股関節の痛みの原因となる股関節の炎症。でも意外な落とし穴があるかもしれませんので、注意が必要です。
以前、股関節はどこにあるかというお話をしたことがあるのですが、覚えているでしょうか。
股関節という名前はよく聞きますが、股関節の正しい位置がわからない方が多いという話でした。
このブログでもお伝えしていますが、患者さんがよく間違えるのは大転子です。
外側にある出っ張りである大転子を股関節と思い込んでいる方が多いのですが、股関節のただし位置は大転子よりかなり内側になります。
股関節のただしい位置がわかっていないと、どこの痛みなのかもわからず、もしかしたら整形外科に行くべきところを内科にいってしまうかもしれません。
先日頂いたご質問も本当に股関節なのかどうか、判別する必要がありました。
痛いのはどこ?
頂いたご質問は以下です。
—- 題名 —–
恥骨の痛みについて
—– 性別 —–
女性
—– 年齢 —–
10代
—– 疾患名 —–
股関節炎
—– 治療経過を詳しくお書きください —–
ある運動をしている娘についての相談です。
2012年3月から選手コースで週3回 怪我や故障なく競技をしてましたが、2013年4月から週6~7回運動をするようになり、シンディン・ラーセン・ヨハンセン病、シーバー病と、たて続けに成長痛がおこりました。
上記の成長痛は治まったのですが、先日急に恥骨部分が痛いと言い出しました。
軽く触れるだけでも痛い、体を反らすと痛い、お腹に力を入れると痛いとの事でかかりつけの整形外科に行きました。
「股関節周囲の炎症だと思うが11歳の女の子だからレントゲンを撮るのはやめましょう。痛みが治まるまで運動を控えるように」と言われました。
近々大会があり、なんとか出場したいと娘がいうと、「痛みが治まるまで運動は控え、痛みと炎症を抑えるために試合まで痛み止めを就寝前に飲むようにし、もし痛みが和らげば試合に出ることも可能かもしれない」とのことでした。
痛みが強くなってから、基礎練習のみをして痛い動きは控えてたのですが、痛みがましになり、今日スタンド宙返りや側宙をしても痛くなかったのでバク転をしてみたら、やっぱり痛くてその後の練習は出来なかったようです。
前置きが長くなりましたが、親としては痛みがあるなら大会に出るのは無理だと娘に言うのですが、娘は出たいと言います。
1週間安静にして痛みは治まるものなのでしょうか?
ストレッチなど痛みがましになる方法があれば教えていただけませんか。
宜しくお願いします。
(※プライバシー保護のため一部修正を加えています)
痛みと戦いながらも、大会に備えて練習している娘さんとお母さんの思いが伝わってきます。
このご質問をいただいて少し気になった点がいくつかありましたので、次のように回答しました。
はじめまして、お問い合わせいただきましてありがとうございます。
少し気になるところが何点があったので、そのあたりを中心に。
>軽く触れるだけでも痛い、体を反らすと痛い、お腹に力を入れると
>痛いとの事でかかりつけの整形外科に行きました。
こちらをみるといくつかの症状が浮かびました。
- 軽く触れると痛い=恥骨部の炎症?
- 身体を反らす=何かが原因となる腹直筋の伸張痛?
- お腹に力を入れると痛い=鼠径部痛症候群?
>股関節周囲の炎症だと思うが11歳の女の子だから
>レントゲンを撮るのはやめましょう。
レントゲンは本当に必要ないですかね?
思春期の女性の骨盤をとりたくないというのもわかるのですが、恥骨も幅がありますし、「股関節周囲」とぼかさずに、恥骨なのか、股関節なのか、どこが原因なのか特定したいところです。
「もしこの状況が私なら」と考えたのですが、まずなぜ痛いかはっきりさせることが急務かと思います。
本当に股関節炎症なら、先生がおっしゃっているように安静と痛み止めで様子をみるのがベストかと思います。
その場合、ストレッチをしても早く治るかどうかはわかりません。
逆に鼠径部痛症候群など、他の症状であった場合、ストレッチをする部位などは変わってきます。
鼠径部痛症候群の場合、サッカー選手に多く起こります。娘様には当てはまりませんが、他の競技でも起こることもあります。
鼠径部痛症候群では多くの方が鼠径部に痛みがでるのですが、恥骨周囲にも痛みがでる方もいます。
さきほど恥骨にも幅があると書いたのは、このあたりにつながってくるのですが、本当に恥骨部なら鼠径部痛症候群で起こるのは稀で、鼠径部周辺(股関節周囲も含め)であればかなりの確率で起こります。
もし鼠径部痛症候群であれば、あと1週間で痛みを0にするのは
難しいのではないでしょうか。
ただかたくなっている筋肉があれば、それらをマッサージしていけば幾分痛みはやわらぐかもしれません。
鼠径部痛症候群は慢性化しやすく、サッカーの元日本代表の有名選手の引退の一端になったと言われています。
まずは原因を明らかにするのが先決だと思います。
私見ですので、あくまで参考にして、ご自身のご判断でお願いします。
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治療よりも大事なこと
後日、次のようなご返信をいただきました。
國津先生
大変丁寧に回答いただきありがとうございました。
かかりつけ医の先生の診察を思い返してみると、
「股関節は異常なく、痛みは恥骨周辺だけに出てますね」
と言われたのを思い出しました。
娘が押さえて痛いと言っているのは、恥骨の中心よりやや左側の下腹と左足の付け根の間です。
國津先生の回答を読ませていただいて、なぜ痛いか、どこが痛いか原因をはっきりさせることが大切だと感じました。
慢性化する前に、別の整形を受診してみることも考えてみようと思います。
お忙しい中、回答いただき本当にありがとうございました。
股関節には問題ないと言われていたそうで、娘さんが痛がっているのは、「恥骨の中心よりやや左側の下腹と左足の付け根の間」だそうです。
これがわかるだけでも、痛みの原因となる疾患は絞られてくると思います。
いまの話を野球にたとえるなら、打てないバッターにバッティング練習をさせるには、どこを修正していくべきか指導者も選手もお互い理解してから行いますよね。
打てない原因が何もわからず、「とにかく打て」なんて言う指導者はいないですし、これじゃあ練習しても打てそうにないですよね。
治療はもちろん重要なのですが、どこが原因で痛みがでているのか、それを突き止めることは治療と同じぐらい重要なのです。
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まとめ
股関節炎、鼠径部痛症候群に関する内容をお伝えしてきました。
最初にも申し上げましたが、自分でどこが痛いのかわかってる方がいいので、正しい股関節の位置は覚えておきましょう。
そしてとにもかくにも、どこが悪いのか、まずはその場所と原因を明らかにすることが大切で、それさえわかれば治療方法は自ずと見えてくるでしょう。
難しいようですが、昔も今もそしてこれからも、医師にしっかり診察していただくことから治療は始まっていくのです。