臼蓋形成不全の棚形成術、術後の問題点は?

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臼蓋形成不全で自骨を用いた手術を受けようかどうか迷う方は多いです。

今回は臼蓋形成不全の棚形成術と手術後の問題点について考えてみましょう。

臼蓋形成不全の棚形成術、術後の問題点は?

臼蓋形成不全の治療を考えていくとき、保存療法(手術なし)でいけるのが一番ですが、残念ながら手術をすすめられる場合もあります。

臼蓋形成不全の手術については人工関節を用いた手術自骨(自分の骨)を用いた手術の2つに分けられます。

人工関節はご存知の方も多いですが、股関節を人工の関節に置き換えます。
臼蓋形成不全の棚形成術、術後の問題点は?4
引用) 図解入門 よくわかる股関節・骨盤の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book)
ただ人工股関節置換術は、臼蓋形成不全や変形性股関節症の症状が進行し、痛みに悩まされている方の最終手段として用いられることが多いです。

そこまで進行していない方、特に比較的若い方は人工関節を自分の身体に使うことに抵抗があります。

そこで自骨を用いた手術が選択肢になります。


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臼蓋形成不全の棚形成術とは?

臼蓋形成不全における手術には、有名なものでは寛骨臼回転骨切り術やキアリ骨盤骨切り術などがあります。

臼蓋形成不全の棚形成術、術後の問題点は?5

寛骨臼回転骨切り術については以前こちらのブログでも取り上げましたので、宜しければご覧ください。

参照) RAOやCPOなど自骨の手術をする前に考えるべきこと

そして今回のお題となっている棚形成術もそうですね。

棚形成術とは名前の通り「股関節の棚を形成する手術」です。

棚になる骨は腸骨の一部を切り取ります。

臼蓋形成不全の棚形成術、術後の問題点は?1

その骨片を臼蓋に移植して棚を形成します。

臼蓋形成不全の棚形成術、術後の問題点は?2

臼蓋形成不全の棚形成術、術後の問題点は?3

棚形成術を受けるべきかどうか

以前こちらのブログに、臼蓋形成不全の患者さんが棚形成術を受けるかどうか悩まれていており、ご質問をいただきましたのでご紹介します。

題名:棚形成手術するべきか迷っています

性別:女性

年齢:40代

診断名:変形性股関節症

メッセージ本文:
先天性股関節脱臼による臼蓋形成不全(両側とも前面部分がかなりかけており、右の方が左よりやや屋根が小さく、CTでは大きな穴ひとつと小さな穴がいくか見られます)、右側大腿骨頭が潰れたような変形あり。軟骨の厚みは十分にあります。

41歳のとき、突然歩行時に歩けないほどの痛みを生じ大学病院紹介され受診。CTの結果「骨盤側の穴などの傷みにより手術せず様子をみて人工関節もしましょう」と言われました。

その後、医師からは動かないのが一番と運動療法等の相談には乗ってもらえず、自分で自転車などで筋力UPし、痛みのない良好な時期も多く数年経過していました。

ただ4日間くらい家でゆっくりしていたりすると、その後ひどく痛みがでて右脚をかばった歩き方で脚を引きずるようになり、最近は出掛けても途中痛むので自転車以外の歩きに自信がなくなりました。

またこの1年半ほど禁止されていた立ち仕事についていたことで、左脚にも痛みが出るようになりました。

2年ほど定期健診にも行っていなかったので、改めて近所の整形外科で紹介状を書いてもらいましたが、人工関節は嫌だと話したため別の県外の大学病院(都内)を受診。早速棚形成術をしましょうと夏休みに予約が入りました。

けれど仕事を辞めてひと月し、特に長時間歩くようなこともないため、痛みのない毎日が続いています。それを伝えて相談しましたが、生活の質を説かれ、2週間の考える猶予を頂きました。

先生は、手術すれば、もちろん皮膚のピリピリした感じなどは残ったりはあっても骨そのものの痛みは解消される。

あるいは十数年後再び人工関節手術が必要になるかもしれないがその間、テニスだってどんどんやればいいじゃないですかと仰っています。

自分としては、屋根を作ることで本当にそんなに改善されるものなのかよくわかりません。既に変形している骨頭、素人イメージではぶつかってより損傷しそうな・・・。

それに左右のこの差は何だろう?同じ屋根のない状態でも利き足である左はきれいな丸い骨頭。

本当に長時間歩いても痛みがなくなるのかどうかも信じがたく、現時点でさほど痛みがない状態で、手術せずに気を付けて無理をしない生活すればよいのじゃないだろうかと。

実際この6年間のレントゲン画像にほとんど変化は見られず、手術自体は安全なものとは言え、逆にダメージを受けそうな不安からあまり手術に乗り気になれません。

ぜひ専門家である先生からご意見、アドバイス頂ければ幸いです。

棚形成術を受けるかどうか、悩まれている感じがよく伝わってきます。

実際の画像やお会いして症状を拝見したわけではございませんので、メールを読んで感じたことをこちらの方にはお伝えしました。

自骨の手術をすれば大丈夫?

手術に関して届くご質問を拝読するとき、私が一番気にかけているのは

「その方が手術をしてもいいと思っているのかどうか」

です。

できれば保存療法で様子をみていけるのが一番ですから、「手術がしたい」「人工の関節を入れたい」と積極的に願っている人はいません。

ただ、痛みがひどすぎたり、手術後の生活に光が差している人は「手術をしようと思っているのですが・・」というニュアンスが文面から読み取ることができます。

今回の文面を拝読すると、その感じがあまり伝わってきません。手術はしたくないというお気持ちを感じます。

症状うんぬん関係なく一般論になりますが、おそらくこの状態で手術をしても、納得のいく結果は得られないと思います。

いままで多くの患者さんと接してきましたが、医師に言われるがまま受けた方は手術後も何かしらの不満を感じてしまいます。

この時点でおそらく答えはでているのではないでしょうか。

あとここからは手術後に実際考えることです。

痛みがましになる、テニスができる、長距離・長時間歩行ができる、これらが可能になるかはやってみないとわからないと思います。

棚ができること自体は喜ばしいことですが、手術ですので筋肉を切ったりすることで、別の負担を強いることになります。

リハビリが思うようにいかず、結局半年とか、1年後(もしくは数年後)に人工股関節置換術を受ける方もいます。

また最近は人工股関節の耐久性が向上していることもあり、中年でも人工股関節を選択される場合もあります。

少し以前の調査ですが、森信らは「手術適応としては、前及び初期股関節症で35才以下のCE角0°以上、AHI50%以上の症例と考えている」1)と報告しています。

初期の股関節症で、35才以下と比較的若い人であれば好転する可能性があるということです。

AHI(大腿骨頭内側端から臼蓋外側端までの距離を大腿骨頭横径で割ったもの)
引用)変形性股関節症診療ガイドライン

ただお仕事を辞められた生活の中で、いまの股関節でもひどい痛みなく過ごせるのであれば、保存療法で様子をみてもいいのではないでしょうか。

ただ、数年後に人工股関節置換術をする可能性があったとしても、「どうしても仕事に復帰する」「テニスをする」ことを優先したいのであれば、手術をした方がいいと思います。

ちなみにレントゲン上の変形と痛みはリンクしません。大きな変形があっても痛みなく過ごされる人もいますよ。

まとめ

臼蓋形成不全の棚形成術の手術後の問題点について考えてきました。

自骨を用いた手術を受けて一生過ごせればいいですが、人工股関節置換術に移行する方も多く、移行する期間も様々です。

そのあたりの可能性や手術におけるリスクも考慮して、手術を受けるかどうか決めてくださいね。

最後にお礼のメールをいただきましたので、ご紹介して本日のブログを終わります。

お忙しい中、こんなにも早く返信を頂きありがとうございます。

痛みの分野は非常に個人的感覚であるがため、また医療という専門知識も必要とされるため、周囲の人に相談しても皆応えに窮するばかりで、返信は本当に嬉しい限りです。

仰る通り、手術をしたくない気持ちが強いことに改めて気づきました。

50歳手前という年齢的な制限、協力を仰ぐ高齢の親の状況、また子供が中学生であるこの夏が、温存手術を受けるには最も良い時期、最後のチャンスであると焦っておりました。

痛みが必ずしも、レントゲン画像に一致するものではないことを念頭に、あと数日しっかり自分に向き合い考え、少なくとも納得のいかない部分を残したまま手術はしない方向で臨みたいと思います。

最初の病院の先生は、貴方に説明してもわからないからとほとんど説明してくださらず、長い間自分の病状を的確に把握できていなかったのですが、今回の病院では改めてしっかりと説明を受けられたので、それだけでも前進です。

本当はお近くならば先生のような方に、しっかりとしたリハビリなどの動きや運動療法のアドバイスは欲しいところですが、一般に病院でそうした相談にのってもらえないのが残念です。

先生のようなサイトは、本当に迷える、悩める私たちにとって、的確にひろく情報を掴むうえでも、
大きな力になります。これからもよろしくお願いいたします。

お忙しい中、本当にありがとうございました。重ねてお礼申し上げます。

【文献】
1)森信謙一,城戸研二,田中浩,他:変形性股関節症に対する臼蓋棚形成術の術後成績.整形外科と災害外科47:172-175,1998

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