図解入門 よくわかる股関節・骨盤の動きと仕組み

筋力トレーニングで痛みは治るのか?

 

股関節や骨盤に痛みがあり、病院やクリニックを受診すると必ずといって言われることがあります。

 

「筋肉をつけましょう」

 

 

この言葉を信じて教えられた筋力トレーニングを続けても、痛みが改善しないケースがあります。

 

それはなぜでしょうか?

 

それは痛みの原因に対する治療方法が間違っているからです。

 

 

痛みの原因を常に考えてきたからこそ

じめまして、理学療法士の國津秀治です。
理学療法士としての経験年数は10年目になりました。
整形外科疾患、特に股関節のリハビリに力を入れて活動しています。

 

 

最近ではスポーツ系のジャーナルの、股関節唇損傷の
リハビリテーションの記事を担当する機会もいただきました。

 

 

股関節の痛みについて、対症療法ではなく、痛みの本当の原因と
向き合い、治療を行なっています。

 

筋力トレーニング信者の方には耳の痛い話かもしれませんが、
筋力トレーニングは果たして股関節の痛みを改善してくれるのでしょうか。

 

 

 

 

痛みの原因に合わせた治療が必要

 

もちろん筋力トレーニングをすれば改善する股関節の痛みもありますが、
必死に筋力トレーニングをしても治るどころから余計に痛みがひどくなる方もいます。

 

ここで1つ覚えておいていただきたいのは、股関節の痛みは

 

筋力トレーニングをすれば治る

 

という単純なものではなく、さまざまな原因で引き起こされます。

 

 

例えば脳卒中なら、高血圧や動脈硬化、運動不足、肥満、喫煙などが原因で引き起こされます。
これらの原因を改善せずに、薬だけ飲んでいてもダメなことは容易に想像できるでしょう。

 

それと同じように股関節や骨盤の痛みも、姿勢や歩行、日常生活動作、先天的な疾患、
職業、スポーツなど多種多様な要素が絡み合って作り上げられます。

 

 

 

正しい股関節・骨盤治療とは?

結論から申し上げると股関節や骨盤の治療にこれだけすれば治るという
模範解答はなく、治療の近道もありません。

 

さまざまな原因を1つ1つ評価して、それに対する治療を行い、効果があったかどうかを
再び評価して治療を行なっていく、この地道な作業の繰り返しとなります。

 

しかしインターネットで検索すると、

 

「股関節の痛みの原因は〇〇だった!」

 

「△△筋をマッサージすれば股関節の痛みは消える!」

 

など、誇大とも思えるような内容をあちこちで見かけます。

 

例えば、「たった3分の運動で1週間で5kgダイエットできます!」と書いてある広告を信じますか?
「いやぁ、3分の運動だけで1週間で5kgも痩せるわけがない」と考えるでしょう。

 

これと同じように医療従事者から見れば、1つの原因だけで股関節痛が成り立っているというのは
信じがたいことで、インパクトの強いタイトルで気をひきつけているとしか思えないのです。

 

 

昨年の夏に秀和システムという出版社から「医療従事者目線で書かれた股関節・骨盤の書籍を作りたい」と依頼を受けました。
依頼があったときにはお受けするかどうか悩んだのですが、書店に行って関連書籍を見るとあやしい内容の本ばかりでした。

 

「理学療法士目線で書かれた本があってもいい」

 

と思い、半年以上かけて書籍を書き上げました。
それがこちらの「図解入門 よくわかる股関節・骨盤の動きと仕組み」です。

 

 

股関節の基礎から応用まで

 

5つの章で構成されていますので、簡単にそれぞれの章の説明していきます。


第1章

股関節や骨盤の仕組みを知る上で必要となる、骨や関節、筋肉を説明していきます。

 

勉強やスポーツで基礎が重要であるように、股関節の疾患やリハビリテーションを理解するためには、
基礎となる解剖学や運動学はしっかりおさえておかなければなりません。

 

ここで取り上げた用語は、第2章以降に使われています。わからない用語があれば、
見直しながら読み進めると理解が深まるでしょう。

 

目次
1  股関節と骨盤の進化とは?
2  ヒトはなぜ二足歩行になったのか?
3  直立二足歩行の功罪
4  股関節と骨盤に求められる機能とは?
5  股関節の解剖を理解しよう
6  大腿骨の頚体角と前捻角とは?
7  CE角とSharp角
8  股関節はどんな関節か?
9  股関節はどんな方向に動くのか?
10 股関節を取り巻く筋肉
11 関節の筋肉の働きとは?
12 お尻の筋肉は3層構造
13 関節運動をコントロールする靭帯
14 治療時のカギとなる大転子とは?
15 意外と知らない股関節の正しい位置

16 骨盤は一つの骨ではない
17 骨盤は男性と女性で違う
18 骨盤の動きを知る
19 股関節の関節可動域とは?
20 股関節は骨盤や腰と連鎖して動く
21 股関節になくてはならない股関節唇
22 股関節と膝関節の関係
23 股関節の角度で筋肉の働きが変わる
24 骨盤の角度と筋力の関係
コラム その人に合わせた治療が必要

 

第2章

私たちが日常行う動作の基本となる立位や座位、立ち上がりを、
さまざまな角度から取り上げていきます.

 

何気ない動作の中にも、股関節や骨盤の仕組みに関わる重要な要素が隠されています。
痛みを作らないためには、どのような動作をすればいいのか、その方法と理由を説明します。

 

普段行なっている動作の見方が変わると思いますので、生活の中で
しっかり意識するようにしてください。

 

また本章で学んだ内容は、第4章でお伝えする歩行の基礎となります。

 

目次
1   ヒトの体重の中心は骨盤の中にある
2  骨盤のゆがみの正体
3  片脚立ちで股関節にかかる負担
4  片脚立ちで観られる異常姿勢
5  支持基底面と重心線の関係
6  良い姿勢で立つとは?
7  身体のイメージを正しく持とう
8  身体の軸を決める
9 能楽師のきれいな骨盤に学ぶ
10 体重はどれぐらいが理想か?
11  妊娠中の身体変化と注意点
12 股関節痛を抱える方の姿勢の特徴
13 股関節の屈曲拘縮を見分ける方法
14 仙骨座りをしていませんか?
15 立ち上がりでは骨盤にも注目

16 立ち上がりを楽に行う方法
17 しゃがみ込みのコツは骨盤にあり
18 骨盤と大腿骨の動きが逆になる
19 日常の動作が股関節に与える影響
コラム リハビリのライバルは誰?

 

第3章

股関節や骨盤に関する疾患とリハビリテーションについて取りあげます。

 

股関節や骨盤にはさまざまな疾患がありますが、詳しく知っている方はあまりいません。
どのような症状が、どのような原因で起きるのか、疾患をしっかり理解していないと、
知らないうちに症状を悪くしてしまう可能性があります。

 

誰もが知っている疾患や、近年注目を集めている手術やリハビリテーション、
またサプリメントの効果や寝たきりの原因になる骨折など、気になる話題を
できるだけわかりやすく説明していきます。

 

目次
1 100万人超が股関節症に悩んでいる
2 一次性と二次性の変形性股関節症
3 臼蓋形成不全の病態と治療
4 変形性股関節症の病態と病期
5 変形性股関節症の痛みの正体とは?
6 股関節の痛み? 仙腸関節の痛み?
7 鼠径部痛症候群とは?
8 股関節の痛みの原因は膝関節の痛み?
9 グルコサミンの効果
10 人工股関節置換術はどんな手術か?
11 人工股関節置換術後のリハビリテーション
12 リハビリテーションは手術前から始まる
13 近年話題のFAIとは?
14 股関節唇損傷の手術とリハビリテーション
15 寝たきりの原因となる大腿骨頚部骨折

コラム 一番バリアフリー化して欲しい場所

 

第4章

股関節や骨盤の痛みを作り出す一番大きな原因は歩行??。
そう言っても過言ではないぐらい股関節・骨盤の痛みと歩行は深い関係にあります。

 

しかし、歩行について深く考えている方はあまりいません。

 

そこで本章では、第1章から第3章までの内容をふまえ、
歩行について基礎から応用まで取りあげていきます。

 

歩行は単に「歩く」という行為ではなく、全身を使って行われるため、
私たちが生活をしていく上で要となる動作です。

 

股関節や骨盤の痛みを軽減させるためによい歩行とは
一体どのような歩行なのか、考えていきましょう。

 

目次
1  歩行に必要な基礎知識
2 歩行を科学する
3 良い歩き方とはどんな歩き方?
4 治療すべきは股関節? それとも?
5 へその下で脚を振り出すとは?
6 足の裏には重要なセンサーがある
7 靴底には姿勢や歩行の歴史がある
8 歩行で意識する流れとは?
9 歩行で大切な抜重
10 歩くために必要な筋力は?
11 股関節痛の歩行に筋トレは必要?
12 痛いから歩けない? 歩くから痛い?
13 変形性股関節症の歩行の特徴
14 踵から着くように歩くべきか?
15 ふくらはぎの太さと股関節の関係

16 股関節をかばうだけではダメ
17 脚長差は中敷きだけでは補えない
18 ハイヒールは股関節痛への第一歩
19 杖を使うと楽に歩けるのか?
20 ノルディックウォーキングとは?
21 ロボットとヒトの歩き方の違い
22 コラム 歩行にはCPGが関与する?

 

第5章

第1章から第4章の復習股関節・骨盤の解剖や姿勢、
疾患、歩行について説明してきました。

 

ここまで読むと、股関節や骨盤について今まで持っていたイメージが
かなり変わってきていると思います。

 

そうすると「何か自分でできることはないか」と考える方もいるでしょう。

 

そこで第5章では、股関節や骨盤に関わる体操や日常生活での
注意点を取りあげます。股関節や骨盤の痛みを作らないためにも、
体操を正しく行う必要があります。

 

また日常生活には股関節や骨盤の痛みを作り出す動作が潜んでいます。
どのような体操や動作をするべきかみていきましょう。

 

目次
1 トレーニングではイメージが大切
2 手術を受けるとスポーツはダメ?
3 意外と知らない水中運動の効果
4 貧乏ゆすりで軟骨は再生する?
5 筋トレで痛みが作られる?
6 筋力トレーニングのルール
7 股関節と腰に関係する腸腰筋の体操
8 お尻の筋肉をケアしていますか?
9 実は重要な足の指の動き
10 やってみると難しい足の指の体操
11 関節可動域を獲得するとは?
12 股関節だけでなく腰も大事
13 コルセットの代わりをする腹横筋
14 股関節へアプローチする骨盤運動
15 自宅に潜む股関節の負担となる動作

16 外出時の工夫と注意点……………………………
17 排尿と骨盤の底にある筋肉の関係
18 骨盤底筋群を鍛えよう
19 和式トイレの功罪
20 骨盤の角度で排便量が変わる
コラム 身体の声に耳を傾ける

 

右ページにはいま話題のトピックスをわかりやすく解説し、左ページには理解しやすいようにイラストを配置しました。読みにくい単語にはふりがなをして、わかりにくい単語は左下に説明をつけました。

 

 

 

股関節や骨盤についてこんな不安や疑問がある方におすすめ

 

筋力トレーニングをしていても痛みが治らない。

 

股関節や骨盤について解剖や運動学を知りたい。

 

体重を減らした方がいいと言われた。

 

よい歩き方とはどんな歩き方なのか知りたい。

 

貧乏ゆすりで軟骨が本当に治るのか気になる。

 

プールでの運動にどんな効果があるのかわからない。

 

骨盤が姿勢に与える影響を知りたい。

 

痛みの原因が何か知りたい

 

踵(かかと)からついて歩くように言われたことがある。

 

股関節唇や股関節唇損傷について知りたい。

 

股関節の正しい位置がわからない。

 

どんな動作が股関節に負担をかけているのか知りたい。

 

杖の使用をすすめられたが使うべきか迷っている。

 

外出が少しでも楽になる方法が知りたい。

 

 

書けばきりがないのですが、このような疑問について書きました。

 

股関節の専門家が見ると少し物足りないかもしれませんが、股関節や骨盤に痛みがある患者さんや、
健康のために股関節や骨盤のことを知りたい方、理学療法士の学生さんやトレーナーさんが見ると
股関節や骨盤について幅広く勉強できる内容になっています。

 

 

最後に

股関節や骨盤については本当に多くの情報が氾濫しています。
どれが正しくて、どれが間違っているのか、専門家でないと
見分けることが困難になってきました。

 

股関節や骨盤の痛いは個々人によって病歴、症状、性別、年齢、職業歴、スポーツ歴、
姿勢、歩き方が違いますので、この本でも「これが正解」という答えを示すことはできていません。

 

ただこの本を通じて、股関節や骨盤の治療にはこれぐらい多方向から考えることが
必要なのだとご理解いただく、治療の1つの助けになれば幸いです。

 

 

ぜひ手にとってご覧いただいて、ご感想をお送りいただければと思います。