大腿骨頚部骨折を予防できる?ヒッププロテクターの効果とデメリット

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高齢者の四大骨折の中でも、寝たきりに一番つながりやすい大腿骨頚部骨折。さまざまな予防方法がありますが、今回はヒッププロテクターの効果とデメリットについて考えてみました。

ヒッププロテクターは効くの?効かないの?果たしてどっちでしょうか。

「骨粗鬆症」という言葉をご存知ですか?「こつそしょうしょう」と読みます。舌を噛んでしまいそうな言葉ですね。骨粗鬆症は高齢化に伴い急増している症状で、簡単にいうと骨がもろくなります。

こちらが正常な大腿骨の頚部。

大腿骨頚部骨粗鬆症なし

こちらは骨粗鬆症になった大腿骨の頚部。

骨粗鬆症大腿骨頚部1

色の違いだけでなく、すかすかになっているのが分かるでしょうか。

骨粗鬆症になると骨がもろくなり、転倒や転落があった場合に骨折が生じやすくなります。

高齢者に生じやすい骨折としては、四大骨折と呼ばれるものありましたね。高齢者の四大骨折とは脊椎圧迫骨折、上腕頚部(近位端)骨折、橈骨遠位端骨折、大腿骨頚部骨折です。

四大骨折や、高齢者の骨折の好発部位についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。

参照)骨粗鬆症の骨折の好発部位は?その予防方法もご紹介します!

四大骨折の中でも特に問題となるのが大腿骨頚部骨折で、国内では年間10万人以上も受傷する怖い骨折です。この大腿骨警部骨折を起こすと、手術が必要になることが多いですし、一定期間ベッド上での生活を余儀なくされてしまいます。

若い人なら数週間ベッドで生活していても、リハビリを適切に行えば歩くことはできるでしょう。しかし、高齢者が数週間もベッド上での生活を続けると廃用症候群が急激に進むこともあり、骨折や手術以外にも様々な影響があります。

その大腿骨頚部骨折は90%以上が転倒によって発生するといわれています。裏を返せば骨粗鬆症の症状になっても、転倒さえしなければ、もしくは転倒したとしてもその衝撃が骨折に至るほどのものでなければ大腿骨頚部骨折の防げる可能性があるということです。


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大腿骨頚部の解剖の復習

大腿骨頚部骨折の予防について考える前に解剖図を用いて、大腿骨の頚部の場所を確認しておきましょう。今回は右脚で説明するので、中央に見えているのが右の大腿骨です。

大腿骨解剖の図イラスト1

骨盤に近い基部に大腿骨頚部があります。

大腿骨頚部解剖図イラスト1

側方に倒れて大腿骨の大転子を強打することで、大腿骨頚部骨折は起こります。

大腿骨頚部骨折原因大転子を強打

ここまではよろしいでしょうか。


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大腿骨頚部骨折を予防するには?

先ほども申し上げましたが、大腿骨頚部骨折を予防するために一番大切なのは転倒しないことです。そのためには筋力、関節可動域、バランス能力、感覚、認知機能など、さまざまな要因を維持・改善させる必要がありますので、一朝一夕にはいきません。

それにもかかわらず転倒の危険性はすぐそこあるものです。今この瞬間に転んでしまい、明日は病院で迎えるなんてことも高齢者ではよくあることです。

ちなみに以前担当した大腿骨頚部骨折の患者さんは、午前中婦人科を受診に来られ、着替えるときに転倒して大腿骨頚部を骨折しました。その日の午後に緊急オペとなり、婦人科の外来受診のはずが、大腿骨を手術して1ヶ月ほど入院することになりました。

それぐらい、いつどこで骨折してもおかしくないのです。

そんな転倒による大腿骨頚部の骨折を予防するための方法が他にもあります。転倒することはある程度起こるものとして、転倒したときに大転子にかかる衝撃をいかに緩和するかを考えることです。

簡単にいうと、オードバイに乗るときにヘルメットをかぶるようなものですね。

大腿骨にヘルメットは被せられないので、大腿骨頚部骨折予防のために開発された、「ヒッププロテクター」という装具を使用します。


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転倒時の衝撃を吸収するヒッププロテクター

このヒッププロテクターは、側方転倒時に強打する大転子部の衝撃を緩和するものです。

衝撃を緩和する素材としては柔らかいクッション材で外力を吸収するタイプのものや、シリコンや硬質プラスチックなどを用いて衝撃を分散させるものなどいろいろなタイプがあります。

見てもらった方が分かりやすいですね。こんなやつです。

股関節の外側にパッドがあり、しっかり大転子を守ってくれていますね。

でもひとつ疑問が。このヒッププロテクターは大腿骨頚部骨折の予防に本当に効果があるのでしょうか?それについてはいくつかの研究で示されています。

Lauritsenらのナーシングホームにおける装具を用いた介入研究では,装具装着群での大腿骨頚部・転子間骨折の発症率が非装着群に比べ約1/2に減少した

ヒッププロテクター着用者では,コントロールに比較して大腿骨頚部骨折は半分から1/5まで減少しており,多くの研究でヒッププロテクターの骨折防止効果は明らかにされている

引用)鈴木隆雄:転倒の疫学.日老医誌 2003;40:85-94

そりゃそうですよね。普通に考えても何もつけていない大転子を強打するのと、クッション剤で守られた大転子を強打するのと、どちらが強い衝撃を受けて骨折する可能性があるかと聞かれれば、もちろん前者です。

私が以前業者さんから聞いた話では、ヒッププロテクターを着用していれば転倒時の衝撃の30~50%程度の衝撃を緩和できるそうです。

ヒッププロテクターのデメリット

聞いていると良さそうなヒッププロテクターですが、残念ながらやはりデメリットもあります。

着け外しが大変なこと

ヒッププロテクターは下着に組み込まれていることが多いのですが、トイレなどで下着の上げ下ろしをするときには、普通の下着に比べて上げ下ろしが面倒になります。

そのため、手が不自由であったり、握力の弱かったりすると使用が難しくなります。

また介護現場ではズボンやパンツの脱ぎ履きの介助の手間が増えるため、積極的に使わないことも多いです。

そういう場合は履くタイプではなく、外側から取り付ける以下のタイプの方が使いやすいと思います。

見栄えが良くないこと

先ほどのイラストを見たら分かるのですが、下着としての見た目が良くないんですよねぇ。

あとお尻の横の部分にクッション材が入ることで横に膨らみ、お尻が大きく見えてしまうので、外見を気にする方には不向きです。

公的保険がつかえない

ヒッププロテクターはそこそこの値段ですが、予防するための装具ですので、医療保険や介護保険などの公的な保険が使えずに自費での購入となります。

そのため購入をためらう方も実際にはいらっしゃいます。

大腿骨頚部骨折を絶対防げるわけではない

当たり前のことですが、ヒッププロテクターを装着していても、激しく転倒して大転子を強打すれば骨折します。

骨折するかどうかを決めるのは、転倒の衝撃と骨の強さ、それと運(打ちどころは本当に人それぞれです)

ですからヒッププロテクターで大腿骨頚部骨折を予防できるわけではなく、正しくは大転子を強打したときの衝撃を緩和できるだけなのです。

以上のようなデメリットがあるのは確かですが、それでも転倒による骨への衝撃が少しでも緩和できるのであれば、使用する価値は十分あると私は考えます。

まとめ

大腿骨頚部骨折のためのヒッププロテクターの効果とデメリットについてお伝えしてきました。

高齢者の骨粗鬆症と転倒は防ぐのが一番ではありますが、年齢を重ねれば骨はもろくなるものですし、筋力やバランス能力も低下します。残念ですが、ある程度は仕方ない部分として受け入れましょう。

そういう意味で大腿骨頚部骨折に限れば、ヒッププロテクターはうまく利用すれば少しでも骨折のリスクを減らせるかもしれませんので、転倒の危険性がある場合、一度検討してはいかがでしょうか。

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