股関節に痛みを抱える方の中には、「股関節に痛みがあるのは自分だけ?」と他に同じ悩みを抱えている方がいないのか、気になる方もいると思います。
今回は日本における変形性股関節症の疫学と原因疾患についてご紹介します。
股関節の痛みで悩む方は、わが国にどれぐらいいるのでしょうか。
変形性股関節症について知る
股関節疾患の代表である変形性股関節症についての有病率が、変形性股関節症診療ガイドライン2016(改訂第2版)に示されています。
それによると、レントゲン診断によるわが国の有病率は、全体で1・0〜4・3%で、男性0〜2・0%、女性2・0〜7・5%となっています。全体の4・3%なら400〜500万人、1%としても100万人以上変形性股関節症で悩んでいる方が日本にはいるということになります。
日本の有病率は欧米諸国に比べると低くなっています。またどの研究からも明らかになっているのは、女性の方が圧倒的に変形性股関節症にはなりやすいということです。特に中高年以降では要注意です。
女性に変形性股関節症が多い理由は、変形性股関節症につながる原疾患になる割合が高いことがあげられます。
また解剖学的な理由もあります。
女性の骨盤が平たい構造になっているため、力学的に重心から下ろした重心線と股関節までの距離が長くなります。
引用)図解入門よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book)
この距離が長いということは、それだけ股関節にかかる負担が大きくなってしまいます。元々女性の方が筋力が弱く、靭帯も緩いので、男性に比べて股関節を支えにくいのが原因になるのです。
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一次性と二次性の変形性股関節症
さきほど変形性股関節症につながる原疾患と書いたのですが、この原疾患にはどのようなものが含まれるかご存知ですか。それを知る前に、変形性股関節症には一次性と二次性の説明をしておかなければなりません。
一次性の変形性股関節症とは、加齢や肥満、股関節への過度の負担を繰り返す職業やスポーツにより起こります。
次に二次性は、明らかに原因となる疾患があるものを指します。股関節の形状に関するものが多く、先天性股関節脱臼や臼蓋形成不全などが原因で変形性股関節症になります。
欧米諸国では一次性の変形性股関節症が多いのに対し、日本ではほとんどが二次性の変形性股関節症です。これは欧米の方との体型の違いや、生活スタイルの違いによるものと考えられます。
子どもの頃を思い出してください。昔のことなので思い出しにくいかもしれませんが、親から「あなたは股関節が悪いからあんまり運動したらダメ」と言われた記憶はありませんか。
乳幼児期に先天性股関節脱臼の治療をしていてもほとんど記憶にないため、親に言われた言葉が鍵になってくることがあります。
以前担当していた変形性股関節症の患者さんはまさにこのパターンで、「そういえば母に小さい頃言われてたけど、私も小さかったので、なぜそのようなことを母が言ってたのか理解していなかった。いまになってやっと理解できました。」とおっしゃっていました。
また生まれつき臼蓋形成不全があっても、中年以降問題になることが多いため、若いうちは気づかずに過ごしている方も多いのです。
これらはみな二次性の変形性股関節症につながる可能性があります。
近年、股関節唇損傷やFAIと変形性股関節症の関係も指摘されています。ひとことで変形性股関節症といっても、一次性や二次性、原疾患の種類など、発症する理由はさまざまです。
また臼蓋形成不全になりやすい遺伝子の存在も指摘されており、変形性股関節症の発症には遺伝も関わっていると推測されています。
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まとめ
変形性股関節症の患者数と原因について考えてきました。
二次性の変形性股関節症の原因となる疾患はさまざまですし、一次性に起こる場合もあります。
ひとつ言えることは、どの場合にもある程度の予防ができるということです。もちろんそのためには、原因となる疾患や動作を理解しておく必要があります。
痛みや変形がひどくなってから改善するのは難しいので、前股関節症の段階で対応することができれば予後は大きく変わってきますよ。