iPS細胞から軟骨作成が可能に!変形性関節症の治療が変わるのか?

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変形性関節症治療の新たな光となるのか?!今回はiPS細胞を使った関節軟骨治療について考えてみましょう。

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先日、インターネットのニュースや新聞で伝えられていましたが、京都大学のiPS細胞研究所の妻木範行教授らが、人のiPS細胞から関節軟骨組織を作られたそうで、科学誌に発表されていました。

ニュースではミニブタの関節にiPS細胞から作られた軟骨を移植して、体重を支える機能を果たしたということです。

この記事を読んだとき、「これで変形性関節症の治療が変わるかも」という素直な思いと、臨床で普通に使われるまでにはたくさん課題もあるなと思いました。

今回感じたことを私なりにまとめてみました。

※普段こちらのブログでは股関節疾患を中心にお伝えしていますが、今回は「変形性関節症」として、変形性股関節症、変形性膝関節症、変形性足関節症など、変形性疾患の総称としてお伝えしていきます。


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関節軟骨治療のいま

まずiPS細胞を使った関節軟骨治療の話の前に、現在日本で行われている関節軟骨治療のお話をしましょう。

グルコサミン

これは治療というべきではないですが、サプリメントで軟骨を増やそうという方がめちゃくちゃ多いです。その代表格がグルコサミンです。

グルコサミンを飲み続けても、軟骨がモリモリ増えてきて正常になる、なんてことはありません。

医療現場における変形性関節症の治療において、グルコサミンの優先度はかなり低い(ないと言ってもいいぐらい)です。

もし本当に効果があるなら、薬として処方されるはずですが、いまだに「軟骨の増える薬ですよ」といってグルコサミンを処方する医師はいないです。

多くの方はCMを信じて購入されると思うのですが、お金があって何か良くなることがしたいというのであればグルコサミンを購入してもいいのではないでしょうか。

ただその場合も、「これさえ飲んでいれば効果がある」なんて思わずに、「何かの足しになれば」という感じで考える方がよいでしょう。

そのあたりはこちらの記事に書いていますので、お時間があれば合わせてお読みください。

参照) 股関節痛を改善するためにどこの筋力を鍛えればいい?

ヒアルロン酸の注射

変形性膝関節症などで膝関節に痛みを抱えている人が整形外科を受診すると、膝に注射を打ってもらうことがあります。

ヒアルロン酸(アルツ、スベニールなど)の注射はその代表格です。

ヒアルロン酸と聞けば、なんだかお肌すべすべ、関節軟骨も潤うイメージがありますが、実際にはどうなのでしょうか。

膝関節に注射すると潤滑油として働いたり、炎症を抑え痛みを緩和する作用はありますが、こちらも軟骨がモリモリ増えて、元通りになることはありません。

若い方で、極軽度の関節軟骨の損傷であれば改善する可能性もありますが、基本的にはヒアルロン酸の注射だけ軟骨が改善に改善することは期待できないでしょう。

軟骨培養+移植

少し前から膝関節の軟骨の治療で行われるようになってきているのがこちら。自分の膝関節から比較的元気な軟骨を採取して、それを培養して増殖させ、それを傷んでいる部分に移植します。

自家軟骨培養移植術は、平成25年4月から膝関節における外傷性軟骨損傷または離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)において、軟骨欠損が4平方cm以上で他に治療方法がない限り保険適応が認められました。

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引用) 図解入門よくわかる膝関節の動きとしくみ (How‐nual Visual Guide Book)

ただしこちらの治療は、比較的若い人しか適応にならないこと、2回も膝にメスを入れる必要があるため侵襲の影響を受けること、軟骨の強度が弱くなる場合があるなど課題もあります。

しかも日本人が一番悩んでいる変形性膝関節症の治療ではないため、「この治療があれば人工関節置換術をしなくてもいいかも」と期待することはできなさそうです。

間葉系幹細胞+培養+移植

2015年2月に広島大学の越智光夫教授らが発表した治療です。

こちらは先ほどのように軟骨を取り出して培養するのではなく、骨髄から間葉系幹細胞を取り出して培養するのですが、そのとき鉄粉をまぜこみます。

その後この間葉系幹細胞を膝関節に入れるのですが、膝に注射して目的の場所まで体外から磁気を当てて移動させます。

この方法であれば注射で膝関節内に培養した細胞を注入できますので、手術の侵襲の心配はいりません。

術後半年~1年で軟骨は再生されるようですが、こちらも変形性膝関節症の治療ではなく、先ほどの「軟骨培養+移植」の場合と同じく、若年者の外傷性軟骨損傷などが適応でしょうか。

まだこちらは試験的に始まったところですので、その後もぜひ知りたいですね。

iPS細胞+培養+移植

最後が本日の話題であるiPS細胞を使ったものです。

この方法の良いところは、培養するときに強度のある硝子軟骨が作れたということで、ミニブタの場合は1ヶ月後にはうまく関節に定着したようですね。

軟骨治療の現在としては、おおまかにこんな感じです。


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iPS細胞は変形性関節症の治療を変えるのか?

やはり気になるのは、結局治療が変わるのかどうかってことですね。

先に申し上げておきますが、いまから書くことはあくまで予想です。だって4年後に臨床研究を目指すようですので、分からないことだらけの中、問題になりそうなことを考えてみました。

まず先ほどまでご紹介した培養して移植するものは、若年者の外傷性軟骨損傷などが適応でしたが、これが変形性股関節症にそり、変形性膝関節症にしろ、変形性の関節疾患に使えるかどうかです。

ニュースや新聞の記事を読む限りでは、どちらとは書かれていなかったのですが、従来のように培養して出来上がった軟骨を埋め込むという方法であれば、若年者の外傷性軟骨損傷などが適応になるかもしれませんね。

それだと全国に何百万人いる変形性関節症の方は両手を挙げて喜べません。

あと関節軟骨を移植することができても、関節の変形自体を変えることはできません。これがめちゃくちゃ重要だと思うんです。

どういうことかと言うと、変形性関節症が起こるということは、何らかの原因があるはずです。

筋力の低下、肥満、不良姿勢や歩行による問題、過渡なスポーツ、職業上の問題、その他先天性疾患など、関節軟骨がすり減る要因はたくさんあります。

関節軟骨を移植することで、軟骨は再生するので良いのですが、軟骨をすり減らした要因を根本的に変えるわけではありません。

人工関節置換術の時期を先延ばしにはできるかもしれませんが、結局関節軟骨がすり減る要因が何か考えないと、またいつか同じように軟骨がすり減ってしまいます。

そういう意味では、もし変形性関節症にこの治療が使えるようになっても無条件に喜べるわけではなく、結局根本の原因が何なのか考えてこちらを変えていく必要がありそうですね。

まとめ

iPS細胞からの軟骨作成が変形性関節症の治療を変えていけるのか考えてきました。

まだまだミニブタでの臨床試験で成功しただけで、人間で使える段階ではありませんので、本当にこれからの研究を見守りたいです。

変形性関節症の治療の一筋の光になることは確かですし、変形性関節症にも適応できるのであれば、人工関節置換術は減少していくでしょう。

そのときには保存療法や温存療法がもっと注目されるでしょう。

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