼ばれる胴体部分で、全体重の約48%を占めています。
次に重いのが脚です。両脚を足すと体重の約35%になります。両上肢は約9~10%、頭頸部で約7%となっています。
単純に考えると股関節には、股関節より上部にある頭頚部、体幹、両上肢の重みがかかることになります。
意外と知られていませんが、サイコロのそれぞれの目がでる確率は1/6ではありません。なぜならサイコロは目の数や掘る量により、重さが微妙に異なってくるからです。つまり重心が中心にはないということです。
理論上では、表裏となる1と6、2と5、3と4の面の重さの差が一番大きい組み合わせの、軽い方の面が一番でやすいことになります。
ただし、これも各メーカーのサイコロの目の大きさや、掘る量によって違いますので、一概にどの数字がというのは言えないかもしれませんね。
ヒトの重心は骨盤内の仙骨(第2仙椎)のやや前方にあります。
床(足底)から計測すると、成人男性では身長の56%、成人女性では55%の高さにあります。
女性の重心が男性に比べて低いのは骨盤の形状の違いによるもので、男性の骨盤は細くて深く、女性の骨盤は広くて浅い形状になっているからです。
もちろん個人差もありますし、年齢によっても変わってきます。成長過程の子どもは重心が高くなります。
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重心位置と股関節のリハビリの関係
重心の定義と位置がわかったところで、股関節や骨盤の治療との関係を考えていきましょう。
私たち理学療法士が股関節に痛みを抱える方を治療するとき、姿勢や歩行を観察して評価します。
いま「股関節に痛みを抱える方」と書きましたが、これは膝関節に痛みを抱える方でも、脳卒中の患者さんでも同じです。治療時には、必ず重心を考えています。
たとえば何らかの原因で重心が右に偏っていたとします。そうすると立位では右股関節に通常より負担がかかります。これはなんとなく想像できると思います。
またその状態で歩行すると、右股関節周囲の筋肉が過剰に働いて痛みが出現するかもしれません。
このような方を治療するなら、右股関節の痛みに対してストレッチやマッサージなどで直接アプローチするのと同時に、なぜ重心が右に偏っているのかを考える必要があります。
なぜなら右股関節の痛みは悪い姿勢や歩行により出現したもので、重心が右に偏っていることを改善しないと根本的な解決にはならないからです。
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まとめ
人体の重心についてお伝えしてきました。
いま接骨院などで行われている治療のほとんどは、直接的なアプローチに重きが置かれ、姿勢や歩行にアプローチしないことがほとんどです。
ですからその場では痛みが幾分ましになっても、すぐに痛みがまたぶり返してくるのです。
股関節の治療と重心は切っても切れない関係です。
股関節に痛みがある方はぜひ自分の重心をしっかり意識してみましょう。